末梢血塗抹とは? わかりやすく解説

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末梢血塗抹検査

(末梢血塗抹 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/12 01:22 UTC 版)

末梢血塗抹検査(まっしょうけつとまつけんさ、英語: examination of peripheral blood smear, blood smear)とは、血液をスライドガラスに塗抹、染色して顕微鏡で観察する検査である。


  1. ^ 末梢血とは末梢静脈など血管の中を流れる血液であり、「造血器官である骨髄の血液ではない」という意味で使用される。骨髄から穿刺や生検で採取した血液には、末梢血にはみられない幼若な血液細胞などが多々含まれ、骨髄塗抹標本検査(骨髄像)が行なわれる。
  2. ^ 白血病などの血液疾患では、異常細胞の細胞系統の鑑別のため、ペルオキシダーゼ染色(骨髄系細胞とリンパ系細胞の鑑別)、エステラーゼ染色(好中球単球の鑑別)、などの特殊染色が行なわれることもあるが、近年は細胞表面マーカー検査や遺伝子検査染色体検査が主流である。
  3. ^ a b c d 自動血球計数装置(自動血球算定装置、自動血球分析装置ともいう)は、主にコールターカウンターの原理を利用して、血液細胞の分類・計数を行う検査装置である。
  4. ^ アズール顆粒(アズール好性顆粒)とは、染色液のアズール色素で染まり紫褐色から紫赤色を呈する顆粒である。詳細はアズール顆粒を参照されたい。
  5. ^ 末梢血塗抹検査で発見しうる病原体としては、マラリア原虫バベシア原虫トリパノソーマ原虫フィラリア、などがある。また、重篤な敗血症では、白血球に貪食された細菌がみられることがある。
  6. ^ 多形核白血球(polymorphonuclear leukocytes。多核球、顆粒球とよばれることもある)とは、細胞質内に特異顆粒を持つ白血球であり、主に好中球をさすが、他に、好酸球好塩基球も含まれる。ただし、好酸球や好塩基球は数が少なく、顆粒のため核の形状が判別しにくい場合も多いため、桿状核球と分葉核球の区別は、通常は、好中球についてのみ行なわれる。
  7. ^ 画像認識により桿状核球と分葉核球を識別可能な血液像自動分析装置は市販されているが、現時点では広く普及しておらず、また、人間の鏡検を完全に不要とするレベルには達していない。
  8. ^ 偽性好中球減少症とは、好中球の体内分布の異常で、辺縁プールの増大により末梢血好中球数が少ないが、免疫能は正常である。
  9. ^ アジソン病では相対的な好中球減少、好酸球増多、リンパ球増多がみられる。
  10. ^ 血液細胞の分化は、通常、左から右へ分化が進む形で記載するため、未分化な細胞が増えることは、左にずれると表現することになる。
  11. ^ ほとんどのペルゲル・フェット核異常ヘテロ接合型であるが、まれなホモ接合型では好中球の殆どが分葉をしめさない。
  12. ^ a b c 好中球の中毒性変化とは、感染症炎症ストレス顆粒球コロニー刺激因子、などにより好中球の産生が増加する場合にみられることがある、好中球の形態的変化を意味し、中毒性顆粒デーレ小体、細胞質の空胞が含まれる。左方移動好中球増多を伴うことが多い。
  13. ^ 中性脂質蓄積症(neutral lipid storage disease、NLSD)には、魚鱗癬を伴うNLSD-I(CGI-58遺伝子の変異。ドルフマン・シャナリン症候群)と、ミオパチーを伴うNLSD-M(ATGL遺伝子の異常)がある。
  14. ^ 骨髄抑制の回復期(特にG-CSF投与時)にも一過性に骨髄芽球が出現することがある。
  15. ^ リンパ芽球はリンパ球の前駆細胞であるが、ときに、抗原刺激で巨大化したリンパ球をリンパ芽球と呼ぶことがあり、注意を要する。
  16. ^ ATLを発症していないHTLV-1無症候キャリヤの末梢血にもフラワーセルがみられることがある。
  17. ^ a b 人工産物(アーチファクト)とは、自然の状態では存在せず、観察の目的で人間が介入したことにより新たに生じたもの、という意味である。
  18. ^ 予後の悪い慢性リンパ性白血病(CLL)症例では、腫瘍細胞の細胞骨格蛋白であるビメンチンが多くて細胞が壊れにくいためである
  19. ^ 自動血球計数装置においても、赤血球の大小不同を、RDW(red cell distribution width、 赤血球分布幅)として定量的に報告できるものがある
  20. ^ 遺伝性楕円赤血球症では卵円形+棒状の赤血球が多数みられるが、通常、溶血や貧血はなく、臨床的に問題にはならない。
  21. ^ 獣医学領域ではハインツ小体はタマネギ中毒の所見の一つである。
  22. ^ 灰色血小板症候群においては血小板のα顆粒の産生が障害されているため、末梢血塗抹標本ではアズール顆粒に乏しい淡い色の血小板がみられる。画像は米国血液学会イメージバンク:Gray Platelet Syndromeを参照されたい。
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末梢血塗抹

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血液検査」の記事における「末梢血塗抹」の解説

白血病腫瘍細胞みられることがある

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