普遍被覆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 08:01 UTC 版)
連結な被覆空間が単連結のとき、普遍被覆(universal cover)という。普遍被覆の名称は、以下の普遍性という重要な性質に由来する。写像 q : D → X を X の普遍被覆とし、写像 p : C → X を X の任意の被覆とし、さらに、被覆空間 C が連結とすると、被覆写像 f : D → C が存在し、p o f = q となる。このことは、 「X の普遍被覆は、すべての X の連結な被覆を被覆する」 と言うことができる。 写像 f は、以下の意味で一意的である。x ∈ X を固定し、d ∈ D に対し q (d) = x で、c ∈ C に対し p (c) = x とすると、一意な被覆写像 f : D → C が存在し、p o f = q、かつ f (d) = c となる。 X が普遍被覆をもつならば、普遍被覆は本質的に一意である。q1 : D1 → X と q2 : D2 → X が X の 2つの普遍被覆とすると、同相写像 f : D1 → D2 が存在し、q2 o f = q1 となる。 空間 X が、弧状連結で、局所弧状連結であり、半局所単連結であるとき、そのときに限り、普遍被覆を持つ。X の普遍被覆は、X の経路の空間から構成することができる。 上に示した R → S1 は普遍被覆の例である。四元数と空間回転(英語版)(quaternions and spatial rotation)に示されている四元数から三次元回転群への写像 S3 → SO(3) も、普遍被覆である。 X がさらに別な構造をもつ場合、普遍被覆も、通常その構造を引き継ぐ。 X が多様体ならば、普遍被覆 D も多様体である。 X がリーマン面ならば、普遍被覆 D もリーマン面で、p は正則写像である。 X がローレンツ多様体(つまり、符号数 (p,1) の計量を有する擬リーマン多様体)ならば、普遍被覆 D もローレンツ多様体である。さらに、p−1(U) を、共通部分をもたない開集合の和集合で、各々の開集合が p により U と可微分同相とする。X が時間的(timelike)閉曲線を含むとき、X は時間的複連結である(いかなる時間的閉曲線も、任意の点と時間的にホモトープとなることができず、どの点も因果的に上手く振舞えないからである)。従って、そのような空間の(可微分)普遍被覆は時間的単連結(英語版)(timelike simply connected)である(時間的閉曲線を含まない)。 X がリー群ならば(上記二つの例と同様)、D もリー群であり、p はリー群の準同型である。この場合、普遍被覆は普遍被覆群とも呼ばれる。普遍被覆群は、表現論と量子力学に重要な応用を持つ。普遍被覆群の通常の群表現 (D) は、元の(古典)群の射影表現(英語版)(projective representation) (X) だからである。 普遍被覆は、解析接続が自然にできる領域として、解析函数論で初めて登場した。
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