宇宙背景ニュートリノの温度の誘導
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/03 06:10 UTC 版)
「宇宙ニュートリノ背景」の記事における「宇宙背景ニュートリノの温度の誘導」の解説
CMBの温度が与えられるとCνBの温度を推定することができる。他の物質からニュートリノが分断される前、宇宙は、ニュートリノ、電子、陽電子、光子から構成され、全てが互いに熱平衡の状態にあった。温度が約2.5 MeVに達すると、ニュートリノは他の物質から分断され始めた。この分断にも関わらず、ニュートリノと光子は宇宙の拡大につれて同じ温度で存在し続けた。しかし、温度が電子の質量よりも低下すると、ほとんどの電子と陽電子は対消滅して熱とエントロピーを光子に転移し、光子の温度を上昇させる。そのため、電子と陽電子の対消滅前後での光子の温度の比は、今日の光子とニュートリノの温度の比と同じになる。この比を見いだすことで、宇宙のエントロピーは、電子と陽電子の対消滅でおおよそ保存されていることが推定される。それから以下の式を用いる。 σ ∝ g T 3 {\displaystyle \sigma \propto gT^{3}} ここで、σはエントロピー、gは実効自由度、Tは温度である。すると、 ( g 0 g 1 ) 1 / 3 = T 1 T 0 {\displaystyle \left({\frac {g_{0}}{g_{1}}}\right)^{1/3}={\frac {T_{1}}{T_{0}}}} ここで、T0は電子と陽電子の対消滅の前の温度、T1はその後の温度を表す。g0は粒子の種類によって次のように決まる値である。 質量のないボソンである光子は2 フェルミオンである電子と陽電子はそれぞれ2(7/8) g1は、光子ではちょうど2となるため、 T ν T γ = ( 4 11 ) 1 / 3 {\displaystyle {\frac {T_{\nu }}{T_{\gamma }}}=\left({\frac {4}{11}}\right)^{1/3}} ここで現在の値であるTγ = 7000272500000000000♠2.725 Kを与えると、Tν ? 7000195000000000000♠1.95 Kとなる。 上述の議論は、常に相対論的である質量のないニュートリノでも成立する。静止質量が0ではないニュートリノでは、熱エネルギー3/2 kTν が静止質量エネルギーmνc2を下回ると、温度の観点での記述はもはや適切ではなくなる。その代わり、このような場合は、明確に定義されるエネルギー密度を用いることになる。
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