がん細胞の増殖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/04 17:57 UTC 版)
「サイクリン依存性キナーゼ2」の記事における「がん細胞の増殖」の解説
CDK2は正常に機能している細胞での細胞周期の進行に必要不可欠な要素ではないが、がん細胞の異常な成長過程には重要である。CCNE1(英語版)遺伝子は、CDK2の主要な2つの結合パートナーのうちの1つであるサイクリンEを産生する。CCNE1の過剰発現は多くの腫瘍細胞で見られ、これらの細胞の生存はCDK2とサイクリンEに依存している。サイクリンEの異常な活性は、乳がん、肺がん、大腸がん、胃がん、骨のがん、白血病やリンパ腫でも見られる。同様に、サイクリンA2(英語版)の異常な発現は染色体不安定性や腫瘍増殖と関係しており、その阻害によって腫瘍の成長は低下する。そのため、CDK2とそのパートナーとなるサイクリンは新たながん治療法の治療標的となる可能性がある。前臨床モデルでは腫瘍成長の抑制に予備的な成功がみられており、現行の化学療法薬の副作用を減少させることも観察されている。 CDK2に対する選択的阻害薬の同定は、CDK2と他のCDKの活性部位の類似性、特にCDK1との極度の類似性のため困難である。CDK1は細胞周期に必須な唯一のCDKであり、その阻害によって意図しない副作用が生じる可能性がある。CDK2阻害薬候補の大部分はATP結合部位を標的としており、タイプIとタイプIIの2つの主要なクラスに分類される。タイプIの阻害薬は活性部位のATP結合部位に対して競合的に機能する。タイプIIの阻害薬はサイクリン非結合状態のCDK2を標的とし、ATP結合部位やキナーゼ内の疎水的ポケットのどちらかを占有する。タイプIIの阻害薬の方が選択性が高いと考えられている。近年、CDKの新たな結晶構造が発表され、Cヘリックスの近傍にアロステリック結合部位が存在する可能性が示された。このアロステリック部位を標的とした阻害薬はタイプIIIに分類される。他に標的として可能性があるのはCDK2のTループである。サイクリンAがCDK2に結合するとNローブが回転し、ATP結合部位は活性化され、Tループと呼ばれる活性化ループの位置が切り替えられる。
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