系譜学 遺伝的調査

系譜学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/05 22:25 UTC 版)

遺伝的調査

DNAは、祖先から子孫へ比較的変化せずに受け継がれ、家系を忠実に表す指標である。親子など近い血縁関係の有無を調べるのにはすでにDNA鑑定が広く使われているが、さらに古く遡る家系調査にも使われるようになってきた。特に2種類のDNA、Y染色体(父系)とミトコンドリアDNA(母系)が重視される。前者は男性だけが持ち、父親から息子へ受け継がれ、父系の調査に有効である。後者は全ての人間が持っており、母親からのみ受け継がれ、母系の調査に有効である。いずれも他の染色体との組み換えがなく、ごくわずかな突然変異が起こるだけで子孫に伝えられる。DNA鑑定により、2人の人がある時間経過の範囲内(数百年以内)で血縁関係にあるかないかを高い確度で知ることができる。個々の鑑定結果をまとめて比較的最近の共通祖先の子孫かどうかを(直接的に母系または父系から)わかるようにしたデータベースが多数作られている(Sorenson Molecular Genealogy Foundation[1]など)。

この方法で最近アメリカ社会に話題と波紋を巻き起こした例に、第3代大統領トマス・ジェファーソンの子孫の問題がある。ジェファーソン家の女奴隷サリー・ヘミングスの子供の一部の父親がジェファーソンではないかと彼の生前から取り沙汰されており、彼の弟ランドルフやその他の親族も怪しいといわれてきた。彼らの男系子孫とされる男性たち(ジェファーソンには正式の息子はいなかったので親族の子孫のデータからの推測になるが)を対象としてY染色体を用いた研究が20世紀末に複数行われた。確定的な結論は出ていないが、サリーの長男トマス(子孫はジェファーソンの子と信じている)はジェファーソンと直接関係なく、末子エストンはジェファーソンまたはランドルフの子あるいは孫の可能性があるといわれている。

もっと長い時間経過(千年から数万年程度)では、人類の移住パターンと民族の起源を研究するために遺伝学的な方法が用いられている。このようなプロジェクトは究極のプライバシーともいえる遺伝情報を対象とするものだから、参加は自由意志によって行われている。似た研究として、遺伝データを直接用いるのでなく数学的モデルを用いて現生人類の共通祖先の生存年代を見積もるものがある。


  1. ^ a b c d e f 太田亮『系図と系譜(岩波講座日本歴史)』岩波書店、1934年。 
  2. ^ 平凡社世界大百科事典 第2版『エッサイの木』 - コトバンク


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