租税条約 租税条約の目的

租税条約

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/24 15:00 UTC 版)

租税条約の目的

二重課税の排除

経済取引が発展し、人、物、金、サービスが国境を超えるようになると、居住地国と源泉地国との間で二重課税の問題が生じうる。これは、一方で国家は、国民の居住地(個人にあっては住所や居所など、法人にあっては本店所在地など)に着目して、たとえ世界のどこで稼得した利益であろうとこれを課税しようとする考え方(全世界所得課税)があり、他方で、国家は、自国の主権の及ぶ範囲において稼得された利益については、たとえ自国に居住地を有しない者によるものであっても、これに課税しようとする考え方があるからである。

居住地国も源泉地国も相互に主権国家である以上、お互いの国の課税の方針についてとやかくいうことは難しい。しかしながら、目先の税収確保に捉われてこの二重課税の問題を放置すれば結局のところ、国境を跨いだ経済取引の阻害要因となり、長期的には国家の損失につながる。

二重課税は、国内法により外国税額控除制度を設けたり、あるいは全世界所得課税を放棄し国内源泉所得のみに課税を行う立場(外国所得免税)をとれば、一定程度は排除できるが、その手続きが煩雑かつ手間暇がかかり、技術的にも完全な排除が困難である。したがって、租税条約により、相互の課税権を譲歩して、二重課税を排除するように課税権の配分を定め、相手国の居住者に対する課税の減免を行うこととなる。なお、船舶(後に、航空機も含む)運輸による所得については、相手国での同等の扱いを前提として、日本は、相互免除を定める法律を国内法令上定めてきた。

脱税の防止

また、国際的な取引に絡む租税回避や脱税の防止には相互の国の協力が不可欠であることから、租税条約には互恵的な情報交換規定が盛り込まれている。さらに、近年の租税条約においては、租税条約の各種の規定を濫用的に用いることによって、本来租税条約が認めた扱いを想定外の第三者にも認めることがあり得ることがわかってきたため、そのような条約の乱用による租税回避を防止するための規定を租税条約自体に定めている。なお、国内法令上の租税回避を否認する規定は租税条約には含まれていないと解される。


  1. ^ 我が国の租税条約ネットワーク”. 財務省. 2024年2月24日閲覧。
  2. ^ 日本と台湾中華民国)は国交がないため民間団体である日本台湾交流協会亜東関係協会との「民間租税取決め」だが、実質的には租税条約
  3. ^ [手続名]特典条項に関する付表(様式17)”. 国税庁. 2019年7月23日閲覧。
  4. ^ 日独租税協定の改正について(PwC税理士法人)






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