負の所得税 具体的なモデル

負の所得税

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/13 16:03 UTC 版)

具体的なモデル

ミルトン・フリードマンは、控除の未使用部分の一定割が納税者に還付されるというモデルを提案した。4人家族で控除額が$10,000、助成率50%(フリードマンが推奨した率)として、この家族の収入が$6,000であるとき、$2,000が支給される。未使用の控除が$4,000あるため、その半分の$2,000の資格があるということだ。フリードマンは、助成率が雇用獲得へのインセンティブを減ずるほど高くなることを恐れていた。彼はまた、福祉や援助の「ごった煮」に追加するものとして負の所得税を実施すれば、官僚主義や無駄の問題を悪化させるにすぎなくなってしまうことを警告している。そうではなく、すべての福祉を個人的に管理するような完全な自由放任社会に至る道の中で、負の所得税により他の全ての福祉・援助プログラムを直接置き換えるべきなのだと彼は主張した。負の所得税はどうにか合衆国議会で審議されるようになったが、フリードマンは、負の所得税に逆効果となる他の望ましくない要素と抱き合わせになっている、とこれに反対した。ミルトンは所得税そのものを無くすことを好んだが、当時それを廃止することが政治的に可能だとは思わないと発言しており、そのためより危険のない所得税の枠組みを提案したのだった。[6]

固定税率を伴う負の所得税

報告と監視の手間はかなり大幅に減ずることが可能だ。固定税率と控除の組み合わせにより、負の所得税と実質的な税率累進の維持が極度に低い管理コストで実施される: これは(たとえば月給の中から)「すべての納税者に支給される控除への税」を払うことにより達成される。控除(支給される負の所得税)に対する税は、控除に名目固定税率を乗ずることで計算される。収入への課税は「源泉から」、たとえば雇用者から、直接徴収される。収入への課税額は、収入に名目固定税率を乗ずることで計算される。

この単純な方法により、(源泉で徴収される税率は固定でありながら)控除を上回る収入があれば正になる実質累進課税となる。そして、もし収入が控除より少なければ、累進する実質税率は、税務機関など一切無くても自動的に負になる。累進が正になる部分については、実質税率が名目固定税率に近くなるのは、非常に大きな収入がある場合のみだ。

控除への課税は、収入が控除額のレベルに達すると払い戻されるタックスクレジット(税額控除)として理解することもできる。このレベルは、納税額とタックスクレジットの額が等しくなる点を示す。この点を超えれば、国家が納税者から税金を得る。この点に達さなければ、国家は納税者に税金を支払う。

負の所得税を「伴わない」固定税率の実施には、実際には負の課税を「避ける」ための「追加の」努力が必要となる。こうした税において、控除は収入を知らされた後に初めて支払うことが可能となる。負の所得税を「伴う」固定税率の実施は、実際の収入額とは独立に控除への税を支払うことを可能とする。


  1. ^ ミルトン・フリードマン 2008.
  2. ^ ミルトン・フリードマン 2008, p. 347.
  3. ^ ミルトン・フリードマン 2008, p. 348.
  4. ^ ミルトン・フリードマン 2008, p. 349.
  5. ^ Jodie T. Allen (2008年10月6日). “Negative Income Tax”. The Concise Encyclopedia of Economics. Library of Economics and Liberty. 2008年12月31日閲覧。
  6. ^ Friedman, Milton & Rose (1980). Free to Choose: A Personal Statement. Harcourt Trade Publishers. ISBN 9780156334600 
  7. ^ 池田信夫 (2009-10). 希望を捨てる勇気-停滞と成長の経済学. ダイヤモンド社. p. 180. ISBN 978-4-478-01192-8. OCLC 675481998. https://www.worldcat.org/oclc/675481998 


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