切手の歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 23:48 UTC 版)
郵便料金前納のアイデアは19世紀初頭から各国で提案され、1819年にはサルデーニャ王国で実施をみていたが、現在と同じ郵便切手を利用した制度が開始されたのは1840年のイギリスである。この時開始された近代的郵便制度において導入された制度の一つとして、初めて郵便切手が発行された。ローランド・ヒルはイギリスのおける近代郵便制度の考案者であるが、彼は切手の考案者ではない。イギリス国内ではジェームズ・チャルマーズ(英語版)がその提案者であり、オーストリア帝国でもスロベニア出身のロヴレンツ・コシール(英語版)が、同様の案を1836年に提案している。 最初の切手にはイギリスの当時の国家元首であったヴィクトリア女王の肖像が使われており、最初の1ペニー切手(2ペンスの青色の切手も発行されていた)が黒色で印刷されていたため「ペニー・ブラック」という愛称がつけられ、翌年に色が赤色(ペニーレッド)に変更されるまで約6,000万枚が発行された。なお、この切手にはミシン目(目打)が穿孔されていなかったため、はさみで必要な枚数を切り出す必要があった。目打つき切手の登場は1854年のことである。また、発行国名の表記はなく、額面の記載も英語のみとなっている。他方、すでに裏糊はついていた。これらの特徴、特に国名表記の欠如は、その後発行された各国の切手にも共通した。 のちに成立した万国郵便連合(UPU)は、国際郵便における郵便物交換を円滑に行うため、切手には発行国の国名を示すこととした。ただし、イギリスに限って、世界最初の切手発行国であることに敬意を表し、イギリスの君主のシルエットを国名表記の代わりとすることを許している(“U.K. POSTAGE” の表記はない)。しかしながらサウジアラビアの切手には国名表記がなく、代わりに国章のシルエットがある。また、UPUは算用数字で額面を表していない切手は国内郵便へのみに有効であるとしたが、現在ではこの規制は撤廃され、国際郵便用の無額面切手のような切手もある。 この時期にはマルレディ封筒(英語版)(日本の郵便書簡に相当)など切手以外の方法による前払いの方法もあったが、込み入った図案で宛名欄が狭く使い勝手が悪いといった官製封筒のデザインの問題もあり、切手の方がその簡便さもあって、広く受け入れられた。制度が始まったのがイギリスであったこともあり、切手発行国はヨーロッパや、イギリス植民地が中心であったが、徐々に世界各国に広まった。
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