金沢文庫 金沢文庫本

金沢文庫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 03:36 UTC 版)

金沢文庫本

「金沢文庫本」は金沢実時、貞顕らが収集した典籍で、「金沢文庫」という蔵書印のある書物は古くから有名であった。かつての蔵書はほとんどが散逸しており、一部が各所に所蔵されている。文化財指定されているものも多い。

文庫印が金沢氏の代に押された確証はなく、いつ、何の目的で押されたかも不明であるが、室町時代に文庫の流出を危惧した称名寺の僧らが押したのではないかとも言われている[15]。室町時代にも金沢氏の旧蔵書は称名寺の蔵書と一応区別して保管されていたと見られる。

徳川家康が持ち出した蔵書も多く、現在、国立公文書館内閣文庫、宮内庁書陵部、蓬左文庫などに所蔵されている。

以下、各所に残る「金沢文庫本」を概観する[16]。文庫印のあるもの、及び(文庫印がなくても)実時、貞顕らの奥書がある写本も含む。

漢籍

経書

儒教の経典…『尚書正義』『春秋経伝集解』(宮内庁書陵部)、『周易正義』(徳川ミュージアム彰考館文庫)、『礼記正義』(久遠寺)など。
上杉憲実寄進と奥書のある宋版本『周易注疏』『尚書正義』『礼記正義』などが足利学校に所蔵されており、文庫印などはないが、金沢文庫本の可能性がある。

史書

歴史書…『唐書』(東京国立博物館)、『南史』(金沢文庫)、『貞観政要』(宮内庁書陵部、五島美術館)など。

子部

兵学書…『施氏七書講義』(彰考館文庫ほか)、農業書…『斉民要術』(蓬左文庫)、医学書…『諸病源候論』『外台秘要方』(宮内庁書陵部)、『太平聖恵方』(蓬左文庫)など。

集部

詩文集…『文選集註』(金沢文庫)、『文選』(足利学校)、『白氏文集』(三井文庫、国立歴史民俗博物館、天理図書館)、類書…『太平御覧』(宮内庁書陵部)など。

国書

歴史

『続日本紀』(蓬左文庫)、『栄花物語目録』(尊経閣文庫)など。なお、紅葉山文庫旧蔵の『吾妻鏡』北条本(国立公文書館)は金沢文庫本系の古写本とされ、後北条氏から黒田氏を経て、徳川家に伝えられたもの。

法制

法令…『律(養老律)』『令義解』『令集解』(国立公文書館)、『類聚三代格』(東山御文庫)、『政事要略』(尊経閣文庫)、朝廷関係…『西宮記』(尊経閣文庫)、『侍中群要』(蓬左文庫)など。

文学

漢詩…『本朝続文粋』(国立公文書館)、物語…『源氏物語』(蓬左文庫)など。

その他

『古語拾遺』『音律通致章』(尊経閣文庫)、『日本書紀』神代巻(徳川ミュージアム)など、奥書から称名寺の僧が筆記したことが明らかであるが、一般に金沢文庫本に分類されているものもある。


  1. ^ 横浜金沢観光協会 県立金沢文庫 -
  2. ^ 北条高時と金沢貞顕・pp11-12。
  3. ^ a b 武家の古都・鎌倉ニュース 第30号(鎌倉市)
  4. ^ 『鎌倉大草紙』に見える話であるが、一次史料の裏付けはない。憲実は足利学校に宋版本を寄贈しているが、当時これらの書を輸入することは容易でなく、金沢文庫から持ち出したことが考えられる。
  5. ^ 神奈川県立金沢文書『金沢文庫古文書への誘い』2006年、p11。)
  6. ^ 『金沢文庫の歴史』1990年、p38。
  7. ^ 例えば『江戸名所図会』(角川文庫)第2巻p337。
  8. ^ 『金沢文庫の研究』pp188-189。
  9. ^ 『金沢文庫の歴史』1990年、p29。
  10. ^ 三山進『称名寺』(中央公論美術出版、1965年)。異論を唱える結城睦郎は、もともと称名寺が管理する文庫があって、後に金沢文庫に発展した(称名寺文庫と金沢文庫は別個のものではない)と推測する。
  11. ^ 『江戸名所図会』(角川文庫)第2巻p337。阿弥陀院は阿字池の西側にあった。金沢氏の邸宅跡と考えられている。昭和時代に金沢文庫が建っていた場所で、現在は芝地。
  12. ^ 『神奈川県立金沢文庫総合案内』(1991年)p6。
  13. ^ 金沢文庫は、かつて「かなざわ」ではなく「かねさわ」だったって本当?(はまれぽ.com 2013年10月1日)
  14. ^ 江戸時代中期以降、米倉氏が治める「〈武州〉金沢(かねざわ)藩」が存在していたが、版籍奉還の際に加賀藩の正式呼称が金沢藩と定まったことに伴い、「六浦藩」と改称された。
  15. ^ 『金沢文庫の歴史』(1990年)p38。同書によれば上杉憲実が持ち出したと推測される『毛詩正義』に金沢文庫印がある(pp106-107)。
  16. ^ おおむね『金沢文庫の歴史』(pp133-139)に従う。『国史大辞典』にも多くの写真入りで紹介されている。国指定文化財等データベース[1]で「金沢文庫本」を検索するとヒットするものもある。
  17. ^ 『神奈川県立金沢文庫総合案内』(1991年)p50。かつて夏島で憲法草案を起草した伊藤が称名寺の衰退を聞き、同情をよせたことがきっかけという。なお、書見所の玄関部分が県立金沢文庫西側の公園に復元されている。
  18. ^ 日本建築学会編『総覧日本の建築2 関東』p380。
  19. ^ 竹内誠監修『知識ゼロからの博物館入門』幻冬舎 2010年 p116。
  20. ^ 神奈川県立金沢文庫 文庫概要
  21. ^ 江戸時代から存在が知られており、『新編武蔵風土記稿』などに引用されている。
  22. ^ 『神奈川県立金沢文庫総合案内』(1991年)pp62-63。
  23. ^ 200点余りを所蔵。神奈川県立金沢文庫編集・発行 『金沢文庫の浮世絵』 2008年2月15日
  24. ^ 千葉 毅2020「神奈川県立金沢文庫保管の考古資料とその来歴―横浜市称名寺貝塚の縄文時代遺物を中心に―」『金沢文庫研究』344号、神奈川県立金沢文庫、pp.5-33






金沢文庫と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「金沢文庫」の関連用語

金沢文庫のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



金沢文庫のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの金沢文庫 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS