出版と作品の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/10 04:10 UTC 版)
「僕とカミンスキー 盲目の老画家との奇妙な旅」の記事における「出版と作品の評価」の解説
本作はケールマンにとって5冊目・長編3作目の作品で、ズーアカンプから2003年に出版され、ドイツ国内で18万部を売り上げた。その後英語・フランス語・スペイン語をはじめ世界26ヶ国語に翻訳されている。日本では、2009年に三修社から瀬川裕司による訳本が出版された。翻訳を担当した瀬川は、本作ではケールマン作品の重要テーマである死・老い・天才・時間の流れが全て押さえられていると指摘している。 『デア・シュピーゲル』のインタビューを受けたケールマンは、カミンスキーとツェルナーの関係について次のように語っている。 互いに不釣り合いなふたりの主人公が送る旅は、ケールマンによって、強い熱情も無く、素朴に、しっかりとした書き口で描写され、その中でふたりは明白に、心理的に巧妙な緊張関係に陥る。ケールマンは「互いに名を成すために相手を必要としており、そのため相手を助けることにある種の関心を持っていて、同時に相手を操ろうという意図を持っている」と考えている。 — ダニエル・ケールマン、『デア・シュピーゲル』、2003年3月7日 このインタビューを担当したイレーネ・ビナルは、「[前略]ケールマンは、抜け目なくユーモアに富んだ魅力的な語り口で、再び自身を文芸作品の名手だと証明した」と絶賛した。 『ガーディアン』紙のフィリップ・オルターマンは、「お約束とは違い、ケールマンはドイツ語で面白おかしい散文を書いた最初の人物ではない。喜劇と悲劇の狭間にある居心地悪い空間ではカフカの方が上手だが、最高点ではケールマンの書く主人公の視野の狭さだって同じ効果を持っている」と述べた。『テレグラフ』紙のジェフ・ケリッジは、「ケールマンは芸術家や批評家の自負について確かな目を持っているが、『世界の測量』[=ケールマンの前作]に比べて、観念を著す小説のような光の当て方だと感じた人もいるかもしれない。しかし『僕とカミンスキー』には真面目なポイントがひとつ存在する—それは、人間や自然を理解しようとせずに生きればどんなに簡単かということだ」と述べた。『インデペンデント』紙のボイド・トンキンは、「『僕とカミンスキー』は、明らかな道程から外れた時だけこちらを引きつけ始める」「スマートアートな風刺も全く飛んではいない」と述べた。
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