回転状態観測による分子構造の決定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 09:21 UTC 版)
「回転準位」の記事における「回転状態観測による分子構造の決定」の解説
回転準位は慣性モーメントによって決まるために、分子内の分子構造に対して特有の値をもつ。回転遷移を観測することで、慣性モーメント(直線分子においては一つ、対称コマ分子については2つ、非対称コマ分子については3つ)を決定することができる。それにより、慣性モーメントの数だけの自由度(たとえば、直線分子では全ての粒子の質量が既知の時の原子間距離)を決定することができる。また、回転遷移の選択律は、分子の配向の対称性によって決まるので、これも分子構造決定の情報となる。 以上のような情報とさらに量子化学計算を併用すると、原子数の少ない分子や対称性の高い分子については、かなり精確に分子構造を決定することができる。しかしながら、有機分子や生体分子に見られるような、原子数が多く対称性の低い分子については、違った分子が同じような回転遷移をもつことがあり、構造の決定が困難な場合が多い。 たとえば、これまで、電波望遠鏡による回転遷移観測により、多数の星間分子が発見され、その分子構造が同定されてきた。(星間分子の一覧) このように、分子構造が決定できない場合、炭素や水素の同位体置換物質を用いて、分子構造決定の助けにする場合がある。同位体置換しても、分子構造はほとんど変わらないが、質量が変わるために慣性モーメントが変わる。よって、同位体置換物質の回転準位の観測は分子構造を決定する新たな情報となる。
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