《聴く》の敬語
「聴く」の敬語表現
「聞く」と「聴く」は異字同訓(異なる漢字だが意味が近く、訓読みで同じになる)の単語です。主として2つの言葉の違いは、「聞く」は耳に自然に入ってくる音を聞く、「聴く」は注意深く耳を傾けて聴くといった意味があります。「聴く」の敬語表現には、尊敬語と謙譲語の2つがあります。尊敬語とは、相手の立場をあげて相手に敬意を払う敬語です。「聴く」の尊敬語は、主語は対象相手で「お聴きになる」と表現するのが特徴です。次に謙譲語とは、自分の立場をさげることによって、相手に敬意を払う敬語です。「聴く」の謙譲語は、主語は自分で「拝聴する」や「伺う」と表現することが特徴です。
「聴く」の敬語の最上級の表現
「聴く」の謙譲語には「伺う」があります。「伺う」は最上級の敬語表現として「伺いたく存じます」という表現が使えます。「伺いたく存じます」は「伺う」と「存じる」といった2つの言葉が独立して意味を持っているので、2重敬語になりません。2重敬語の表現とは、同種類の敬語を2つ重ねてしまう言葉のことです。「伺いたく存じます」は「伺います」を使うより、2つの謙譲語を使うので、自分をよりへりくだった表現にします。「聴く」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
敬語表現の「聴く」の使い方は、「聞く」よりも言葉の範囲が狭くなるのが特徴です。また「聴く」はビジネスメールや手紙において尊敬語、謙譲語の使い方が、まぎらわしいので注意を払いましょう。まず「聴く」の尊敬語「お聴きになる」の例文は以下です。「A部長は、昨日のA社主催の講演会をお聴きになりましたか」で表現できます。主語が自分ではないので、尊敬語の「お聴きになられる」が適切な表現です。次は、「聴く」の謙譲語「拝聴する」「伺う」の例文は以下です。「A社の講演会を拝聴しました」「○○さんのスピーチを伺いました」と表現できます。主語は自分になりますので、謙譲語の「拝聴する」や「伺う」が適切な表現です。
また手紙などでは、相手が自分の話を聴いてくることへの尊敬を表す場合は「清聴」を使います。「今回の私の講演会を○○様がご清聴くださったと伺いました」といった旨を手紙で伝えます。「清聴」を使うときは、日をあらため手紙にすると上司や目上の人に感謝の気持ちが伝わりやすく、いい印象を与えるのに効果的です。
「聴く」を上司に伝える際の敬語表現
自分を主語にして謙譲語の「拝聴する」「伺う」をに使い上司に気持ちを伝えます。また適切な場なら「伺いたく存じます」を使うと効果的でしょう。例えば「次回の部長の勉強会には、伺いたく存じます」と上司に言えば、出席すると上司に自分の意思が伝わりやすいです。「伺います」だけで表現するよりも、「伺いたく存じます」も表現できたほうが便利です。ビジネスにおける言葉の幅が、広くなるのは間違いないです。「伺いたく存じます」の欠点は、使いすぎると、まどろっこしくなります。「聴く」の敬語での誤用表現・注意事項
「聴く」の尊敬語での誤用表現は「お聴きになられる」です。「お~」の尊敬語の形式に、動詞「聴く」に丁寧形のマスを付けた尊敬語表現に、尊敬の意味がある助詞の「れる」が入るので2重敬語になります。助詞の「れる」を使わず、「お聴きになる」が適切です。「聴く」の謙譲語での誤用表現は「拝聴いたします」が有名です。聴くの謙譲語「拝聴」に、するの謙譲語「いたす」が重なった2重敬語で間違いです。また「ご拝聴したいです」も間違いで、「ご~」の謙譲語の形式に「拝聴」の謙譲語が重なった2重敬語になります。最後に、お客様からの問い合わせに対して「総務部の○○に伺いください」という表現をみてみます。この例では「伺う」という謙譲語を使っています。謙譲語の主語は自分にしないといけないので、間違いです。よくある失敗とされ、謙譲語の「伺う」は相手に使うのは不適切で自分が「伺う」際に使います。
適切には「総務部の○○へお尋ねください(お聞きください、お聴きくだいさい)」と、尊敬語で表現します。
「聴く」の敬語での言い換え表現
「聴く」の尊敬語である「お聴きになる」の言い換え表現は、「お耳に入る」、「お聞きになる」が適切です。また「聴く」の謙譲語である「伺う」「拝聴する」の言い換え表現は、「承る」が適切です。尊敬語の「お聞きになる」は、「聴く」と「聞く」で悩んだときは「聞く」で表現したほうが無難です。「聞く」は「聴く」を広い意味で含んでいる言葉なので、「Bさんのプレゼンをお聞(聴)きになりましたか」と表現できます。
次に「お耳に入る」は、主語である相手は上司など目上の人に対して「投資情報をお耳に入っていますか」といった使い方をします。
謙譲語の「承る」は、相手の意見を引き受けたり、今までのことを受け継ぐといった意味をもちます。「明日の講演会の件、承っております」と表現します。
ちなみに「傾聴する」は相手の話に、注意深く耳を傾け、肯定的な共感を示す意味合いがあります。注意深く耳を傾けて「聴く」に「傾聴する」はかなり近いニュアンスです。しかし「拝聴」と違い「傾聴」は謙譲語でないので注意しましょう。
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