生分解性プラスチック 利点

生分解性プラスチック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/15 17:18 UTC 版)

利点

  • 有機肥料の質に影響を与えない。
  • 埋め立てたり投棄されても、微生物が食べて分解してくれるので、ゴミとしてたまることがない。
  • 天然資源由来の物は化石燃料を使用せず、化石燃料枯渇の未来において唯一のプラスチック製品である。
  • 生分解性プラスチックを組み込んだ製品が環境に優しいとアピールできる。
  • 海洋プラスチックごみの対策。(海洋生分解性プラスチックの開発を参照

欠点

  • 通常のプラスチックより高価である。
  • プラスチックの利点であった耐久性、機能性に劣る。
  • 使い捨てを前提にしたものであるため、リサイクルリユースに向かない。
  • 我々の生活する環境に耐えられず、使用中あるいは保管中に分解が進み、使用不能となる可能性がある。
  • 微生物によって分解されるので、埋め立て処理などをする場合は、その時の微生物の状態、気候などにより、求められる状況が異なる。そのため、管理された状況下でないかぎり、分解にどれくらいかかるのかは分からない。

部分生分解性プラスチックの環境への影響

部分生分解性プラスチックの場合、生分解性部分が分解した後、非生分解性部分は残渣として、プラスチック粉末(マイクロプラスチック)を生じる。それが、水系に流入した場合、海面や海中を半永久的に浮遊する。小型濾過摂食動物や動物性プランクトンがそれを誤食し(海鳥などがプラスチック片を誤食するように)、フィルターや消化管を詰まらせるなどの被害を受ける可能性が指摘されている。つまり、部分生分解性プラスチックは、マイクロプラスチックの問題を助長しかねない。

もちろん、通常の非生分解性プラスチックも最終的には機械的破壊や紫外線により風化し同様の粉末となるため、長い時間スケールで見れば通常のプラスチックにもこの問題はある(完全分解性プラスチックにはない)。

海洋生分解性プラスチックの開発

経済産業省は2019年、海洋生分解性プラスチックの開発や導入普及を促進するためのロードマップを策定した[11]。現在、世界では、適切に処理されることなく捨てられたプラスチックごみが海にたまり、海洋生物の生態を脅かしていることが問題になっている。2010年には1270万~4800万トンものプラスチックが海洋に流出したと推定されている。そのため、海で分解されるプラスチックの開発が進められている。生分解性プラスチックというのは、自然界に存在する微生物の働きによって二酸化炭素と水に分解される物である。この生分解性プラスチックの中にはいくつか種類があり、その種類によって分解されやすい環境と分解されにくい環境がある。水環境で分解されるプラスチックはPHBHなど、ごく一部である。その理由は、陸上と比べると海中には微生物が少ないからである。ペットボトルやレジ袋、コンビニ弁当など、海洋に流れ出る可能性が高いプラスチックを生分解性プラスチックで作ることで、仮にプラスチックごみが海に流れ出てしまっても数ヶ月で分解されるので、海のごみを減らすことにつながり、海洋生物の生態を守ることができるとされる[12][13]

  • 新たな海洋生分解性を持つ樹脂の開発や需要開拓
  • 新たな微生物の発見
  • 海洋生分解性のコントロール機能

など革新的な素材の研究開発を後押しする方針を打ち出している[11]

一方で、生分解性の表示によりごみの投棄が増えることも危惧されている[4]


  1. ^ a b 羽生直人「生分解性高分子材料の開発動向」『木材保存』第26巻第2号、日本木材保存協会、2000年、57-68頁、doi:10.5990/jwpa.26.57ISSN 0287-9255NAID 130001574139 
  2. ^ 生分解性プラスチックの現状と課題”. 日本バイオプラスチック協会(JBPA)百地 正憲. 2021年9月19日閲覧。
  3. ^ a b 【直談専門家に問う】産業技術総合研究所審議役 国岡正雄氏/生分解性プラ 海での国際規格/欧州主導 日本出遅れ日経産業新聞』2019年1月28日(先端技術面)2019年3月9日閲覧。
  4. ^ a b プラスチックによる海洋汚染対策としての生分解性プラスチック”. 日本生化学会 (2019年4月24日). 2020年7月13日閲覧。
  5. ^ 「生分解性プラ 海中でも分解/群馬大 少ない酸素で機能/東大 微生物の合成利用」『日本経済新聞』朝刊2018年8月28日(科学技術面)2019年4月14日閲覧。
  6. ^ 久しぶりに印鑑登録証を出したら粉々… 過去に生分解性プラスチックを使用、複数の自治体が交換呼びかけ 2019年5月14日18時50分 BIGLOBEニュース編集部
  7. ^ 環境省における海洋プラスチック問題への取り組み事業”. 閲覧日2021年12月5日閲覧。
  8. ^ 大島一史「生分解性プラスチックの現状と課題」『日本緑化工学会誌』第28巻第4号、日本緑化工学会、2003年5月、490-496頁、doi:10.7211/jjsrt.28.490ISSN 09167439NAID 110002912153 
  9. ^ https://t21.nikkei.co.jp/g3/ATCD017.do?keyPdf=20060907NSSX90T6008D92%5CNSS%5C13%5C13%5C01%5C%5C699%5CY%5C%5C2006%2F0907%2F20060907NSSX90T6008D92.pdf%5CPDF%5C20060907%5Cc8a10c3c&analysisIdentifer=fromSearchA&analysisPrevActionId=CMNUF10”.+阪大、生分解性プラスチック、加熱で戻る形状記憶━━大豆油原料、簡単に製造『日本経済新聞』2006年 09月 07日. (閲覧日2021年12月5日) [リンク切れ]
  10. ^ 岩田忠久, 柘植丈治, 石井大輔「未利用バイオマスからの新規バイオベースプラスチック開発の取り組み」『オレオサイエンス』第14巻第3号、日本油化学会、2014年、123-129頁、doi:10.5650/oleoscience.14.123ISSN 1345-8949NAID 1300053082202022年1月25日閲覧 
  11. ^ a b 広がる代替素材開発「海洋生分解性」に挑む”. METI Journal(経済産業省) (2020年5月15日). 2020年7月13日閲覧。
  12. ^ “大阪大、海で分解されるプラスチック開発 植物材料使い”. 日本経済新聞. (2020年3月5日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56453820V00C20A3TJM000/ 2022年1月25日閲覧。 
  13. ^ 生分解性プラスチックの課題と将来展望”. 三菱総合研究所 (2019年4月9日). 2021年6月24日閲覧。


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