砂漠 生態系

砂漠

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/07 06:35 UTC 版)

生態系

サボテン。多肉植物は砂漠に適応した植物のひとつである
アメリカ西部から南西部にかけて生息するハラタケ科のキノコ Agaricus deserticola 。表皮が乾燥・ひび割れると、成熟した胞子が放出される

砂漠は植生がほとんど存在しないため、植物を食料とする動物の生息も少ないが、植物・動物ともにまったく存在しないわけではなく、乾燥地に適応した種が各地に生息しており、独自の生態系を形成している。砂漠に生育する植物は大きく分けて、アカシアなどのように根を深く張りめぐらせて地中深くの地下水やわずかな降雨から水分を得るタイプ、などの内部の柔組織に大量の水を蓄える、サボテンに代表されるいわゆる多肉植物、そして種子などの形で休眠し、降雨があると急速に成長し花を咲かせて大量の種子を残し、短い期間で枯れるタイプに分けられる。乾燥地の土壌は塩分を含んでいることが多いため、耐塩性も高い植物が多い。砂漠内の例外としてオアシスは水を得ることができるため、多様な植物・動物が生育できる場所である。砂漠に生えるキノコは、襞が傘の内部に取り込まれたセコティオイド菌類英語版が多く、胞子が成熟したあとで表皮が割れ、胞子が露出するのが特徴である。

また、砂漠の砂は風によって巻き上げられ、遠く遠洋や他大陸にまで到達する。たとえばサハラ砂漠において巻き上げられる砂塵の量は年間20億から30億トンにもなり、2月から4月にかけてはカリブ海や南アメリカ大陸に、6月から10月にかけてはフロリダ州などに降り注ぐ[10]が、こうした砂は各地に害をもたらす一方、各大陸や海洋生態系にとって重要な栄養素の供給源ともなる。また、サハラ砂漠の熱はシロッコとして南ヨーロッパに運ばれ、緯度のわりに温暖な気候をもたらしている。

関連項目
  • 休眠 ‐ 雨季が来るまで、一部の動物の卵や植物の種子は休眠状態となる。
  • スーパーブルーム英語版 ‐ 雨季に砂漠で休眠していた草花が開花する現象。
  • 海霧 ‐ 一部の砂漠は海からの朝霧によって水分が供給され、その水分を動植物はうまく活用する。
  • 乾性動物英語版

  1. ^ What is a desert?, USGS
  2. ^ a b 砂漠化の原因・現状
  3. ^ a b 「乾燥地の自然」(乾燥地科学シリーズ2)p29 古今書院 篠田雅人編 2009年3月31日初版第1刷
  4. ^ “(何でもランキング)知ってなるほど!気象の真実”. 『日本経済新聞』朝刊NIKKEIプラス1. (2017年7月22日). https://style.nikkei.com/article/DGXKZO19048230Q7A720C1W03001?channel=DF130120166114 
  5. ^ a b c 星野光雄、砂漠砂から読み取る過去の自然環境、文部科学省科学研究費補助金 「特定領域研究」 Newsletter No.4 (2006年12月号)
  6. ^ 「乾燥地の自然」(乾燥地科学シリーズ2)p49 古今書院 篠田雅人編 2009年3月31日初版第1刷
  7. ^ 「乾燥地の自然」(乾燥地科学シリーズ2)p35 古今書院 篠田雅人編 2009年3月31日初版第1刷
  8. ^ 「乾燥地の自然」(乾燥地科学シリーズ2)p63 古今書院 篠田雅人編 2009年3月31日初版第1刷
  9. ^ 「乾燥地の資源とその利用・保全」(乾燥地科学シリーズ4)p17 古今書院 篠田雅人・門村浩・山下博樹編 2010年6月30日初版第1刷
  10. ^ 「キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告」p158 石弘之(岩波新書、2009)
  11. ^ 「ビジュアルシリーズ世界再発見2 北アフリカ・アラビア半島」p26 ベルテルスマン社、ミッチェル・ビーズリー社編 同朋舎出版 1992年5月20日第1版第1刷
  12. ^ 「アラブ世界のラクダ乳文化」pp58-59 堀内勝/「乳利用の民族誌」所収 雪印乳業株式会社健康生活研究所編 石毛直道・和仁皓明編著 中央法規出版 1992年3月10日初版発行
  13. ^ 「サハラが結ぶ南北交流」(世界史リブレット60)p9 私市正年 山川出版社 2004年6月25日1版1刷
  14. ^ 「乾燥地の資源とその利用・保全」(乾燥地科学シリーズ4)p166-167 古今書院 篠田雅人・門村浩・山下博樹編 2010年6月30日初版第1刷
  15. ^ 「乾燥地の資源とその利用・保全」(乾燥地科学シリーズ4)p72-75 古今書院 篠田雅人・門村浩・山下博樹編 2010年6月30日初版第1刷
  16. ^ 「沙漠に緑を」pp146 遠山柾雄著 岩波新書 1993年6月21日第1刷
  17. ^ 「乾燥地の資源とその利用・保全」(乾燥地科学シリーズ4)p130 古今書院 篠田雅人・門村浩・山下博樹編 2010年6月30日初版第1刷
  18. ^ 「乾燥地の資源とその利用・保全」(乾燥地科学シリーズ4)p13 古今書院 篠田雅人・門村浩・山下博樹編 2010年6月30日初版第1刷
  19. ^ 「乾燥地の資源とその利用・保全」(乾燥地科学シリーズ4)p10 古今書院 篠田雅人・門村浩・山下博樹編 2010年6月30日初版第1刷
  20. ^ http://jp.reuters.com/article/chile-telescope-idJPKBN0TY0M220151215 「南米チリの天文学一大拠点、観測妨げる「光害」に危機感」ロイター  2015年12月15日 2016年8月24日閲覧
  21. ^ http://www.asahi.com/articles/ASH8L63V9H8LUHBI026.html 「砂漠の空、星の大海原 ナミビアに天文ファン続々」朝日新聞デジタル 2015年10月18日 2016年8月24日閲覧
  22. ^ http://www.cnn.co.jp/tech/35077675.html 「サハラ砂漠に世界最大級の太陽熱発電所 モロッコ」CNN 2016年2月21日 2016年8月24日閲覧
  23. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3076857 「モロッコ、初の太陽光発電所が操業開始」AFPBB 2016年02月16日 2016年8月24日閲覧
  24. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3061690 「インド、COP21を前に太陽光発電強化掲げる」AFPBB 2015年10月06日 2016年8月24日閲覧
  25. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3047731 「パキスタン、100メガワットの太陽光発電所が完成」AFPBB 2015年05月13日 2016年8月24日閲覧
  26. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3093196 「砂漠に高さ世界一のソーラータワー建設中 イスラエル」AFPBB 2016年07月15日 2016年8月24日閲覧
  27. ^ http://wired.jp/2016/05/25/heat-from-misaligned/ 「グーグルも投資した「世界最大の太陽熱発電所」で火災、トラブルが相次ぐ」2016年05月25日 WIRED 2016年8月24日閲覧
  28. ^ 地球環境問題 (PDF) - NTTコミュニケーションズ
  29. ^ サハラ砂漠、気候変動で緑化が進行か ナショナルジオグラフィックニュース、2009年9月、James Owen(インターネットアーカイブ)
  30. ^ 『大辞典 第十二巻』(平凡社 1935年) p.142
  31. ^ The World's Largest Deserts”. Geology.com. 2013年5月12日閲覧。
  32. ^ 海洋50のなぜ”. www.isee.nagoya-u.ac.jp. 2023年4月22日閲覧。





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