医療用マスク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 01:56 UTC 版)
医療用マスクは、主に空気中の飛沫(※飛び散る細かい水玉)を対象とする感染予防を目的とするマスクである。英語では "surgical mask" といい、日本語でもその音写形「サージカルマスク」が別名として通用する。英語のそれは名前のとおり、狭義には surgical(外科の、手術の)マスクであるが、広義には医療現場もしくは医療用のマスクを指す。 対象とする粒子径は一般的に5μmより大きいものである。SARSウイルス(0.1μm以下)のように感染性病原ウイルスが微粒子で、空気中に浮遊している場合、医療用マスクでは対応できないため、N95やDS2のクラス以上の防塵マスクが使用される。 マスクの性能を表す指標としてBFE(バクテリア飛沫捕集効率、Bacterial Filtration Efficiency)とVFE(ウイルス飛沫捕集効率、Viral Filtration Efficiency)。これはマスクによって前者は黄色ぶどう球菌、後者はΦX174(英語版)を含む懸濁液の粒子(平均粒子径3.0±0.3マイクロメートル)が除去される割合(%)である。アメリカ食品医薬品局(FDA)では、サージカルマスクの基準をBFE95%以上と規定している。 アメリカでは感染性エアロゾルに対する医療用マスクを surgical mask とし、FDAが登録制度を実施しており、製品には登録番号が表示される。産業用の使い捨て式防塵マスクとしてNIOSHの検定合格証を有するマスクでも、surgical mask として使用する時は改めてFDAに N95 surgical mask として登録する必要がある(※この場合には性能試験データの添付は不要)。かつてアメリカでは surgical mask の形状についても規格があったが、今では廃止されている。 日本では「サージカルマスク」という呼称やその性能に関して法令上の規定は無く、感染性呼吸器疾患(新型インフルエンザ等)の流行時に政府がガイドラインを公表したことはあったが、性能試験はアメリカのASTMインターナショナルが規定したASTM F 2100や民間の検査会社の独自規格が利用されていた。2021年6月16日には一般財団法人カケンテストセンターがASTMの規定を元に開発した試験方法と性能及が日本産業規格「JIS T 9001」として採用された。 基本的には使い捨てであるが、アウトブレイクが深刻化するなどして供給不足に陥った場合は、滅菌して再利用することもある。まさにそのような状況となった2020年コロナウイルス感染症大流行時の日本では、病院でさえ一人あたり1週間に1枚などといった悪条件下での対応を余儀なくされた。
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