臓器の移植に関する法律 概要

臓器の移植に関する法律

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 08:01 UTC 版)

概要

第6条において、死亡した者が臓器移植の意思を生前に書面で表示していて、遺族が拒まない場合に限り、「脳死した者の身体」を「死体」に含むとしてその臓器を摘出できると規定する。

臓器提供意思を有効に表示可能な年齢については、法文には何ら規定されていない。臓器移植の意思を書面で表示するためには、脳死という概念を理解し、臓器提供の意思を明示する必要があり、意思能力が不可欠とされる。

未成年者の意思能力年齢については諸説あるが、厚生労働省が保健医療局長名(当時)で「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)として「臓器提供に係る意思表示の有効性について、年齢等により画一的に判断することは難しいと考えるが、民法上の遺言可能年齢等を参考として、法の運用に当たっては、15歳以上の者の意思表示を有効なものとして取り扱うこと」と通知したことから、実質的には15歳未満の臓器提供ができないとされていた。

しかし2009年の法改正により、2010年1月17日からは、臓器を提供する意思表示に併せて、親族に対し臓器を優先的に提供する意思を書面により表示できることになった。また2010年7月17日からは、本人の臓器提供の意思が不明な場合にも、家族の承諾があれば臓器提供が可能となった。これにより15歳未満の者からの脳死下での臓器提供も可能になった。

臓器移植法は臓器売買や無許可の臓器あっせんなどを禁止しているが、厚労省の立ち入り検査などの対象は国の許可を得た臓器あっせん団体だけであり、ほかの団体などには調査権限が及ばず、許可取り消しの処分なども行えない。海外での臓器移植を巡っては過去にも日本人患者が手術後に容体を悪化させるなどのケースが起きているが厚労省には調査権限がなく、警察が臓器移植法違反容疑を視野に捜査したこともあるが、移植の現場が海外で手術の内容や金銭授受の裏付けが難しく、立件は見送られてきたという課題も残されている[1]


  1. ^ 海外での臓器売買疑惑、調査に立ちはだかる壁…国に権限なし・NPОは対象外 : 読売新聞オンライン
  2. ^ “「脳死移植」認める、提供者の意思尊重、脳死臨調最終答申。”. 日経新聞 朝刊. (1992年1月23日) 
  3. ^ 「折衷に反対」各案で原則論台頭 臓器移植法改正案の修正協議 [リンク切れ] MSN産経ニュース・2009年4月21日
  4. ^ 一日も早く臓器移植法の早期改正を! 臓器移植患者団体連絡会
  5. ^ 脳死・臓器移植法の改正に反対します (PDF) 全国交通事故遺族の会
  6. ^ WHO:総会日程を短縮 渡航移植の指針採択先送りへ [リンク切れ] 毎日.jp・2009年5月8日
  7. ^ 臓器移植法改正法案で論点整理 [リンク切れ] 読売新聞・2009年4月29日
  8. ^ 臓器移植法の実質審議終了 [リンク切れ] 47NEWS・2009年6月5日
  9. ^ 審議経過に関する「中間報告」を聴取 [リンク切れ] 読売新聞・2009年6月9日
  10. ^ 【臓器移植】民主・輿石氏「急がなければ死んでしまうわけでもない」 [リンク切れ] (2009年6月18日 MSN産経ニュース)
  11. ^ 臓器移植法案、参院で中間報告 13日に採決 [リンク切れ] MSN産経ニュース・2009年7月10日
  12. ^ 脳死は「人の死」、改正臓器移植法が成立 [リンク切れ] Yomiuri Online・2009年7月13日


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