人間に対する社会生物学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 08:04 UTC 版)
「エドワード・オズボーン・ウィルソン」の記事における「人間に対する社会生物学」の解説
彼はヒトも含めたあらゆる動物の行動は、遺伝と環境双方の影響によって形作られるもので、自由意思や文化決定論は幻想であり、文化は「遺伝子の首ひも」として生物学的な基盤を持つと主張した。社会生物学的な視点は進化の法則に従ったエピジェネティック・ルール(後成規則。彼の造語でエピジェネティクスと同じ物ではない)の影響によって形作られると表現した。この理論は独創的で、論争的で、影響力の大きな物であった 。 社会生物学の研究に対する論争はそれをヒトへ適用したときに始まった。この理論は広く信じられていたタブラ・ラサ、つまり人は全くまっさらなまま生まれてきて文化が人の知識を増加させ、生存と成功を援助する機能を持つという主張を拒絶する科学的な論拠を成立させた。彼の著書『社会生物学』の最終章とピューリッツァー賞を受賞した『人の本性について』で、ウィルソンは人の精神は文化と同じくらい遺伝の影響も受けており、(文化決定論が主張していたような、人の文化はあまりに多様で無限の可能性があると言うような主張に反対して)社会や環境要因が人の行動に与える影響には限度があると主張した。 彼は幼児期の経験が人格形成に多大な影響を与えるというフロイト式の説明は誇張されすぎており(例えば自閉症や統合失調症は親の愛情不足だと説明されていた)、生物学的基盤について説明することはそれに苦しむ親の苦悩を解放できると考えた。また宗教が人々に罪の重荷を着せることにも反対で、やはり宗教的な重荷から人々を解放できると考えた。後に宗教に対してはいくぶん融和的な姿勢をとるようになった。ウィルソンは明確に人間社会生物学を提唱したが、この分野はのちにハーバード大学の同僚で人類学者でもあったアーヴィン・デヴォアやトリヴァースらの教え子に当たるレダ・コスミデスやジョン・トゥービー、ミシガン大学教授で社会生物学の支援者だったリチャード・アリグザンダーらによって(ウィルソンから距離を置く形で)進化心理学として成立した。
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