日本文化における鹿
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 00:08 UTC 版)
奈良時代以前の宮中行事では、シカの肩甲骨に熱を加えて生じる亀裂から吉凶を占う太占が行われており、宮中行事の時期や方角を決める上で重要な役割を果たしていた。 「鹿」は秋の季語であり和歌などに詠まれ、歌集におさめられている。シカは秋に交尾期があり、この時期になるとオスは独特の声で鳴き角をつきあわせて戦うため人の注意を引いたのだろう。 奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき(猿丸大夫) 『小倉百人一首』(『古今和歌集』ではこの歌は「詠み人知らず」となっている) 下紅葉 かつ散る山の 夕時雨 濡れてやひとり 鹿の鳴くらむ(藤原家隆) 『新古今和歌集』 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる(藤原俊成) 『千載和歌集』 花札の十月には、紅葉の木の側で雌鹿を恋慕って鳴いている雄鹿が描かれており、「紅葉に鹿」といわれている。鹿は雌雄の結束が強いために、この絵図には男女の仲と開運の願いが込められている。花札における「萩に猪」「紅葉に鹿」「牡丹に蝶」の三札は合わせて、猪鹿蝶(いのしかちょう)と呼ばれて、縁起が良い代名詞になっている。また無視することをしかとというのは花札での十月の鹿(鹿十 - シカトウ)が横を向いていることに由来する。 ニホンジカの夏毛は茶褐色に白い斑点が入った模様をしており、これは鹿の子(かのこ)と呼ばれ、夏の季語である。 なお、現代の日本における鹿のイメージは奈良公園にいる春日大社の「神鹿」や宮島を自由に歩き回る鹿によるところが多いが、そのイメージは鹿せんべいに群がる愛らしくおとなしい動物というようなものである。また、子供動物園で放し飼いにされている子鹿によるところもある。無論そのイメージは「かわいい」というものである。なお、子鹿は「バンビ」と呼ばれることが多いが、同名の児童文学はオーストリアの作品である。なお、ニホンジカの子供を「バンビ」と呼ぶのは誤用ではないが、「バンビ-『バンビ~林の中の暮らし』」はノロジカの子供をモデルにしているために、ニホンジカとは別種であることは理解しておきたい。
※この「日本文化における鹿」の解説は、「ニホンジカ」の解説の一部です。
「日本文化における鹿」を含む「ニホンジカ」の記事については、「ニホンジカ」の概要を参照ください。
- 日本文化における鹿のページへのリンク