抗ヒスタミン薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/15 08:35 UTC 版)
ヒスタミン受容体の占有率と鎮静性の分類
第二世代の抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンH1受容体の占有率が20%未満であり、特にフェキソフェナジン(アレグラ)は、一貫して鎮静作用がない[9]。実験条件が不明であるが、フェキソナジン体の占有率が最も少なく数%であり、エピナスチン(アレジオン)やエバスチン(エバステル)で約10%、セチリジン10mgで約15%、比較に古いものを挙げると第一世代のジフェンヒドラミンでは50%を超える[1]。同じような特徴の表で、ビラスチンはフェキソフェナジンに近いが、占有率の高い場合もあり、ロラタジン(クラリチン)で10%[10]。
フェキソフェナジン、ロラタジン、ロラタジンの代謝産物デスロラタジン(デザレックス)、ビラスチン(ビラノア)については、他の抗ヒスタミン薬と異なり、2017年時点で日本の医薬品添付文書に運転など危険を伴う機械の操作に対する注意書きが書かれていない[11]。このうちフェキソフェナジンのみ1日2回服用であり、他は1回である[11]。ビラスチンは血中濃度の低下を防ぐため、空腹時投与となる[11]。デスロラタジンは、食事の有無による血漿濃度の有意な差は見られないため、添付文書に服薬タイミングの記載はない。
第一世代と第二世代
- 第一世代
- エタノールアミン系 - ジフェンヒドラミン(ベナ、レスタミンコーワ軟膏)などがここに含まれる。鎮静作用が強いため夜に服薬させるなど工夫が必要である。抗めまい薬としても使われるジメンヒドリナート(ドラマミン)もここに含まれる。
- プロピルアミン系 - クロルフェニラミン(アレルギン、ポララミン、クロール・トリメトン)などがここに含まれる。鎮静作用が少ないため第一世代の中では昼間の投与に適していると考えられる。クロール・トリメトンは蕁麻疹の治療で用いられる。
- フェノチアジン系 - プロメタジン(ピレチア)などが含まれる。局所麻酔作用がある。
- ピペラジン系 - ヒドロキシジン(アタラックスP)などがここに含まれる。鎮静薬、制吐薬としての使われ方が多い。
- ピペリジン系 - シプロヘプタジン(ペリアクチン)などが含まれる。食欲亢進、体重増加作用がある。
- 第二世代
- 第二世代抗ヒスタミン薬は抗アレルギー薬に分類されることが多い。アレルギー反応除去には不要な鎮静作用について改良されている。エピナスチン(アレジオン)、セチリジン(ジルテック)とレボセチリジン(ザイザル)、ロラタジン(クラリチン)とデスロラタジン、フェキソフェナジン(アレグラ)、ビラスチン(ビラノア)といった薬がここに含まれる。妊婦に用いる場合はセチリジン(ジルテック)が良いと言われている。
抗ヒスタミン薬は鼻炎の症状でよく用いられるがくしゃみや鼻漏、かゆみには有効だが鼻閉には効果がない。鼻閉にはロイコトリエン拮抗薬という抗アレルギー薬が有効であると言われている。
その他のヒスタミン受容体
以下、その他の拮抗薬は通常は、抗ヒスタミン薬とは呼ばない。
ヒスタミン受容体にはH2受容体もあり、これは胃の壁細胞に作用して、cAMPを増加させ、プロトンポンプから得られた水素イオンを塩酸の形で胃腔内に放出させる。そのためH2作用を阻害すれば胃酸の分泌を抑えることができる。
H2受容体拮抗剤(H2-blocker、H2ブロッカーと医療現場では呼ばれることが多い)は主に胃に存在するH2受容体に働き、強力に胃酸分泌を阻害するので胃潰瘍、胃炎の治療薬として使用されている。H2受容体拮抗剤が臨床で使用されてから、胃潰瘍の外科手術は激減した。シメチジン、ラニチジン、ファモチジンなどが代表的。
H3受容体拮抗薬は肥満、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、アルツハイマー病、統合失調症に適応がある可能性が指摘されている[要出典]。
- ^ a b 抗ヒスタミン薬の薬理学 2009.
- ^ a b c d e f g 今井博久(編集)、福島紀子(編集)『これだけは気をつけたい高齢者への薬剤処方』医学書院、2014年4月、198-201頁。ISBN 978-4-260-01202-7。
- ^ a b c 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会『鼻アレルギー診療ガイドライン2013年版―通年性鼻炎と花粉症』(改訂第7版)ライフサイエンス、2013年1月、41-42頁。ISBN 978-4898014363。
- ^ Asadollahi S, et al. Headache. 2014;54(1):94-108.
- ^ Watanabe S, et al. Neurogastroenterol Motil 2007;19(10):831-8.
- ^ Chia YY, et al. Acta Anaesthesiol Scand 2004;48(5):625-30.
- ^ Santiago-Palma J, et al. J Pain Symptom Manage 2001;22(2):699-703.
- ^ 厚生労働科学研究班および日本睡眠学会ワーキンググループ編; 気分障害のガイドライン作成委員会 (eds.). 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインー出口を見据えた不眠医療マニュアル (pdf) (Report) (2013年10月22日改訂版(医療従事者向けの記述が削除された版) ed.). 日本うつ病学会、気分障害のガイドライン作成委員会. Q13、Q28. 2014年3月20日閲覧。
- ^ Simons, F. Estelle R.; Simons, Keith J. (2011). “Histamine and H1-antihistamines: Celebrating a century of progress”. Journal of Allergy and Clinical Immunology 128 (6): 1139–1150.e4. doi:10.1016/j.jaci.2011.09.005. PMID 22035879 .
- ^ Patrizio Blandina, Maria Beatrice Passani. Histamine Receptors: Preclinical and Clinical Aspects, Springer, 2016, p.321. ISBN 978-3319403083.
- ^ a b c 池ノ上知世「自動車の運転に対し制限のない第二世代抗ヒスタミン薬について」(pdf)『鹿児島市医報』第56巻第2号、2017年、34頁。
- 1 抗ヒスタミン薬とは
- 2 抗ヒスタミン薬の概要
- 3 ヒスタミン受容体の占有率と鎮静性の分類
- 4 参考文献
抗ヒスタミン薬と同じ種類の言葉
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