日本の道路 道路交通

日本の道路

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 10:57 UTC 版)

道路交通

日本の道路交通規則では、自動車、自転車などの車両が左側通行、歩行者が右側通行である[注釈 3]1890年明治33年)6月の初制度化から改正された1949年昭和24年)ごろまでは、人も馬・車も道路の左側通行であった[50]。これについての理由は、明治以前の武士の時代にを左に挿したが擦れ違う時に刀の鞘が触れないようにするためとも、すれ違いざまの攻撃のときに対応が遅れないためともいう説がある[51]。また、牛車が左側を通行する習慣があったため、交通規則を定める際に人も車も左側通行したという説もある[51]。明治に入り、新政府はイギリスに範を取り左側通行を正式に採用している。戦後、自動車が増えるに従い通行者が後ろからくる車に気づきにくく危険であるという理由から[51]GHQが、アメリカ合衆国と同じく車が右側通行、歩行者が左側通行の対面交通とするよう指導したが、日本の道路設備を右側通行にするには多額の費用と時間が必要ということが判明したため、車の左側通行は維持し歩行者のみ右側通行とすることとなった。アメリカ合衆国の施政下にあった沖縄県では、1978年7月30日まで車が右側通行だった(730)。

現在、世界的には「歩行者が左側、車両が右側」を通行する国が多数派であるが、日本と同様に「歩行者が右側、車両が左側」を通行する国にはイギリスなどがある[51]

交通管理施設

道路情報提供装置の一種である、一般道路に設置されている道路情報板の例(茨城県道150号)。

日本の道路では、交通の円滑を図り、安全かつ安心に利用できるように、道路標識路面標示非常電話、道路情報提供装置、車両監視装置、車両諸元計測装施設、料金所信号機の8種類の交通管理施設が設置されている[52]

道路標識は、道路で見かける丸形や三角形、四角形などの標識である[53]。それぞれ役割があり、案内・警戒・規制・指示の各種類ごとに設置者が決められている[53]。各種の道路標識は、一か所にいくつもの標識が設置されることがないように配慮がなされていて、交通の妨げとならないように道路利用者にとってわかりやすい位置に設置されている[53]。(→詳細は、「日本の道路標識」を参照。)

路面標示は、道路の舗装面にある横断歩道停止線センターライン(中央線)などのマーキングのことである[54]。マーキングの色は「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」(略称:標識令)により黄色や白色、青色表示などが定められていて、またその種類によって設置者が規定されている[54]。(→詳細は、「日本の路面標示」を参照。)

非常電話は、高速自動車国道などの自動車専用道路に設置されていて、NEXCOなど道路管理者の担当センターに直接つながり、自動車の事故や故障など非常時の通報や援助を求める際に使用するものである[52]

道路情報提供装置は、その道路の渋滞や雨、霧、積雪、路面凍結などの気象情報、土砂崩れなどによる交通状況を把握して、道路上に設置された道路情報板などにより利用者へ情報提供する装置である[52]

車両監視装置は、主要道路の要所要所に遠隔操作できる監視カメラを設置して、交通事故や車両火災などの道路の状態を監視する装置である。交通量や走行速度を感知する車両感知器も、車両監視装置に含まれる[52]

車両諸元計測装置は、道路構造の保全や通行車両の安全を守るために、幹線道路沿いや料金所に設置されている施設で、日本の小型道路以外の道路設計基準である総重量25トン(245 kN)を超える重量の車両を検出し、取り締まるために設置されている[52]

料金所は、高速道路や有料道路の出入口に設けられる、通行料金を収受するための施設である。近年では、ETC(料金自動授受システム)の普及により、窓口の無人化がすすんでいる[52]

信号機は、交差点でよく見かける道路交通の信号装置で、車両用と歩行者用があり、交差点の安全を確保するうえで最も有効な設備である[55]。信号の発光面は意外と大きく、車両用(円形)は直径25 - 30センチメートル、歩行者用(正方形)は1辺あたり25センチメートルある[56]。また、表示色の赤・黄・青の3色のうち、「止まれ」を意味する赤が最も視認性の良い位置になるように配置されている[56]。信号制御方法は、大別すると地点制御、線制御、面制御の3つに分類でき、地点制御は隣接交差点に連動しない当該交差点を単独で制御する方式、線制御は幹線道路において隣接する交差点とともに連動制御する方式、面制御は大都市などの道路網において近隣交差点を一括して制御する方式である[55]。また、信号表示には定期周期と交通感応制御の2種類がある[55]。(→詳細は、「日本の交通信号機」を参照。)


注釈

  1. ^ 明治政府は交通インフラに鉄道の整備を優先させたため、他国に比べ道路整備が相対的に遅れたともいわれる[32]
  2. ^ 1955年(昭和30年)の道路舗装率は、国道だけとってもわずか13.6%にすぎなかったといわれる[44]
  3. ^ 車道と歩道が分離されている場合などを除く。
  4. ^ ただし、農道・林道・自転車道・自然歩道などは含まない。
  5. ^ 面積1平方キロメートルあたりの道路の延長。
  6. ^ 都道府県面積に対する道路面積が占める比率。
  7. ^ 個別最適ではなく、全体最適の観点でとらえて、計画と実績を管理していくこと。
  8. ^ 維持管理指数(英語:Maintenance Control Index)。道路管理者の立場からみた舗装の維持修繕の要否を判断する評価値であり、地域や路線ごとに供用年数・車線当たりの交通量・大型車混入率を説明変数にして、劣化曲線の線形回帰式から算出される将来予測値で評価する。数値レベルは0から10までの範囲で、数値が5を下回ると修繕の必要性があるとされる[66]

出典

  1. ^ a b c 峯岸邦夫 2018, p. 12.
  2. ^ a b c d e f 峯岸邦夫 2018, p. 54.
  3. ^ “特別史跡「三内丸山遺跡」三内丸山遺跡 道路?”
  4. ^ 窪田陽一 2009, p. 12.
  5. ^ a b c d e f g h 峯岸邦夫 2018, p. 38.
  6. ^ 窪田陽一 2009, p. 13.
  7. ^ 武部健一 2015, pp. 29–32.
  8. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 86–87.
  9. ^ a b c 浅井建爾 2001, pp. 84–85.
  10. ^ a b c d e f g h 窪田陽一 2009, p. 14.
  11. ^ 武部健一 2015, pp. 44 45.
  12. ^ 武部健一 2015, pp. 44–45.
  13. ^ a b c 浅井建爾 2015, p. 113.
  14. ^ 佐藤健太郎 2014, p. 87.
  15. ^ 武部健一 2015, p. 93.
  16. ^ 佐藤健太郎, pp. 87–88.
  17. ^ 武部健一 2015, pp. 101–104.
  18. ^ 浅井建爾 2001, pp. 94–95.
  19. ^ 浅井建爾 2001, p. 100.
  20. ^ a b 浅井建爾 2001, p. 110.
  21. ^ a b 武部健一 2015, p. 144.
  22. ^ a b c d e f g h 峯岸邦夫 2018, p. 40.
  23. ^ a b c d e f 窪田陽一 2009, p. 16.
  24. ^ a b c 浅井建爾 2001, p. 244.
  25. ^ 浅井建爾 2001, pp. 110, 117, 244.
  26. ^ 武部健一 2015, p. 145.
  27. ^ 浅井建爾 2001, pp. 114–115.
  28. ^ 浅井建爾 2015, p. 67.
  29. ^ 峯岸邦夫 2018, p. 41.
  30. ^ 浅井建爾 2001, p. 117.
  31. ^ 浅井建爾 2015, p. 66.
  32. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 88–89.
  33. ^ 武部健一 2015, pp. 147–151.
  34. ^ 浅井建爾 2001, pp. 112–113.
  35. ^ a b c d e 浅井建爾 2001, p. 116.
  36. ^ a b 佐藤健太郎 2014, pp. 89.
  37. ^ a b 浅井建爾 2001, p. 115.
  38. ^ 岡山県郡治誌. 下巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. doi:10.11501/1450203. 2019年7月26日閲覧。
  39. ^ 武部健一, pp. 173–176.
  40. ^ 武部健一 2015, p. 177.
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  43. ^ a b c d 浅井建爾 2001, p. 118.
  44. ^ 佐藤健太郎 2014, p. 92.
  45. ^ 浅井建爾 2015, p. 25.
  46. ^ a b c d e f g h 峯岸邦夫 2018, p. 46.
  47. ^ 峯岸邦夫 2018, p. 48.
  48. ^ 浅井建爾 2015, p. 26.
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  50. ^ ロム・インターナショナル(編) 2005, p. 161.
  51. ^ a b c d ロム・インターナショナル(編) 2005, p. 162.
  52. ^ a b c d e f 峯岸邦夫 2018, p. 120.
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  54. ^ a b 峯岸邦夫 2018, p. 128.
  55. ^ a b c 峯岸邦夫 2018, p. 124.
  56. ^ a b 峯岸邦夫 2018, p. 122.
  57. ^ 峯岸邦夫 2018, p. 47.
  58. ^ a b c 浅井建爾 2015, p. 33.
  59. ^ a b c d 浅井建爾 2015, pp. 34–36.
  60. ^ a b c d 浅井建爾 2015, pp. 37–38.
  61. ^ a b c 浅井建爾 2015, pp. 39–40.
  62. ^ 浅井建爾 2015, p. 39.
  63. ^ a b c 浅井建爾 2015, pp. 40–41.
  64. ^ a b c 浅井建爾 2015, pp. 43–44.
  65. ^ a b c d 峯岸邦夫 2018, pp. 132–133.
  66. ^ 茨城県土木部道路維持課『茨城県舗装維持修繕計画(概要版)』(レポート)茨城県、2016年3月、9頁https://www.pref.ibaraki.jp/doboku/doiji/documents/hosouijisyuzen.pdf2019年11月27日閲覧 
  67. ^ a b 峯岸邦夫 2018, p. 134.
  68. ^ a b c 峯岸邦夫 2018, pp. 142–143.
  69. ^ a b c d e f 峯岸邦夫 2018, pp. 76–77.
  70. ^ a b c d 峯岸邦夫 2018, pp. 72–73.
  71. ^ a b c 峯岸邦夫 2018, pp. 74–75.






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