巡礼 イスラム教の巡礼

巡礼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/08 14:28 UTC 版)

イスラム教の巡礼

ハッジの期間やそうでないウムラの時期にメッカマスジド・ハラームにやってきて、カアバ神殿タワーフ(=周囲を反時計まわりで7周まわること)を行う巡礼者たち。

メッカ(マッカ)にあるカアバ神殿へ歩いて向かうこと。アラビア語で「ハッジ」。イスラム教の五行のひとつ。行程に若干異なる点があるが、巡礼にはイスラム教各宗派の信徒が共に参加する。

ヒジュラ暦で12番目の月を「ハッジの月(巡礼月)」と呼び、この月にメッカのカアバへ巡礼することは、特に奨励されている。これを大巡礼と言う。対して、これ以外の月に巡礼することは小巡礼(ウムラ)と言う。例年、ハッジの月には数百万人の巡礼者がメッカに集まる。

巡礼は、体力的、経済的に可能な者に、一生に一度は行なうよう義務付けられている行為であるが、巡礼を果たしたムスリム(イスラム教徒)は、「ハーッジー」と呼ばれ、特に尊敬される。

現在ハッジの希望者数は受け入れ可能人数を超えており、ハッジに参加するにはメッカを管理するサウジアラビア政府の発給する特別ビザが必要。ビザ発給枠はムスリム人口を考慮し各国に割り当てられる。サウジアラビア政府は巡礼地での礼拝時の宗教的興奮において起こると危惧される政治的混乱を恐れている。

聖者の廟への参詣はズィヤーラ(アラビア語: زيارة‎)と呼ばれてハッジ(巡礼)とは厳格に区別されるが、ズィヤーラの方がむしろ日本でいう巡礼に近い[2]。ズィヤーラははじめシーア派によって体系化され、歴代のイマーム、とくにカルバラーフサイン廟への参詣が奨励された(アルバイーンも参照)。後にイスラーム世界全体に広がり、各地の聖廟を巡歴する形式や、集団参詣も行われるようになったが、近代になって急激に衰退した[2]


  1. ^ 明治以降、日本語の「巡禮(巡礼)」も各宗教の聖地を訪ねること全般を指している。そもそも「巡禮」という言葉自体にもともと、「神社や寺院でなければならない」などという意味はまったく込められていない。 なお日本語では類語に「巡拝(じゅんぱい)」もあるが、「巡礼」は宗教色が強く、「巡拝」はどちらかと言えば観光や娯楽の意味合いが強い[要出典]と言う人もいる。
  2. ^ 麦角病はライ麦につく麦角菌に起因する病気であるが、巡礼中の断食により、汚染したライ麦を食べなくなったため治ったとも言う。このように「奇跡」とされるものには、科学的に説明がつく例もある。
  3. ^ プロテスタントの立場としては、そもそも聖書に神ヤハウェやイエスの命令として「(カトリックやオルトドクスの聖地への)巡礼を行え」とは全然書いていないので、聖書に本当に書かれていること(だけ)を重視するプロテスタントの大半の教派としては、巡礼は(/も)人間が勝手に作りだした習慣だと判断され、(カトリックが熱心に巡礼を行っていた歴史を知っているが)それを行ってきたことも間違いなのだ、と判断しているわけである。カトリック教会(や正教会)の幹部の人間の都合で勝手に作りだした諸習慣(悪名高き免罪符や、その他の無数の、教会組織の幹部が(自分に都合よく)勝手に作りだした根拠の無い(奇妙な)習慣)による悪影響を取り除くために命がけで抗議し その間違いを命がけで正した、という起源を持つプロテスタントの立場としては、「巡礼」という習慣(聖書に照らすと、そもそもそれを行なわなければならない根拠が不明で、聖書的には かなり怪しい習慣)に対しても冷淡にならざるを得ないわけである。
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s スーパーニッポニカ「巡礼」星野英紀 執筆
  2. ^ a b 大稔哲也「イスラームの巡礼・参詣―エジプトの聖墓参詣を中心に―」『四国遍路と世界の巡礼』法藏館、2007年、169-183頁。ISBN 9784831856814http://henro.ll.ehime-u.ac.jp/wp-content/uploads/2006/02/d94f5d26c8df520dd0a5385a2cad2c27.pdf 
  3. ^ a b c Paul Gwynne (2009). World Religions in Practice: A Comparative Introduction. Blackwell. ISBN 9781405167024 
  4. ^ 渡辺研二『ジャイナ教 非暴力・非所有・非殺生―その教義と実生活』論創社、2005年、293-297頁。ISBN 4846003132 
  5. ^ a b NHK BS「チベット カイラス巡礼」2015年1月4日放送。
  6. ^ 精選版 日本国語大辞典『右繞・右遶』 - コトバンク
  7. ^ 大辞林 第三版『右繞』 - コトバンク
  8. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)『ボン教』 - コトバンク
  9. ^ Pilgrimage to Broken Mountain: A Nahua Ritual for Abundant Crops, Aztec Page at Mexicolore, https://www.mexicolore.co.uk/aztecs/home/modern-nahua-pilgrimage 
  10. ^ Witschey, Walter R. T. (2016). “Rites and Rituals”. In Walter R. T. Witschey. Encyclopedia of the Ancient Maya. Rowman & Littlefield. pp. 295-296. ISBN 0759122865 






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