歯磨き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/26 17:23 UTC 版)
概要
歯磨きの主な目的は、歯周病や虫歯の予防[1]、口臭の軽減である。歯を磨く(擦って汚れを取る)から「歯磨き」と呼ばれている。英名のブラッシング(Brushing)もブラシで磨くことを意味する。
歯ブラシによる歯磨きだけでは、歯の表面のみしか届かず、全体の50%しか歯垢除去できないため[2]、デンタルフロス、歯間ブラシなどの歯間清掃ツールの利用が推奨される。ワンタフト(毛束が1つの歯ブラシ)などの製品も市販されており、併用する人が増えている。
口腔内の衛生に気を使う場合には、歯ブラシ・歯間ブラシ・フロス以外にも、ジェットウォッシャーで洗い流したり、舌苔を掃除したり、睡眠前にマウスウォッシュすることが効果的である。一つの方法だけでは磨ききれなかったり効率的ではないため、複数の方法で掃除することが推奨される。
また、年に1~2度程度の頻度で、歯磨きでは取り切れない歯石を歯科医に除去してもらったりすることも重要である[3]。歯間ブラシやフロスがやや使いづらくなったタイミングが一つの目安であるが、最低でも年に1度くらい定期的に行う必要がある。
使用器具
歯磨きのための道具には、下記のように様々なものがある。
- 古代からの器具
- 歯の表面用
- 洗浄用
-
- 入れ歯洗浄剤
- ジェットウォッシャー … 歯磨きやフロスを使用した後に、水の水圧で歯垢を洗い流せる電動器具。
- マウスウォッシュ … 歯垢を取るのではなく、市販のマウスウォッシュ薬を使ってうがいをして、菌の増殖を防ぐ。
- その他
-
- 舌ブラシ … 舌の汚れである舌苔を取る。(口臭の6割は舌と言われており、菌の繁殖を減らせる)
複数の道具による清掃
日本においては歯ブラシしか使用しない人が多いが、歯ブラシだけでは歯間の汚れまでは取り切れない。それぞれの道具には得意・不得意があり、一つの道具だけでは取り切れないため、複数の道具を使うことで効率的に確実に歯垢を取ることができる。
具体的には、一例として下記のような工程である。ここでは、職場では歯ブラシを使えない場合を想定している。12時間ごとにマウスウオッシュ液でのうがいをすることで、菌の増殖を抑えるようにしている。
(朝食後)
- 歯ブラシでの歯磨き (3分)
- ジェットウォッシャー (1分)
(昼食後)
- マウスウオッシュ液によるうがい (30秒)
(夕食後)
- 電動ブラシでの歯磨き (3分)
- 歯間ブラシ (2分)
- ジェットウォッシャー (1分)
- 舌ブラシ (10秒)
(就寝前)
- マウスウオッシュ液によるうがい (30秒)
歯磨剤
主に歯磨きの清掃効果を高めるなどの目的で、歯ブラシのブラシ繊維(いわゆる“毛”)の先端につけるペーストを歯磨剤と言う。一般にはそれは「歯磨き粉」や「ハミガキ」「練り歯磨き」などと呼ばれている。歯磨剤がペースト状であるにもかかわらず「歯磨き粉」と呼ばれる理由は、かつて粉状の歯磨剤が販売されていた時代の名残である。近年ではペーストの替わりに液体状の「液体ハミガキ」(洗口剤)を用いて歯磨きを行う人々も多い。
歯磨き粉を使わない
歯磨きに「歯磨き粉を使わない」ことを推奨・指導する歯科医師もいる。清掃が充分でない場合において、歯磨き粉の使用によって清涼感が感じられてしまうことから、丁寧な歯磨きを行う上で妨げになることがあるからである。
また、歯ブラシを押さえつけすぎて長時間使用している場合や、電動歯ブラシを必要以上に使用した場合に、歯が削れやすくなることを防ぐ意味もある。
歯磨き粉なしで3分間ほど歯磨きをして、フロスで歯間の汚れを取るだけで充分にスッキリした感覚を得られる。よりスッキリした清涼感が欲しければ、歯間ブラシを使用した上で「マウスウォッシュ液」を併用するほうが望ましい。
- ^ 歯ブラシでのみがき方基本 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(2021年10月2日閲覧)
- ^ “The plaque-removing efficacy of a single-tufted brush on the lingual and buccal surfaces of the molars”. Journal of Periodontal & Implant Science 41 (3): 131–4. (June 2011). doi:10.5051/jpis.2011.41.3.131. PMC 3139046. PMID 21811688 .
- ^ 3日歯みがきしないだけで口の中は歯周病菌だらけ 歯石を除去したほうがいい本当の理由/連載「歯科医が全部答えます! 聞くに聞けない“歯医者のギモン”」若林健史AERA dot.(2018年10月8日)2019年2月23日閲覧
- ^ スマホに入れてサバイバル! 防災知識総まとめ p55 出版社:三才ブックス 発行年:2020
- ^ The Queen's Bed: An Intimate History of Elizabeth's Court p24
- ^ “At-home dental care: True or false?” (英語). Harvard Health (2021年11月11日). 2023年7月10日閲覧。
- ^ a b c d e f g 『看護師のための看護基礎知識事典』秀和システム、2010年、107頁。
- ^ Bass, C. C.、1954年3月「An effective method of personal oral hygiene, Part II」『The Journal of the Louisiana State Medical Society』106巻3号100~112ページ、PMID 13143356。Harris、García-Godoy、1999年 (89ページ~)参照。
- ^ 長崎県福祉保健部、長崎大学歯学部、長崎県歯科医師会 2001年(13・15ページ)参照。
- ^ Harris、García-Godoy、1999年(91・92ページ)参照。
- ^ 長崎県福祉保健部、長崎大学歯学部、長崎県歯科医師会、2001年(17ページ目)参照。
- ^ 【子ども】座って歯磨き 事故防ぐ/スキンシップ兼ね 楽しく習慣づけ『読売新聞』朝刊2018年12月12日(社会保障面)2019年2月23日閲覧
- ^ 那覇のコールセンター 産経新聞ニュース(2020年12月14日)2021年10月2日閲覧
- ^ ●ウイルス感染予防のための歯みがきについて 日本歯科医師会(2021年3月8日)2021年10月2日閲覧
- ^ Yu, Hai-Yang; Qian, Lin-Mao; Zheng, Jing (2013). Dental Biotribology. Springer. pp. 18–19. ISBN 978-1-4614-4550-0
- ^ “Who invented the toothbrush and when was it invented?”. アメリカ議会図書館 (2007年4月4日). 2008年4月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年4月12日閲覧。
- ^ 竹原直道、松下玲子、藤田尚、松下孝幸、下山晃『むし歯の歴史 または歯に残されたヒトの歴史』(砂書房、2001年)170~171ページ
- ^ ペット大国ニッポン(電子書籍) 作成者: 田島靖久、津本朋子、脇田まや 出版社:ダイヤモンド社 p.誤解が多い歯周病
- ^ “野生カニクイザルの母ザルは子どもが見ていると道具使用を大仰にしてみせることが明らかに”. 京都大学. 2022年12月3日閲覧。
- ^ 『ナイルチドリ』 - コトバンク
- 歯磨きのページへのリンク