租税条約
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/24 15:00 UTC 版)
日本の締結した租税条約
日本は、現在86条約を締結しており、155カ国・地域との間に効力を有する。条約数と国の数が一致しないのは、対旧ソビエト連邦との間の条約が、連邦崩壊後の各諸国との間でもそのまま承継されることとなっていること、税務行政執行共助条約が多数国間条約であることによる。
日米租税条約
日本が初めて所得税条約を締結したのは、第二次世界大戦後、サンフランシスコ講和条約により独立を回復した後、1954年、アメリカ合衆国との間の所得税条約であった。2003年、最大の経済上のパートナーであったアメリカ合衆国との所得税に係る租税条約を全面改訂した。原条約や旧条約は、日本が未だ途上国から先進国への発展過程にあった時代に締結されたものであったため、源泉地国課税に配慮した内容であったが、日本が先進国の仲間入りをし、海外進出が盛んになるとその弊害が喧伝されることとなった。
新条約においては、OECDモデル条約をその基礎としているといわれているが、必ずしもその内容はモデル条約と同一ではなく、OECDモデル租税条約を基礎としていると理解するのは困難である。さらに、両国で扱いの異なる事業体の条約上の位置づけに関する規定や条約特典制限条項のように他の条約にあまり類を見ないような画期的な内容も盛り込まれている。
まず、相互に投資所得(利子、配当、使用料など)に対する減免を行った。とくに、ライセンスなどの使用料所得については旧条約では10%とされていた制限税率を相互に免税(すなわち源泉地国では免税)としたことは画期的であり、今後両国間での投資促進への寄与が期待されている。
また、新条約は他の租税条約例よりもより有利な恩典内容となっていることから、租税条約の恩典を実際には享受すべきでない者がこれを悪用する、いわゆる条約あさり(treaty shopping)が想定されるため、これに対処すべく恩典を享受できる者について詳細な規定(上述の条約特典制限条項)が盛り込まれている。
日本の租税条約ネットワーク[1]
- ・租税条約(二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止を主たる内容とする条約):73 本、80国・地域
- ・情報交換協定(租税に関する情報交換を主たる内容とする条約):11 本、11 か国・地域(*1で表示)
- ・税務行政執行共助条約:締約国は我が国を除いて124か国。適用拡張により 142か国・地域に適用。このうち我が国と二国間条約を締結していない国・地域は63か国・地域。
執行共助条約のみ
執行共助条約のみ
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執行共助条約のみ
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これらのうち、アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、オランダ、スイス、ニュージーランド、スウェーデン、ドイツ、ラトビア、リトアニア、エストニア、ロシア、オーストリア、アイスランド、デンマーク(2019年1月現在)は、租税条約に特典条項があり、支払いを受ける者が対象国の居住者であることを証明する書類を提出する必要があるなど租税条約の適用に一定の条件が付けられている[3]。また、2015年12月に締結されたドイツとの改正租税条約も特典条項が設けられている[4]。
- ^ “我が国の租税条約ネットワーク”. 財務省. 2024年2月24日閲覧。
- ^ 日本と台湾(中華民国)は国交がないため民間団体である日本台湾交流協会と亜東関係協会との「民間租税取決め」だが、実質的には租税条約
- ^ “[手続名]特典条項に関する付表(様式17)”. 国税庁. 2019年7月23日閲覧。
- ^ 日独租税協定の改正について(PwC税理士法人)
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