斉次座標環とスキーム論的定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/23 08:58 UTC 版)
「射影空間」の記事における「斉次座標環とスキーム論的定義」の解説
本節ではまず、複素射影空間 CPn について考える。自明束 Cn+1 × CPn の正則切断は c0e0 + ... + cnen 、ただし ci は定数、ei は i 番目の標準基底に値を取る定数切断、と書ける。これが誘導する超平面直線束 O ( 1 ) {\displaystyle {\mathcal {O}}(1)} の正則切断を σ で表すことにすると、CPn の点 p = [a0 : a1 : ... : an] が σ(p) = 0 を満たすことは、点 (c0, ..., cn) が平面 Vp に含まれている、すなわち a0c0 + ... + ancn = 0 を満たすことを意味しているので、方程式 σ = 0 は、斉次一次式 c0x0 + ... + cnxn = 0 にほかならない。したがって、超平面直線束 O ( 1 ) {\displaystyle {\mathcal {O}}(1)} の正則切断全体の空間 Γ ( C P n , O ( 1 ) ) {\displaystyle \Gamma (\mathbb {C} P_{n},{\mathcal {O}}(1))} には斉次一次式の空間(すなわち、V = Cn+1 の双対空間)V^ からの単射がある。一方、 O ( 1 ) {\displaystyle {\mathcal {O}}(1)} の任意の正則切断で定まる因子は超平面と線形同値になることからこの写像は全射でもある、すなわち、 Γ ( C P n , O ( 1 ) ) ≅ V ∧ {\displaystyle \Gamma (\mathbb {C} P_{n},{\mathcal {O}}(1))\cong V^{\wedge }} がわかる。 O ( n ) {\displaystyle {\mathcal {O}}(n)} を O ( 1 ) {\displaystyle {\mathcal {O}}(1)} の n 階のテンソル積 O ( 1 ) ⊗ n {\displaystyle {\mathcal {O}}(1)^{\otimes n}} として定めると、同様の議論で Γ ( C P n , O ( n ) ) ≅ Sym n V ∧ {\displaystyle \Gamma (\mathbb {C} P_{n},{\mathcal {O}}(n))\cong {\mbox{Sym}}^{n}V^{\wedge }} が証明できる。射影空間 CPn の斉次座標環 (homogeneous coordinate ring) を R = ⨁ n ≥ 0 Γ ( C P n , O ( n ) ) {\displaystyle R=\bigoplus _{n\geq 0}\Gamma (\mathbb {C} P_{n},{\mathcal {O}}(n))} で定義すると、以上の議論から R は V^ の対称代数、すなわち、(n + 1)-変数の多項式環になることがわかる。 スキーム論では、以上の議論の逆をたどって一般の環(より一般には、任意のスキーム)上の射影空間を定義する。A を任意の可換環として、R を A 上の (n + 1) 変数の多項式環 A[x0 , ... , xn] とする。R を A 上の次数環とみて、Proj(R) を R の無縁イデアル(定数項を持たない多項式全体のなすイデアル)を含まない斉次素イデアル全体の集合とすると、これは自然に A 上のスキームになり、これを A 上の射影空間と呼び、スキーム論では通常 P A n {\displaystyle \mathbb {P} _{A}^{n}} で表す。環 A が体 K であるときは P K n {\displaystyle \mathbb {P} _{K}^{n}} の K 値点全体は、ザリスキ位相を入れた上記 KPn と一致し、R の次数づけをずらした環 R(n) に対応する可逆層が上に現れた O ( n ) {\displaystyle {\mathcal {O}}(n)} と一致する。
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