XV-1 (航空機)
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運用歴
XV-1の初号機(シリアル番号: 53-4016)は1954年2月11日にテストパイロットのジョン R.ノル (John R. Noll) による空中静止の維持(ホバリング)飛行試験を開始した。
繋留索は、主回転翼のチップジェット推進システムの問題が解決されるまで、航空機を地面効果内の高度範囲に維持するための鉛の錘(重石)の代用だった。
1954年7月14日、上記の制限は取り除かれ、XV-1は最初の自由な空中静止 (フリーホバリング) 飛行を行った[1] 飛行試験が続行されると、マクドネル社は第2号機(シリアル番号: 53-4017)を完成させた[4]。
第2号機は、高速前進飛行中に誘導抗力を低減するために、元のXV-1初号機の設計から変更された。この目的を達成するために、主回転翼の取付部(ローターパイロン)を減らし、下部構造を合理化し、強化した。
第2号機はまた、各テールブームの終端部外側に取り付けられた、2つの4枚羽根の小さな尾部回転翼(テールローター)を特色としていた。これらはジョン R.ノルの空中静止試験飛行の結果の反映であり、"舵、特に垂直尾翼を使用するときに水平面での安定感がない!" (She's lack of yaw authority!) と述べた。
元の原型である XV-1初号機は、後に第2号機と同様のテールブームの終端部外側のテールローター仕様に改修された[1]。
1955年の春までに、XV-1第2号機は飛行試験計画に参加する準備が整った[2]。
1955年4月29日、XV-1は垂直飛行から水平飛行への最初の転換飛行への移行を行い成功させ、1955年10月10日、XV-1第2号機は200 mph (320 km/h; 170 kn)、その当時の全てのヘリコプターの世界速度記録よりも 約45 mph (72 km/h; 39 kn) 速かった[1]。
XV-1は"mu"(回転翼の羽根の先端速度に対する対気速度の比)[9]を0.95の値で達成した[10]。
3年後、製造された全2機の累計で約600飛行時間が経過した後、XV-1の契約は1957年に解除された[4]。
結局のところ、チップジェット方式のXV-1を用いることは、従来のヘリコプターと比べて得られる利点が少ない上に、構造が複雑になり過ぎて費用対効果が引き合わないと判断された。 出力の割には重い(重量出力比が悪い)レシプロエンジン(ピストンエンジン)は、設計の利点を活かすのに充分な出力を出せなかった。
従来のヘリコプターの回転翼の設計とターボシャフト発動機の目覚ましい技術的進歩は、その後のXV-1の 性能の優位性の余裕分(マージン)を否定するだろうと予測された[1][3]。
コックピットでの平均的な騒音水準値は116 dBであったが、エンジン騒音はともかく、回転翼の羽根の先端のジェット騒音の水準は、1/2マイル (0.80km) も離れた距離でも依然として90 dBを記録し、地上職の観測員は羽根先端のジェット音を「イライラする極度の刺激である」と記述した[11]。
マクドネル社は、小型の"クレーンヘリコプター"設計(「モデル120」と定義され、1957年11月13日に初飛行)を用いて、チップジェット回転翼技術を利用しようと試みた[12]。
- ^ a b c d e f g (Connor & Lee, 2001)
- ^ a b c d e f g (Harding, 1997)
- ^ a b (Markman, 2000)
- ^ a b c (Francillon, 1997)
- ^ (GlobalSecurity.org)
- ^ Harris 2003, page 27
- ^ Watkinson, John (2004). The Art of the Helicopter. Elsevier Butterworth-Heinemann. pp. 355. ISBN 07506 5715 4
- ^ Harris 2003, page 14
- ^ What is the Mu-1 barrier? Flight Global, 12 July 2005. Accessed: 18 January 2011.
- ^ Anderson, Rod. The CarterCopter and its legacy Issue 83, Contact Magazine, 30 March 2006. Accessed: 11 December 2010.
- ^ Harris 2003, page 26
- ^ (Donald, 1997)
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