薩摩藩家臣 薩摩藩家臣の概要

薩摩藩家臣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/02 06:51 UTC 版)

概要

薩摩藩の家臣団の家格は正徳元年までに整備され、御一門(4家、私領主)、一所持(30家、私領主)、一所持格(13家)、寄合寄合並(寄合、寄合並をあわせ約60家。「三州御治世要覧」ではこの家格を「家老与」と呼んでいる。以上が上士層で家老を出すことができる。ただし、寄合並は一代限りの家格のため、変動が激しい)、無格(2家)、小番(約760家)、新番(約24家)、御小姓与(約3000家。ここまでが城下士)、与力(赦免士や座附士とも、准士分)の10の家格に分かれていた。なお、家格整備前は新番から郷士までを合わせて「大番」と呼んでいた。

地方の外城に在する外城士(江戸中期より郷士と称す)は家格こそ御小姓与と同格とされたが、島津重豪藩政改革以降徐々に城下士より下に見られるようになった。また、外城士内でも身分の上下(主に血統・家柄)があり、名門でなければ郷士年寄等のいわゆる麓三役(外城行政の上級役人)にはなれなかった。

下記直臣の家臣は私領士または家中と呼ばれ(通称として又家来)、陪臣身分として直臣である城下士・郷士よりも下にみられた[1]。ただし、戊辰戦争後の藩政改革で私領が廃された際にほとんどが郷士となっている。

能力や養子縁組、分家や零落など様々な事情で上記身分間の移動が存在していた。

明治維新に際して、薩摩藩には士族戸数43,119戸があった。諸藩の士族戸数と比較して際立って多いのは、薩摩・大隅・日向の広大な領地を治め、また、九州統一の過程で各地の武士が取り込まれ増えたためである。

有力分家

薩摩藩は77万石の大藩の割には支藩は佐土原藩1つのみであったが、小大名級の所領に封じられた分家や庶流を多数抱えていた。特に藩主直系の子孫を当主とする4家は「御一門」と呼ばれた。元文3年の一門家新設時は加治木家と垂水家がこの家格とされたが、同年に成立した重富家も加わり、重富家の前身、越前島津家が室町幕府の直勤だったため、一門家筆頭とされた[2]延享元年に今和泉家が成立すると、同家も一門家となった。なお、一門家は通称、「四家」ともいわれた。

「御一門」の呼称が成立するのは正徳年間だが、家格としては元文年間に成立し、70人賄料であった。藩主家が断絶したときには跡継ぎを出す江戸幕府御三家に似た役割を持ち別格の扱いを受けた。家老などの役職につくことはなかったが、藩主の命で政務に参与することがあり、この場合は家老よりも格上の扱いであった。ただし、家臣であることには変わりないので、島津久光も息子・忠義の後見人になるにあたり、いったん重富家との養子縁組を解消して本家に戻る、という形式を踏んだ。

御一門に次いだのが、大身分と呼ばれた4つの有力分家だった。正徳2年(1712年)11月、4代藩主島津吉貴の時代に島津家の家格整備により、島津左衛門家(日置島津家)、島津周防家(花岡島津家)、島津筑後家[3]都城島津家)が大身分に位置付けられ、後に島津図書家(宮之城島津家)が加えられた。大身分は藩主への挨拶をする儀式序列において御一門に次ぎ、国老(家老)よりも前とされた。これらの分家衆の中で突出して最も広大な領地を持っていたのが都城島津家(北郷氏本家)だった。大身分は天明6年(1786年)に、大身分が城下士の上士にあたる寄合並以上の総称とされた後、この四家は、他家よりも重んじられ独特の待遇を受けていました。これに一門四家を加えて八家とし、また八家のうちに種子島氏本家を加えることもあり、実質上、九家が特に重んじられていました。

近世前期には、本宗家に次ぐ「脇の惣領」をめぐり、垂水家と加治木家・日置家が上位を主張した事例や、日置家同様を主張する宮之城家の訴訟、年頭太刀進上の座席順をめぐる新納家と佐多家の悶着などが起きていた。


  1. ^ 藩制上明確に私領士が城下士・郷士の下に位置付けられていたわけではない。藩主を輩出した加治木島津家家臣が城下士に伍し郷士に勝る権勢があったなど、例外はある。また、都城島津家など大身の私領では家中の中でさらに家格があった。
  2. ^ 「列朝制度」参照。但し、島津吉貴より、薩摩藩の事実上の大老として藩政に参加することを命じられていた島津貴儔一代に限り、垂水家が筆頭であった
  3. ^ 当時の当主島津久龍が筑後を名乗っていたため。
  4. ^ 「近秘野艸」(『鹿児島県史料』「伊地知季安著作史料集六」所収)では島津久徴の子としている。
  5. ^ 一説には四代藩主吉貴の子とも
  6. ^ 日置島津家二男家・島津清太夫家の島津久冨の子か


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