NAND型フラッシュメモリ ブロックとページ

NAND型フラッシュメモリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 16:41 UTC 版)

ブロックとページ

NAND型では、セルを駆動するのに必要な導線を複数のセルで共有している。このためデータの書き込み、読み込みはページと呼ばれる複数ビット単位で、消去はブロックとよばれる前述のページを複数でひとまとめにした単位で一括して行われる。このためNAND型フラッシュメモリの動作は以下の3つが基本となる。

  • ページ読み出し
  • ページ書き込み
  • ブロック消去
標準的なSLCでのページ/ブロック構成
  • 1ページ:2,112バイト (2,048+64)
    • ユーザデータエリア:2,048バイト
    • 冗長エリア:64バイト
  • 1ブロック:64ページ、135,168バイト(2,112×64 ユーザデータ131,072バイト)[注釈 1]
ブロックあたりのページ数は1列に直列にするセルの数になる。1ページ2,112バイト、1ブロック64ページの場合、1ブロックにはセル64素子を直列にした列が16,896列 (2,112×8) あることになる。
ブロックとページの弊害
上記のように消去動作は複数ページを含むブロック単位でしか行えず、また、1動作では上書きできずに消去してから書き込みを行う必要があるため、1ページの書き替えでも(SLCの場合)一度1ブロック64ページ全ての内容をNAND型フラッシュメモリの外部に読み出して、一時的に保持しておき、1ブロック64ページ全てを消去する必要がある。NAND型フラッシュメモリの外部の記憶領域で必要な書き換えの加工処理を行ってから、その消去済みのブロックに改めて書き戻す動作が行われる。

寿命

フラッシュメモリにも寿命がある。書き換え可能回数に上限があるほか、記録内容の保持期間も有限(最大で10年から数十年)であり、劣化により書き込んだ情報はいつか失われる。また回路構造上、NOR型よりもNAND型の方が劣化が進みやすい。また、データを常に記録するような用途で使用すると、特性上急激な劣化(不良ブロック)が発生し、製品寿命が著しく短くなることが予測されるという[5]

書き換え回数の制限

浮遊ゲートへ電子の注入と引き抜きを何度も繰り返すと、トンネル酸化膜 (Tunnel Oxide) と呼ばれる絶縁層である酸化膜を電子が通過するために、格子欠陥と呼ばれる、電子が通過しやすい箇所が増大していき、この層が劣化してゆく[注釈 2]。やがて格子欠陥が層を貫通し電子が通過してしまい、正常に情報の記録が行えないセルが生じ、このセルを含むブロックは不良ブロックとなる。この時の誤りは後述の誤り訂正の仕組みでかなりの程度までは訂正される。この一度生じた不良ブロックは回復することなく、この不良ブロックを使用しないように管理をする必要がある。

一般的なデータ書き込みおよび消去後、不良ブロックの検知処理を行い、不良ブロックを管理するロジックが組み込まれている。不良ブロックと検知されたブロックは冗長バイト内に不良ブロックを示すフラグ情報が書き込まれる。

書き換え頻度の上限回数は各社の企業秘密であり、公表はされていないが、SLCで10万回程度[2]、MLCで1万回程度の消去・書き込みが上限ではないかと言われている[要出典]

メモリセルに対する読み書きによってゲート酸化膜の劣化が進行すると、電荷の蓄積量が当初の設計値とずれてしまい、"0"と"1"の差異が判別できなくなることで寿命となるが、読み書きが全く行われないブロックでも近隣セルの動作に伴って電圧が加わるため、「読み出しディスターブ」 (Read Disturb) と呼ばれる劣化が進行する[6]

データのエラー訂正

NAND型の欠点として、書き込み時のエラービットの発生が比較的多いことが挙げられる。これは、書き込み時に過剰な電子が浮遊ゲート内に注入されてしまうことにより、読み出し時にセルからの出力電圧異常が発生することや、書き換え回数の上限に起因する。このためNAND型では、ページ内の誤り訂正コードを演算し、冗長記憶エリアにこの誤り訂正コードを書き込む。

また、読み出し時に要求の記憶番地に該当するユーザデータと誤り訂正コードを演算し誤りがないか確認し、誤りがあれば訂正処理を行い、必要ならば不良ブロック処理を行う。


注釈

  1. ^ NAND型の初期では、1ページ当たり512バイト(ユーザデータ)+16(冗長エリア)=528バイト、1ブロック当たり32ページ=16,896バイト(ユーザデータ16,384バイト)が一般的だった。
  2. ^ 層が薄くなる模式図がよくあるが、層に亀裂が生じるイメージがより近い。層そのものがさらに薄くなるわけではない

出典

  1. ^ a b c d e SHG2A, p. 3.
  2. ^ a b c d SHG2A, p. 4.
  3. ^ a b 松川 2011, p. 24.
  4. ^ a b 松川 2011, p. 25.
  5. ^ 竹内健 (2008年4月21日). “HDD完全代替に向けてOSによる対応が急務”. 日経エレクトロニクス: 67-77. オリジナルの2016-01-14時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160114133006/http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20090219/165972/ 2012年2月13日閲覧。. 
  6. ^ 故障メカニズム”. 東芝セミコンダクター&ストレージ (2011年4月). 2012年2月24日閲覧。[リンク切れ]
  7. ^ 出典:日経マーケット・アクセス[要文献特定詳細情報]
  8. ^ “Micron、16nmプロセス/128GbitのNANDフラッシュをサンプル出荷開始”. PC Watch. http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20130717_607916.html 2013年7月17日閲覧。 
  9. ^ “東芝メモリ:前途多難、1日売却 半導体価格下落の恐れも”. 毎日新聞. (2018年5月31日). https://mainichi.jp/articles/20180601/k00/00m/020/106000c 2018年6月2日閲覧。 


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