減価償却
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日本における減価償却
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日本における減価償却の計算方法
各期に計上される費用を減価償却費(英: Depreciation Expense)という。全体の支出額(取得原価)を各年度の費用として配分することにより、各年度における損益とキャッシュ・フローとの差異が生じることになる。
取得した資産の実際の使用可能な寿命をあらかじめ知ることは困難で、たとえば建物のように使用の限界時期が明確でない物もある。本来ならば、減価償却における耐用年数(英: the Estimated useful life)は、なんらかの科学的統計的な手法により見積られるべきであるが、実務上は、法人税法において資産の種類ごとに定められた耐用年数を用いられており、これを法定耐用年数という。
減価償却の会計処理にあたっては、各期の減価償却費に相当する額だけ、固定資産を減額する必要がある。そのため、貸借対照表の「固定資産の部」において、各資産は取得原価から減価償却累計額(英: Accumulated Depreciation)を控除する形で表示される。
減価償却は、あらかじめ定められた償却法と耐用年数により、各資産毎の年間の償却額を算出する。ただし、その会計期間の期中に取得(または使用を中断)した資産の場合は、年間償却額を月割計算した額となる。
なお、法人税法の規定によれば、耐用年数を超えて使用する場合でも償却可能限度額(日本の場合、有形固定資産では取得額の95%)を超えて償却することはできない。会計基準においては、この点について特別な規定はない。
平成19年度税制改正により、平成19年4月1日以降の新規取得に関しては備忘価額の1円まで償却が可能となった。また、平成19年3月31日以前取得の資産に関しても、平成19年4月1日以降に開始する事業年度から1円まで償却が可能となった。なお無形固定資産については、償却方法は定額法限定で、残存価額がゼロとなるまで償却する。
日本における税法上の減価償却
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日本では、平成19年税制改正において制度改正がされたため、取得日が平成19年3月31日以前、平成19年4月1日以後とで方法が異なる。そのため税法上では6種類の償却方法が存在する。
- 平成19年3月31日以前に取得をした減価償却資産についての償却方法
- 旧定額法
- 旧定率法
- 旧生産高比例法
- 平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産についての償却方法
- 定額法
- 定率法(250%定率法)
- 生産高比例法
なお、法人税法における建物の償却法については、平成10年4月より、新築・増築については旧定率法並びに定率法を用いることは認められなくなっている。
減価償却の方法
旧定額法(平成19年3月31日以前)
1. 次の計算式で求められる金額を償却限度額とする。
償却限度額=(取得価額 − 残存価額)×旧定額法の償却率
ここで、残存価額については
残存価額=取得価額×減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)別表第十一に規定されている残存割合[5]
上記計算式で求められる金額を用い、旧定額法の償却率は耐用年数省令別表第七で規定された値を用いる[6]。
2. 償却累積額が、取得価額の95%相当額に到達する事業年度の償却限度額は、取得価額の95%相当額を越えた部分を控除した額とする。
3. 2.の事業年度の翌年度以後は、次の計算式で求められる金額を償却限度額として、残存簿価1円まで償却することができる。
償却限度額=(取得価額 − 取得価額の95%相当額 − 1円)×各事業年度の月数/60
旧定率法(平成19年3月31日以前)
1. 次の計算式で求められる金額を償却限度額とする。
償却限度額=期首帳簿価額×旧定率法の償却率
ここで、旧定率法の償却率は耐用年数省令別表第七で規定された値を用いる[6]。
2. 償却累積額が、取得価額の95%相当額に到達する事業年度の償却限度額は、取得価額の95%相当額を越えた部分を控除した額とする。
3. 2.の事業年度の翌年度以後は、次の計算式で求められる金額を償却限度額として、残存簿価1円まで償却することができる。
償却限度額=(取得価額 − 取得価額の95%相当額 − 1円)×各事業年度の月数/60
旧生産高比例法(平成19年3月31日以前)
1. 次の計算式で求められる金額を償却限度額とする。
償却限度額={(鉱業用減価償却資産の取得価額 − 残存価額)/その資産の耐用年数(注)の期間内におけるその資産の属する鉱区の採掘予定数量}×その事業年度におけるその鉱区の採掘数量 (注)その資産の属する鉱区の採掘予定年数がその資産の耐用年数より短い場合には、その採掘予定年数。
ここで、残存価額については
残存価額=取得価額×耐用年数省令別表第十一に規定されている残存割合[5]
上記計算式で求められる金額を用いる。
2. 償却累積額が、取得価額の95%相当額に到達する事業年度の償却限度額は、取得価額の95%相当額を越えた部分を控除した額とする。
3. 2.の事業年度の翌年度以後は、次の計算式で求められる金額を償却限度額として、残存簿価1円まで償却することができる。
償却限度額=(取得価額 − 取得価額の95%相当額 − 1円)×各事業年度の月数/60
定額法(平成19年4月1日以後)
次の計算式で求められる金額を償却限度額とし、残存価額が1円になるまで償却を行なう。
償却限度額=取得価額×定額法の償却率
ここで、定額法の償却率は耐用年数省令別表第十で規定された値を用いる[7]。
定率法(平成19年4月1日以後)
1. まず、次の2つの式で調整前償却額と償却保証額の金額を求める。
調整前償却額=期首帳簿価額×定率法の償却率 償却保証額=取得価額×耐用年数に応じた保証率
ここで、定率法の償却率、耐用年数に応じた保証率はそれぞれ耐用年数省令別表第十で規定された値を用いる[7]。
2. 調整前償却額と償却保証額の金額を比較し、当期の償却限度額を求める。
- (1) 調整前償却額≧償却保証額の場合
償却限度額=調整前償却額
- (2) 調整前償却額<償却保証額の場合
償却限度額=改定取得価額×改定償却率
ここで改定取得価額には期首簿価を用い、改定償却率には耐用年数省令別表第十で規定された値を用いる[7]。また、残存簿価1円まで償却できる。
生産高比例法(平成19年4月1日以後)
次の計算式で求められる金額を償却限度額とする。
償却限度額=(鉱業用減価償却資産の取得価額/その資産の耐用年数(注)の期間内におけるその資産の属する鉱区の採掘予定数量)×その事業年度におけるその鉱区の採掘数量 (注)その資産の属する鉱区の採掘予定年数がその資産の耐用年数より短い場合には、その採掘予定年数。
注釈
- ^ 2009年時点において、実際には市場価値が減少しているが、税法上の減価償却資産とされていない。
出典
- ^ a b c 村田直樹「減価償却の会計史」『経済集志』第87巻、日本大学経済学部、49-62頁。
- ^ a b 小林正人. “減価償却とは:定額法と定率法”. 駒澤大学. 2022年10月23日閲覧。
- ^ 阿部徳幸・松嶋康尚共著 『減価償却の実務がスラスラわかる本』 中経出版 2008年4月初版発行 ISBN 9784806129325
- ^ a b c d e f 畠中 瞳「減価償却の計算要素」『商経論叢』第35巻第4号、九州産業大学商学会、49-62頁。
- ^ a b “減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第十一”. e-Gov. 2020年1月25日閲覧。
- ^ a b “減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第七”. e-Gov. 2020年1月25日閲覧。
- ^ a b c “減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第十”. e-Gov. 2020年1月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g 小森瞭一「戦後フィシカル・ポリシーとしての加速償却政策」『經濟學論叢』第58巻第1号、同志社大学経済学会、71-72頁。
- 1 減価償却とは
- 2 減価償却の概要
- 3 日本における減価償却
- 4 米国における加速原価回収制度
- 5 脚注
減価償却と同じ種類の言葉
- 減価償却のページへのリンク