TA方式
サーモオートクローム方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 02:52 UTC 版)
「直接感熱記録印刷」の記事における「サーモオートクローム方式」の解説
サーモオートクローム (TA) 方式とは、1994年に富士フイルムが発表した、感熱記録方式としては世界初となるフルカラー印刷が可能な感熱式プリンターの一方式である。 顕色剤を内包した感温性マイクロカプセルを加熱することにより発色させ、紫外光によってジアゾニウム塩を分解することで定着させる機構の、内部発色型である。マイクロカプセルの熱特性をCMY(色の三原色)の各色毎に変え、1台のサーマルヘッドの出力を大きくは三段階に変える事で各色の階調表現を可能にした。 1990年代当時は家庭用プリンタとしてインクジェットプリンタの普及が進んでいたが、インクジェット方式は印刷コストは低くても印刷解像度が低く、印刷速度も遅かったのに対し、昇華型熱転写方式は印刷コストが高いながらもなだらかな階調表現ができ、銀塩写真に迫る表現力があったので、デジタル写真プリンタとしては昇華型熱転写方式が主流であった。しかしTA方式は、昇華型熱転写方式と同様の原理で印刷し、昇華型熱転写方式に迫るクオリティを持っていたため、1990年代中頃より富士通とパナソニックによって民生向けモバイルフォトプリンターとしても発売された。 しかしTA方式は、昇華型熱転写方式に対してそれほどの優位性が無かった。昇華型プリンタだとインクリボン代と紙代がかかるのに対し、TA方式は紙代だけで済むので若干安くなる程度であった。また、昇華型熱転写方式はインクリボンを使うため、情報漏洩の危険性があるのに対し、感熱記録方式は情報漏洩の危険性が無いという利点があったが、それくらいであった。 2002年にはデジカメブームに乗り、昇華型熱転写方式の業務用フォトプリンター最大手の神鋼電機も同社初となる家庭用デジタルフォトプリンター「COLOR PET」を発売する中、TA方式の開発元である富士フイルムは2002年にデジタルフォトプリンタの新ブランド「Printpix」の展開に際し、「TA方式」の名称を「Printpix方式」と改めた。インクリボンのコストダウンに限界がある昇華型熱転写方式に対し、Printpixは普及次第では専用ペーパーの大幅なコストダウンも可能であることを富士フイルムは言明していたが、結局Printpixはそれほど普及しないまま2004年に販売を終了し、業務用も含めて市場から姿を消した。
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