水素 イオン

水素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 23:59 UTC 版)

イオン

金属水素

水素は、ガス惑星の内部など非常に高い圧力下では性質が変わり、液状の金属になると考えられているが、1996年ローレンス・リバモア国立研究所のグループが、140GPa(1GPa=約1万気圧)、数千℃という状態で、100万分の1秒以下という短寿命ではあるが、液体の金属水素を観測したと報告している[18][19]木星型惑星木星土星)の深部は非常に高い圧力になっており、液体金属水素が観測された条件と似ている。木星型惑星を構成するもっとも主要な元素のひとつである水素は、この状況下では金属化している可能性があり、惑星の磁場との関わりも指摘されている[20]。しかしながら、2017年現在、数百GPaのオーダーで圧力を加える実験が行われているものの、固体の金属水素が得られたという十分な証拠が示されたことはない[21][22][注 2]

金属化そのものが達成されていないためにその真偽はいまだ不明であるが、Ashcroft (1968, p. 1748) は、金属化した水素は室温超伝導を達成するのではないかと予想している。この可能性の傍証として、周期表で水素のすぐ下のリチウムは、30GPa以上という超高圧下で超伝導状態となることが示されている。リチウムの超伝導への転移温度は圧力48GPaで20K程度であるが、この数字は単体元素のものとしては高い部類に入り、いくつかの例外を除けば一般に軽い元素ほど転移温度は高くなるため、もっとも軽い元素である水素は、より高い転移温度を持つ可能性が十分ある。

また、励起状態の水素が金属化するときわめて強力な爆薬になるとの理論計算が行われ、電子励起爆薬として研究されている。この理論では圧力だけでは不十分であり、水素を励起状態にして圧力をかければ金属化するとしている。

物理的性質

水素用のボンベ(火災時に近づくと危険)
水素の入った風船が爆発した瞬間

元素およびガス状分子の中でもっとも軽く[2]、また宇宙でもっともが多く[1]珪素量を106とした際の比率は2.79×1010である。[24]地球上では有機化合物の構成要素として存在する。

水素分子は常温常圧では無色無臭の気体で、非常に軽く、非常に燃焼・爆発しやすいといった特徴を持つ。そのため日本では、高圧ガス保安法容器保安規則により、赤色ボンベに保管するように決められている[2]。従来、水素ガスの爆発濃度は4% - 75%であるとされてきたが[25]、慶應義塾大学環境情報学部の武藤佳恭は、10%以下であれば爆発しないことを明らかとした[26]


注釈

  1. ^ 次いでヘリウムが約25パーセント[8][9]
  2. ^ Dias & Silvera (2017) は495GPaの圧力において固体と推定される金属水素が得られたと発表したが、この実験結果については多くの科学者が疑問視している[22][23]
  3. ^ ハロゲンに近い性質を持つため、1周期系列と17族の位置に変更すべきというもの。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 桜井 1997.
  2. ^ a b c d e f g h i j 化学工業日報 1996, pp. 233-234, 水素.
  3. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds (PDF) (2004年3月24日時点のアーカイブ), in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  4. ^ Palmer, D. (1997年9月13日). “What is the known percentage of hydrogen in the Universe and where is it?”. NASA. 2010年5月8日閲覧。
  5. ^ Anders & Grevesse 1989, p. 197.
  6. ^ クリエイティブ・スイート 2009, p. 22.
  7. ^ 西尾正則. “宇宙科学入門第7回資料 (PDF)”. 鹿児島大学理学部. 2010年5月9日閲覧。
  8. ^ a b 井田 2014, p. 9.
  9. ^ a b Asplund et al. 2009, pp. 24 & 46.
  10. ^ The Element Hydrogen”. JLab. It’s Elemental. 2021年4月17日閲覧。
  11. ^ Williams, David R. (2020年11月25日). “Earth Fact Sheet”. NASA. 2021年4月17日閲覧。
  12. ^ a b 日経サイエンス編集部 2009.
  13. ^ a b 化学工業日報 1996, pp. 234-235, 重水素.
  14. ^ a b c d e f g h i Lee 1982, pp. 119-123, 3. 元素の一般的性質: 水素.
  15. ^ Audia et al. 2003, p. 27.
  16. ^ a b c d e f g h 東北大学金属材料研究所 2009.
  17. ^ 〈研究例紹介〉液化水素用水素分子核スピン転換触媒の開発”. 北海道大学大学院工学研究院附属エネルギーマテリアル融合領域研究センター マルチスケール機能集積研究室. 2020年6月10日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2020年6月10日閲覧。
  18. ^ Weir, Mitchell & Nellis 1996.
  19. ^ W. J. ネリス (2000年8月). “水素の金属を作る”. 日経サイエンス. 2021年4月17日閲覧。
  20. ^ ビル・アーネット (1995年8月29日). “木星”. 金光研究室. ザ・ナイン・プラネッツ. 2010年5月9日閲覧。
  21. ^ 長柄 2003.
  22. ^ a b Maccarone, Mattia; Takeshi Othoshi(訳) (2017年2月14日). “生み出された「金属水素」、さて何の役に立つのか?”. WIRED.jp. コンデナスト・ジャパン. 2021年5月12日閲覧。
  23. ^ Castelvecchi 2017.
  24. ^ 玉尾, 桜井 & 福山 2010, 付録. 112元素の周期表.
  25. ^ 井上 2016.
  26. ^ a b Kurokawa et al. 2019.
  27. ^ IUPAC Nomenclature of Organic Chemistry /Recommendations 1979 and Recommendations 1993 by ACD Lab. Inc.)
  28. ^ a b c d Lee 1982, pp. 123-126, 3. 元素の一般的性質: 水素化物.
  29. ^ Hydride - PubChem Public Chemical Database”. The PubChem Project. USA: National Center for Biotechnology Information. 2016年5月19日閲覧。
  30. ^ METAL HYDRIDES, WATER-REACTIVE, N.O.S. (version 2.6 ed.), Alternate Chemical Names: Cameo Chemicals, https://cameochemicals.noaa.gov/chemical/3592 2016年5月19日閲覧。 
  31. ^ “Hydrogen anion”, NIST Standard Reference Database 69: NIST Chemistry WebBook (The National Institute of Standards and Technology (NIST)), http://webbook.nist.gov/cgi/inchi/InChI%3D1S/H/q-1 2016年5月19日閲覧。 
  32. ^ ヒドリドイオン”. LSDB. 学術用語の日本語と英語の対応. ライフサイエンス統合データベースセンター. 2019年6月13日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。
  33. ^ 九州大学科学技術振興機構日本原子力研究開発機構 (2007年4月27日). “用語解説”. 水素活性化酵素のモデル化に成功. 注2: ヒドリドイオン: 科学技術振興機構. 2017年7月25日閲覧。
  34. ^ ヒドリドイオン, コトバンク, https://kotobank.jp/word/%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%89%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3-1692867 2016年5月19日閲覧。 
  35. ^ 玉尾, 桜井 & 福山 2007.
  36. ^ 経済産業省大臣官房調査統計グループ 2020, p. 9.
  37. ^ 玉尾, 桜井 & 福山 2010, pp. 86-87.
  38. ^ 水素を生かす(上)初のセルフ式ステーション」『日本経済新聞』朝刊2019年1月6日(サイエンス面)2019年2月24日閲覧。
  39. ^ 既存添加物名簿収載品目リスト(日本食品化学研究振興財団、平成26年2月6日更新)2016年6月30日閲覧。
  40. ^ Agency Response Letter GRAS Notice No. 520 FDA, November 28, 2014.
  41. ^ 日本鍍金材料協同組合 2008.
  42. ^ 黒部 2008.
  43. ^ 「水素を発電燃料に 千代田化工など、東南アから輸入」『日本経済新聞』電子版(2017年7月27日)2018年5月11日閲覧
  44. ^ 古川一夫 (2015年3月2日). “水素社会構築に向け、新たな研究開発を開始”. 2015年7月11日閲覧。
  45. ^ a b 李 et al. 2015.
  46. ^ a b c d Ichihara et al. 2015.
  47. ^ Dole, Wilson & Fife 1975.
  48. ^ a b 大澤 2013.
  49. ^ Nicolson et al. 2016.
  50. ^ Cole. “Safety of inhaled hydrogen gas in healthy mice”. www.medgasres.com. 2020年2月14日閲覧。
  51. ^ 早産における分子状水素の予防効果と母獣長期投与の胎仔への影響”. KAKEN. 2020年2月14日閲覧。
  52. ^ 新生児低酸素性虚血性脳症に対する低体温と水素吸入ガス併用療法の効果に関する研究”. KAKEN. 2020年2月14日閲覧。
  53. ^ 世界唯一の爆発しない水素ガス吸入機の開発”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES. 2020年2月14日閲覧。
  54. ^ 大学ジャーナルオンライン編集部 (2019年9月26日). “市販の水素ガス吸入機に爆発危険性 慶應義塾大学とMiZが共同研究 | 大学ジャーナルオンライン”. 大学ジャーナル. 2020年2月14日閲覧。
  55. ^ 事故情報データバンクシステム”. www.jikojoho.go.jp. 2020年2月14日閲覧。
  56. ^ MiZ株式会社 水素を含有する薬理機能水およびその用途に関する特許公報 (特許第4783466号)”. www.j-platpat.inpit.go.jp. 2020年2月14日閲覧。
  57. ^ Yanagihara et al. 2005.
  58. ^ Ohsawa et al. 2007.
  59. ^ a b 佐野 2016.
  60. ^ 先進医療 B 実施計画等評価表(番号 B066)2016年7月14日
  61. ^ Tamura et al. 2016.
  62. ^ 心停止の患者 水素で脳ダメージ軽減 臨床研究開始へ”. NHK科学文化部ブログ (2016年2月20日). 2017年4月1日閲覧。
  63. ^ 入江 & 伊藤 2012.
  64. ^ Hirano et al. 2020b.
  65. ^ 「水素分子の各種疾患又は疾患モデルに対する 効果を報告した文献一覧」MiZ株式会社”. 2020年2月18日閲覧。
  66. ^ Hirano et al. 2020a.






水素と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「水素」の関連用語

水素のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



水素のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの水素 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2021 GRAS Group, Inc.RSS