頭索動物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/30 01:39 UTC 版)
利害
実用的な利用はほとんどない。中国の廈門では漁獲され、食用となっていた[10]。
それ以上に生物学上の研究対象として重要であり、何より脊椎動物の進化に関わって様々な研究が行われてきた歴史があり、それは1800年代までさかのぼる[11]。例えば内田他(1947)には『此類ハ脊椎動物ノ最低位置ニ近キモノナルヲ以テ、形態學者ノ研究材料トシテ古來最モ貴バル(ママ)』とある[10]。研究対象としてはヨーロッパではニシナメクジウオ B. lanceolatum を、アメリカでは B. floridae が使われ、日本ではヒガシナメクジウオ B. japonicum を用いて多くの研究が成されてきた[5]。
ただし、飼育繁殖が困難である。生かしておくだけなら餌無しで海水を交換するだけで最大で1年ほど飼育することは可能であるが、結局は野外から採集してきて一時的に維持するのが精一杯であり、その点がその利用の妨げとなる。発生の研究でも産卵期に野外から採集して行うわけで、研究環境は脆弱である。それでも飼育から累代繁殖の成功した種もあり、安定した飼育法の開発は進んでいる。この群にはそれに代えられるような動物がいないだけに実験素材としては重要であり、今後にモデル生物としてより利用されることが期待される[9]。
出典
参考文献
- 岩槻邦男・馬渡峻輔監修『無脊椎動物の多様性と系統』,(2000),裳華房
- 内田清之助他、『改訂増補 日本動物圖鑑』、(1947)、北隆館
- 岡田要他、『新日本動物図鑑 〔下〕』(1965)、図鑑の北隆館
- 西村三郎編著、『原色検索日本海岸動物図鑑〔II〕』、1992年、保育社
- 小林真吾・村上明男、「ナメクジウオの長期飼育及び生体展示に関する技術報告」、(2006)、愛媛県総合科学博物館研究報告 No.11, p.77-84.
- 窪川かおる、「脊椎動物への進化の生き証人―ナメクジウオ―」、(2006)、学術の動向 2006. 9.
- 安井金也、「日本産ナメクジウオの飼育コロニーの確立」、(2012)、岡山実験動物研究会報
- 西川輝明、「ヒガシナメクジウオの氏素性」、東邦大学理学部生物学科:2015/07/06閲覧
- 頭索動物のページへのリンク