Charlotte (アニメ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/27 06:42 UTC 版)
用語
- 特殊能力
- ある時を境に目覚める他には持たない特別な能力のこと[21]。ただし、全てにおいて不完全で、思春期が過ぎるとその能力が消滅する[47][48]。
- 星ノ海学園
- 特殊能力を持つ、あるいはその可能性のある少年少女が集められた学園[21]。その能力が消えるまで通い続けなければならず、部外者の立ち入りや外出も基本的に許されていない。能力者を実験台にしようとする科学者から守るために隼翼らによって設立された[3]。
- 生徒会
- 星ノ海学園内にある組織で、生徒会長は友利[47]。主な活動は校外にいる特殊能力者を捜査し、科学者らの手が及ばないよう能力の秘匿を促すこと[21]。有宇や柚咲のように、星ノ海学園へ編入させて保護することもある。
- シャーロット
- 75年に1度地球に接近する長期彗星[26]。この彗星から未知なる粒子が地球に降り注ぎ、それを吸った人間は一番多感な時期に特殊能力を発症するという[19]。
製作
経緯・スタッフィング
原作・脚本 | 麻枝准 |
---|---|
監督 | 浅井義之 |
キャラクター原案 | Na-Ga |
キャラクターデザイン | 関口可奈味 |
サブキャラクターデザイン 衣装デザイン |
大東百合絵 |
総作画監督 | 杉光登、関口可奈味 |
アクション作画監督 | 宮下雄次 |
美術監督 | 東地和生 |
色彩設定 | 菅原美佳 |
撮影監督 | 佐藤勝史 |
3D監督 | 小川耕平 |
特殊効果 | 村上正博 |
編集 | 高橋歩 |
音響監督 | 飯田里樹 |
音楽 | ANANT-GARDE EYES 麻枝准、光収容 |
音楽制作 | ビジュアルアーツ、1st PLACE |
アニメーション制作 | P.A.WORKS |
製作 |
アニメ『Charlotte』の構想は2012年頃からあり、新作についてプロデューサーの鳥羽洋典とP.A.WORKSの堀川憲司の間で計画を練っているうちに、麻枝のオリジナルアニメ第一弾である『Angel Beats!』の頃とは違って今のP.A.WORKSなら麻枝がやりたいことが可能になるということで再び麻枝を原作、脚本で起用することになった[52]。企画当初は『AB (Angel Beats!)』にならって略称が『AA』となるタイトルにする案があったが、麻枝の意向でそれを超えるものを模索した結果、タイトルが『Charlotte』になった[53]。本タイトルのネーミングの由来は麻枝が好きなバンドの『ART-SCHOOL』の楽曲である「シャーロット」から採ったという[54]。キャラクターに関しても、『Angel Beats!』と同様Na-Gaがキャラクター原案を担当し、『Angel Beats!』の第9話で作画監督を務めていた関口可奈味ならNa-Gaの原案をうまく生かすことができるだろうとキャラクターデザインで起用された[55]。ただ、『Angel Beats!』と全く同じ人選にはせず、基本のメンバーに新たな人材を配置したものになっており、『Angel Beats!』の第5話と特別篇において絵コンテを担当した浅井義之を監督として起用することになり、『Angel Beats!』で美術監督を務めた東地和生、同じく音響監督だった飯田里樹をそれぞれ採用した[55]。
2014年12月22日にニコニコ生放送などにて『Angel Beats!』のゲーム発売日とともに、Key・アニプレックス・『電撃G's magazine』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス)・P.A.WORKSの共同企画として当作品のアニメ制作が発表された。公式Twitterは『Angel Beats!』本放送前に開設したものが使われている。
セッティング・ストーリー
『Charlotte』は『Angel Beats!』とは異なり、登場人物を絞り、それぞれの心情を追いかけることでストーリーを紡いでいく物語になっている[56]。また、二面性や感情豊かな人間味があるキャラクターが多く登場し、コメディー要素が含まれる青春物である[56]。『Charlotte』は主人公の有宇に麻枝の人間性が反映されており、赤裸々に表現するその物語は麻枝の「私小説」であると堀川と鳥羽は語る[55]。また、有宇は麻枝の意向で「key史上最高」のゲスさを全面に出したものとなっており、彼を巻き込む形で物語は展開していく[57][53]。主人公の有宇がどこまで成長できるのかがこの物語のポイントであり、学園での活躍から世界の人々を救うというゴールを企画当初から想定してシナリオを書いたと麻枝はコメントする[58][59]。当初の企画より能力者モノではあるが、同じような設定が多くある中で、どのようにすれば他の作品と差をつけることが出来るのかを浅井と辻は求めた[60]。脚本を手がける麻枝にとって、今回の作品は2作目となっており、前回では出来なかったものが今回では活かすことが出来ると語る[53][52]。また、麻枝が脚本を書くにあたって、『Angel Beats!』は「ゲーム」のシナリオに近い形で構成したが、本作は「アニメ」として脚本を練り上げたとコメントし[61]、細部では、心の機微の表現を得意とするNa-Gaにアドバイス求めて不自然なキャラクターを指摘してもらったという[62]。『Charlotte』はスロースタートとなっており[52]、第6話から本格的に物語が動き出し主人公の有宇が成長していく過程がみられる[63]。第5話の時点で友利と高城は有宇の本当の能力を熊耳から聞いて知っていたが、彼自身はそれに気が付かなかった[63]。設定は完璧ではないが、視聴者の期待に添える仕掛けが待っているとインタビューで麻枝は語る[64]。
全く異なる2枚のキービジュアルからも本作品のテーマがうかがえ、予てから提示されてきた「能力者による青春モノ」というイメージから主人公たちに待っている「過酷な運命」へと物語は展開してく[52]。その中で、麻枝のギャグセンスとして、能力の制約上、血まみれになる能力者やピザソース料理などのお決まりのネタが作中に仕込まれている[65][66][67]。
通常、アニメのサブタイトルの公開はネタバレを理由に放送とともに随時公開されていくが、『Charlotte』は放送直前から全てのタイトルを公開した[68]。それらのサブタイトルは散文的なものが多く、「旋律」や「音」に関係する単語が組み込まれていて音楽面も重視した作品であり、スタートから様々な仕掛けがある[68]。
本作に登場する能力とストーリーの関わり方について麻枝は、登場人物が有している特殊能力は必ず不自然な状態で発現しており、それを用いてバトルをすることは設定上無理なことから、「能力者モノ」ではあるが「能力バトルモノ」ではないと語る[47]。
企画当初、最終話(第13話)において隼翼らのいる日本側のストーリーを詳しく描く予定だったが、最終稿では日本側の描写を最低限に抑えることによって有宇の孤独感を際立たせ、友利との関係が強調されるようにストーリーが変更されている[59]。
映像・作画・美術
P.A.WORKSのプロデューサー・辻充仁が本作の制作に急遽参加した時には、第六話くらいまでのシナリオは決まっており、前回の『Angel Beats!』と同様に映像で表現することに集中できたと辻は語る[69]。また、作画に関しては具体的で細かな指示はされていないが、『Angel Beats!』と方向性を同じようにするという意識は制作陣にあり、全く同じ雰囲気にしないまでも良い所取りをしてバランスよく監督の浅井が表現したという[69]。
企画当初、キャラクター原案のNa-Gaは麻枝からメールで本作に関する簡潔な話があり、再びアニメ作品に関わることが出来て良かったとコメントする[69]。麻枝のイメージを生かしてデザインを起こすことを基本としつつも、最初のデザイン案にはNa-Gaの意向が色濃く出ており、友利の服と髪の色は黒が良いとNa-Gaは提案していた[69]。『Angel Beats!』のキャラに被らないようにデザインを工夫し、キャラクターをデザインで表現することに重きを置いたと言う[69]。特に、瞳に関しては『Angel Beats!』の時と違うアプローチがないかを模索したり、前作同様キャラクターに動きがあったりと、さらに表現がブラッシュアップされているものとなる[69]。
本作の美術のコンセプトは、感受性豊かな思春期であるからこそ感じることが出来る色を重要にしたと美術監督の東地は述べる[70]。歩未のキャラデザはいかにオデコを可愛く表現するかがポイントとなり、柚咲は他のキャラクターより陽気になるような表情にしている[71]。制作当初、高城のキャラデザの発注は知的なメガネキャラとしてだったが、キャラを煮詰めるうちに『Angel Beats!』の高松の雰囲気を帯びるようになった[71][72]。有宇におけるキャラデザインは『DEATH NOTE』の夜神月や『コードギアス』のルルーシュ・ランペルージをイメージし、見た目は「知的なイケメン」を軸にして発案した[73]。
第13話における有宇の世界一周の旅の様子を描くのはアニメならではの表現であり、背景美術の兼ね合いからゲームでは実現が難しいと麻枝は語る[59]。また、本作で描かれる背景美術は世界一周の旅の様子によりリアリティーを与えるものとなっている[59]。
音楽・音響
音響監督の飯田によって通常のアニメのボリューム感より映画的な、BGMが前にくるようなミックスがされている[69]。麻枝がシナリオ兼音楽制作をすることについて、「この話数のこのシーンでこの曲をかけたい」ということが明確になり、シーンを曲に合わせることが出来るなどのメリットがあったと辻は語る[69]。序盤から挿入歌のBGMバージョンを入れ、その後にVocalバージョンを流すことによって効果的に演出する方法がとられている[59]。
『Charlotte』に登場する劇中歌の作曲も麻枝が手がけており、「初期のB'z」をコンセプトに作曲したとコメントする[53]。『Charlotte』は「ゲームの主題歌」よりも麻枝自身の企画として制作した『Love Song』や『終わりの惑星のLove Song』に近い「コンセプトアルバム」のようなものだと鳥羽は語る[74]。劇中で使用される『ZHIEND』の曲の歌詞は海外のポストロックバンドであることから全て英語になっている[36][注 2]。オープニングテーマの『Bravely You』は主人公の有宇の視点で描かれ、歌詞には麻枝のメッセージや言葉遊びの要素が込められており、曲調としてはドライブ感が出ているものとなっている[76][77]。劇中で登場する『How-Low-Hello』の曲は2014年の12月ごろから曲の録音が始まっており、キーが高く伸ばしが多用されている「麻枝節」の楽曲である[11]。
演技・キャスティング
『Angel Beats!』における「中の人が歌える」という反応より、麻枝が声優に歌ってもらえるよう内田真礼を西森柚咲役として起用した[78]。内田は柚咲のアイドルらしさを出すために彼女の天真爛漫なキャラを意識し[79]、柚咲と美砂の演じ分けにあたっては、表情を変化させたり立ち位置を変えたりしながら工夫して演じたと語る[38]。乙坂有宇役の内山昂輝はアフレコの時に「もっとゲスく、視聴者に嫌われるようなキャラで」と指示され、友利奈緒役の佐倉綾音はオーディションの時に音響監督の飯田から「汚い」までも「乱暴者にはならないよう」演じるように言われたという[57]。第12話における告白シーンの主人公に対する友利の味気ない反応や、最終話で記憶喪失になった有宇との会話における佐倉の演技が秀逸だと麻枝はコメントする[80]。また、最終話における有宇役の内山の圧倒されるような演技は麻枝のイメージと合ってたという[80]。
反響
評価
Anime News Networkのレビューによると、評論家のGabriella Ekensはこのシリーズを「sculpting singular, evocative moments」と称賛したが、続けて「あなたがそれらを大局と結び付けようとしようとした時、問題が生じてくる」と言った[81]。Ekensはこのアニメの進行と構成を批判し、「『Charlotte』は全体として能率が悪く、拡散する物語のアイデアの寄せ集め」だと評し、「『あの花』が急に『DARKER THAN BLACK』に変わった」ようなものだと比較した[81]。また、Ekensは、この物語のテーマの目的を最後から2/3のところまで明らかにしなかったのは、「『魔法少女まどか☆マギカ』がもたらす感情的ジレンマをメロドラマ風に緻密に仕上げる麻枝准の機会だと思われる」と語る[81]。第4話の野球回[82]の時点で、少なくとも『プラスティック・メモリーズ』よりかは面白く、「ばかげているかもしれないが、『終わりのセラフ』でのコメディーが好きなのと同じ理由で好きだ」と語る[83]。総合して、『Charlotte』はそのエンターテイメントの価値と予測不可能性から定評があるが、「芸術作品としては期待を裏切った」[81]。
ライターの中澤星児は、『Charlotte』は一見したところ普通の学園モノのアニメだが、それはほんの一要素でしかないことから本作品を「『萌えアニメ』ではなく『人間ドラマ』」と位置づけ、単なる萌えアニメではないと評した[84]。さらに、話が展開されるにつれ能力者であるが故の葛藤が浮き彫りになっていく主人公らの成長物語であり、気が付けば、一般社会と思春期の真っただ中にいる彼らが対峙した時にみつけるものと自分を重ねているとコメントする[84]。そして『麻枝節』の特徴である、どこかそこはかとなく感じられる死を基調としたシリアスな展開を巧妙なギャグを入れることによって中和させるシナリオがこの作品にうかがえると語る[84]
個性的なキャラクターと共に問題を解決していくシナリオは独創的なもので、幅広い視聴者層にも受け入られるようなバランスがあるとしている[85]。本作の主人公、乙坂有宇のゲスさに第1話の初めから驚き、その後に彼の日常が全く異なるものとなってしまったことに引き込まれていったとコラムニストの小新井涼はコメントする[86]。
売り上げ・指標
『Charlotte』のBlu-ray第一巻は発売一週間目で6,287枚を売り上げ、日本のオリコンによる週間・Blu-rayアニメランキングで1位を獲得し[87][88]、第二巻は6位[89]、第三巻は9位を獲得した[90]。オープニングテーマの「Bravely You」とエンディングテーマの「灼け落ちない翼」はオリコン週間・CDシングルランキングで第4位になり、発売一週間目で23,000枚以上売り上げた[91]。『How-Low-Hello』のシングル・「楽園まで」と「発熱デイズ」は週間・CDシングルランキングで9位になり、発売一週間目で約9,300枚売り上げた[92]。『How-Low-Hello』のアルバム・「Smells Like Tea,Espresso」は週間・CDシングルランキングで12位になり、発売一週間目で約9,500枚売り切った[93]。『ZHIEND』のシングル・「Trigger」は週間・CDシングルランキングで11位になり、発売一週間目で約14,000枚売り上げた[94]。『ZHIEND』のアルバム・「Echo」は週間・CDアルバムランキングで4位になり、発売一週間目で約10,300枚売り上げた[95]。サウンドトラックの「Charlotte Original Soundtrack」は週間・CDアルバムランキングで9位になり、発売一週間目で約6,600枚売り上げた[96]。
10
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30
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80
(2015年8月1〜7日)
(8月8〜14日)
(8月17〜23日)
(8月24〜30日)
(8月31日〜9月6日)
(9月7〜13日)
(9月14〜20日)
(9月21〜27日)
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新作アニメタイトルツイート数ランキングの上位20位のデータを用いて算出、偏差値化[97][98][99][100]
[101][102][103]。統計には「Twitterのトレンド視覚化技術」が用いられている[104]。角川アスキー総合研究所調べ。 |
ツイート数でアニメの反響が分かる「Twitterのトレンド視覚化技術」によると、第5話終了後の8月第1週の偏差値は49.63で、2週目は6.45ポイント増しの56.08になった[97]。そして第3週では9.00ポイント増しの65.07となり、週間第2位となった[注 3]。これにはこの週に放送された第7話が影響しているという[98]。8月24日から30日の統計では1.24ポイント上昇の66.81になり、物語後半に向けての目まぐるしい展開が影響している[99]。第9話放送終了後の9月第1週の統計では、『Charlotte』が73.27ポイントで1位になった[103]。9月第2週目の推移は、物語の展開が少し落ち着きを取り戻したことも影響して8.20ポイント下落して偏差値が65.07になった[102]。そして、第3週の最終回終了直前では、さらに3.06ポイント下落して62.01になったものの第3位はキープした[注 4]。第13話が放送された第4週では、最終話の影響から9.94ポイント上昇し71.95になった[101]。
日本のアニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」が8月上旬に行った読者アンケートにおいて、『Charlotte』は7月から放送されている作品の中で視聴継続アニメ第1位となっており、これを第6話を境にストーリーが動き出しネット上での考察が盛り上がりを見せたことや、ゲームブランドの『Key』のファンが影響していると分析した[105]。同サイトが2015年末に行ったアンケートでも『Charlotte』は、2015年に放送されたアニメーション作品の中で素晴らしかったアニメ第1位になった[106]。
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