株主民主主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 08:26 UTC 版)
絶対的な大株主の存在しない上場会社の株式を大量に取得した上で、株主価値の向上や株主への利益還元といった事象について、ファンドマネージャーが、株主総会以外で、つまり、経営者がIR活動として行う「スモール・ミーティング」や「機関投資家説明会」などの場で、経営陣の意向を、より市場株価を向上させる方向へ誘導させるよう直接活動することが、2003年以降、日本にも多くなった。アクティビストと呼ばれる。 アクティビストの多くはファンドマネージャーであり、古くは村上世彰率いるMACが日本の代表的アクティビストだったが、昭栄や東京スタイルなどの個別の投資案件では必ずしも成功しているとは言いがたかった。しかし、2003年12月にソトー、ユシロ化学の投資案件を手がけたウォレン・リヒテンシュタイン (Warren Lichtenstein)率いるスティール・パートナーズの成功により、一気にアクティビストによる経営者への影響力が注目されるようになった。2003年以降、活発な動きを見せているこのような外資系ファンドとしては、ダルトン・インベストメント、カーライル、ユニゾン・キャピタルなどがある。また、こうした一部株主の動きに触発され、これまで株主総会では経営者寄りの姿勢を見せていた日本の大手投資家組織たる企業年金基金連合会が、株主価値向上に関わる議案についての議決権行使基準を2003年に策定し、以降、公表するようになっている。 これらのアクティビストは「株主価値の向上」といった株主の立場からの正論と、豊富な資金力を背景に、経営陣により一層の株主価値の向上施策の提案 (主に増配や自己株の買付け等の株主還元政策や事業のM&Aを通じた選択と集中といった大雑把な内容が多い) を、株主総会の時期を意識しながら行っており、これまでの「物言わぬ株主」が、「発言する株主」として株主総会の場で剰余金処分案(配当)や役員選任議案について株主提案権の行使も含めた行動を起こすことが、決して珍しいことではなくなってきている。 これまで経営陣が提出する株主総会議案については、重要議案は概ね会社の意向通りに決議されるのが常であったが、2006年には、共に上場会社である大阪製鐵による東京鋼鐵の完全子会社化提案が、投資ファンドのいちごアセットの反対活動(いちごアセットは、株式交換比率が不当に低いことを理由に他の株主にも反対票を投じるよう呼びかけた)により、否決される事態となった。 また、経営陣の内紛または経営者と創業家などとの対立(お家騒動)が起きた際に、投資ファンドや議決権行使助言会社の意向が、(対立する)それぞれの陣営から出された議案の議決に大きく左右される事が、2010年代後半から増え始めている。 こうした一定の投資方針と資金量を持つファンドが、日本の株主総会、ひいては経営陣の意思決定に大きな影響を与えている事象を、「株主民主主義」と呼ぶ。
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