無断リンク 無断リンクの概要

無断リンク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/05 13:45 UTC 版)

リンクフリーという和製英語が無断リンクの許可を意味する言葉として用いられる[2][3]

法的問題点の有無

WEB空間の性質

Webの設計者ティム・バーナーズ=リーの発言[4]があるように、元々Webには無断リンクという考え方はない。

"There is no reason to have to ask before making a link to another site"(和訳:他のサイトへのリンクを貼る際にお伺いをたてる必要はない。)

東北大学のページにティム・バーナーズ=リーの発言が一部翻訳されている[5]

Webに公開している時点ですでに誰でもそのサイトやファイルにアクセスできるインターネットの特性上、特に断りを入れずリンクすることに法的問題はない。何らかの理由で被リンク側がそれを嫌う場合は、前述のように技術的な方法など用いてそれをできなくさせるか、リンクされても著作権をある程度証拠として示せるように署名を入れるなどの対応をする必要がある。無断リンク拒否の意思をサイトに明記しておくことも対応の一つであるかもしれないが、それには拘束力・強制力のたぐいはほぼ無い。詳しくは著作権情報センターのリンクに対する文面を参照。

ホームページに情報を載せるということは、その情報がネットワークによって世界中に伝達されることを意味しており、そのことはホームページの作成者自身覚悟しているとみるべきだからです。リンクを張られて困るような情報ははじめからホームページには載せるべきではなく、また載せる場合であっても、ある特定の人に対してのみ知らせようと考えているときは、ロック装置を施してパスワードを入力しなければ見られないようにしておけばよいだけのことではないでしょうか。 — http://www.cric.or.jp/qa/multimedia/index.html

リンキングと法的な扱い

リンキングの扱いはヨーロッパや日本など地域により違いがあり、議論の構造も全く異なると指摘されている[1]

日本法

リンクを張る行為は、閲覧を希望するものが、発表済みの情報にたどり着けるように、情報のウェブ上の位置を示すことであり、World Wide Webの性質からこれを制限したり禁じたりするような法律は無い[6][リンク切れ]

法的には「リンクお断り」等の表示の有無を問わず、原則としてリンク先の承諾は不要で通常は著作権侵害には当たらないとする見解が一般的である[7]。ただし、後述のフレーム内リンクのように著作権侵害が問題となるケースもある[8]

著作権との関係

著作権との関係については次のように考えられている。

複製権(複製禁止権)との関係
リンク元はリンク先のコンテンツをコピーして自らのコンテンツ内に掲載しているわけではなく、コピーしたものを閲覧者に送信しているわけではないので通常は複製権(複製禁止権)を侵害しない[7]。また、URLやドメイン名には創作性がないとされているので複製権(複製禁止権)の侵害とはならない[7]
公衆送信権(公衆送信禁止権)との関係
閲覧者はリンク元のリンクをクリックすることでリンク先へと飛び情報を受信できるが、その情報を閲覧できるのはリンク先が閲覧者に対して表示を許可している結果であり公衆送信権(公衆送信禁止権)を侵害しない[9]。仮にリンク先が特定の閲覧者に限定して公開したいのであれば、IDとパスワードを要求すべきで、そのような措置を講じないままリンクを違法視することはできないとされる[9]
ただし、2018年(平成30年)1月30日の東京地方裁判所判決では無許諾でアップロードされているソフトウエアのURLを教示する行為について公衆送信権侵害を認定しており、リンキングについても公衆送信権の侵害となる可能性があると指摘されている[1]

なお、フレーム内リンクのようにリンク先の情報がリンク元の著作物の一部であるかのような誤解を招くものであるときは翻案権(翻案禁止権)、同一性保持権、氏名表示権を侵害するおそれがある[8]

その他の権利等との関係

2006年2月、経済産業省は「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改定し、「他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点」を追加。[10]リンクは原則的に自由だが、不正に利益を得たりリンク先に損害を与えるといった目的がある場合、またはそのように解される方法でリンクしている場合には、不正競争防止法・商標法・著作権法などにより法的な問題が発生する可能性があるとして注意喚起している。[11]この例として消費者金融事業者が経緯なく地方金融機関のリンクを表示する行為、風俗事業者のサイトが現実の女学校HPのリンク集を表示する行為などが挙げられている。

EU法

公衆への伝達権との関係

情報社会指令 (Directive 2001/29/EC of the European Parliament and of the Council of. 22 May 2001 on the harmonisation of certain aspects of copyright and related rights in the information society)3条1項に定められた「公衆への伝達権」の範囲をめぐって判断が行われる[1]。「公衆への伝達権」は「有線又は無線の方法による著作物の公衆への伝達 (公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において著作物へのアクセスが可能となるような状態に当該著作物を置くことを含む。)を許諾し又は禁止する権利」と規定されている[1]

判例

2014年、無断リンクが公衆への伝達権の侵害になるかが争われた事件について欧州司法裁判所の判決が出された(Svensson判決)[1]


注釈

  1. ^ 論文がだれでも利用可能なものとして提供され(公開性・公共性)、第三者がそれを参照することによって引用元の固有名のオリジナリティが強化されるという形になっており、自分の論文が参照されることを嫌う研究者がいるということはあまり考えられない。
  2. ^ この設計により、リンク先のWebサイトの管理者は、HTTPリファラを使ってもどこからリンクされたのか正確にはわからなくなる(2ちゃんねる内のどこかからリンクされたということまではわかる)。

出典

  1. ^ a b c d e f 谷川和幸「欧州司法裁判所の「新しい公衆」論について(1)」『知的財産法政策学研究』第53巻、北海道大学情報法政策学研究センター、2019年3月、109-135頁、ISSN 1880-2982NAID 1200066009772021年8月25日閲覧 
  2. ^ デジタル大辞泉『リンクフリー』 - コトバンク
  3. ^ リンクフリーとは IT用語辞典 e-Words
  4. ^ ティム・バーナーズ=リーの発言
  5. ^ 東北大学のページにあるティム・バーナーズ=リーの発言翻訳
  6. ^ リンクに許可は不要です
    Q 無断で(管理者に連絡や許可申請をせずに)リンクを張ることは著作権侵害となるでしょうか。
  7. ^ a b c 青弓社編集部『情報は誰のものか?』、2004、95頁。
  8. ^ a b 青弓社編集部『情報は誰のものか?』、2004、96-97頁。
  9. ^ a b 青弓社編集部『情報は誰のものか?』、2004、96頁。
  10. ^ 「電子商取引等に関する準則」の改訂・公表について
  11. ^ 電子商取引及び情報財取引等に関する準則 経済産業省、2011.6.27、[1]PDF P.7-14、
  12. ^ リンクの取り扱い - 財団法人インターネット協会
  13. ^ 高木浩光「蔓延るダメアーキテクチャ」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』 河出書房新社、2010年、278-279頁。ISBN 978-4309244426
  14. ^ 松谷創一郎「ネットでの儀礼的無関心の可能性」TRiCK FiSH blog.(2003年11月30日)
  15. ^ 北田暁大 『“意味”への抗い―メディエーションの文化政治学』 せりか書房、2004年、184-185頁。ISBN 978-4796702560
  16. ^ 「蔓延るダメアーキテクチャ」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』281頁。
  17. ^ 「蔓延るダメアーキテクチャ」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』281-282頁。
  18. ^ 中西渉「事例32 リンクを張られたくなくても拒否できない」『子どもたちのインターネット事件―親子で学ぶ情報モラル』東京書籍、2006年、126頁。ISBN 978-4487801213
  19. ^ 『“意味”への抗い―メディエーションの文化政治学』187頁・197-199頁。
  20. ^ 『“意味”への抗い―メディエーションの文化政治学』199-201頁。
  21. ^ 濱野智史 『アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか』 エヌ・ティ・ティ出版、2008年、130-132頁。ISBN 978-4757102453
  22. ^ 『アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか』132-133頁。
  23. ^ サイトのご利用にあたって”. 東京電力ホールディングス. 2018年3月7日閲覧。
  24. ^ いなべ市ホームページリンク設定事務等取扱要綱
  25. ^ リンク設定について - 2003年10月8日時点のインターネットアーカイブ
  26. ^ リンク設定について - 2004年2月4日時点のインターネットアーカイブ
  27. ^ アクセシビリティ・リンク・お問合せ先について”. 衆議院. 2015年6月閲覧。
  28. ^ 文化庁
  29. ^ 特許庁
  30. ^ このサイトについて”. 慶應義塾大学. 2010年3月6日閲覧。
  31. ^ 著作権法学会
  32. ^ リンク・著作権について”. 日本赤十字社. 2020年10月5日閲覧。
  33. ^ Don't Give Me That "Permission to Link" Crap!
  34. ^ ニュース検索エンジンのNewsboosterにリンク禁止の仮命令
  35. ^ リンク問題ニュース


「無断リンク」の続きの解説一覧




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