年金記録問題 年金記録確認第三者委員会

年金記録問題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/25 06:29 UTC 版)

年金記録確認第三者委員会

2007年(平成19年)6月22日、年金記録の確認について、社会保険庁側に記録がなく本人にも領収書等の証拠がない場合に、本人の立場に立って、申立てを十分に汲み取り、様々な関連資料を検討し、記録訂正に関し公正な判断を示す年金記録確認第三者委員会(梶谷剛委員長)が設置された[42]

なお従来の法律では、被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に処分に不服がある場合は、社会保険審査官に審査請求をし、その決定に不服がある場合は社会保険審査会に再審査請求することとされている。

第三者委員会は、国家行政組織法第8条の審議会等として、中央委員会が総務省本省に、地方委員会が、各管区行政評価局、沖縄行政評価事務所、四国行政評価支局、各行政評価事務所、各行政評価分室の全国50か所、都道府県庁所在地等に設置されている。

2007年(平成19年)6月25日に発足した中央第三者委員会は、本人の立場に立った公正な判断を行うための判断の基準などの審議と他の申立てのあっせんを行うに際しての先例となる事例のあっせん案の作成を行う。7月に発足した地方第三者委員会(全都道府県)は、申立てについて、策定された判断の基準などに基づき、本人の立場に立った公正な判断を行い、あっせん案の作成を行う。

委員は、非常勤の国家公務員であり、専門性及び識見の高い法曹関係者、学識経験者、年金実務に精通した者(社会保険労務士、税理士、市町村住民行政関係者等)、その他の有識者等から任命され、「消えた年金記録問題」や「年金記録不備問題」等の個別苦情事案に対応する。

2009年(平成21年)6月、第三者委員会は、設置されてから2年が経過し、その間約7万件の申立てについて調査審議を行った経験を踏まえ、2年間を総括するため報告書を作成し公表した。この報告書では、同委員会の活動実績の説明と処理事案の分析が行われている[43]

2009年(平成21年)12月25日、第三者委員会は、2009年(平成21年)3月の年金記録問題に関する関係閣僚会議で定められた「2008年(平成20年)度に年金受給者から申し立てられたものについては、遅くとも2009年(平成21年)中を目途に処理を終えることとする。」との目標については、処理済み(受付件数3万5451件のうち、3万5427件〈99.9 %〉を処理)となり、目標を達成したことを公表した。また、累計では、受付件数12万4446件のうち、10万1022件 (81 %) が処理済みとなっている[44]

年金記録確認第三者委員会報告書

以下は、第三者委員会が2年間に約7万件の申立について調査審議を行った活動実績の説明と処理事案の分析結果についての報告書(2009年〈平成21年〉6月)の概要である。

第三者委員会の活動の概要
2007年(平成19年)6月から2009年(平成21年)3月までに、中央委員会は合計259回、地方委員会は合計1万1314回開催し、事案処理の実績は、受付申立件数 10万7954件に対し、処理終了件数 6万8595件 (67 %) であり、あっせん率は約40 %である。
関係閣僚会議において、1年を目途に処理を終えることとされた2007年(平成19年)度申立事案(5万752件)については、2008年度(平成20年度)度中に99.95 %の処理を終了し政府目標を達成した。
基本方針に基づく公正・迅速な事案処理
事案処理は、申立人提出の資料だけではなく、関連資料及び周辺事情の幅広い収集を行い結論を得ており、それらが乏しい場合も詳細な調査を行った上で、申立内容等に基づいて総合的な判断を行いあっせんしている。
申立人の申立てを十分にくみ取るとの考え方から、事務室職員が申立人から詳細に申立内容を聴取し様々な情報を収集している。 また、申立人が希望する場合は、口頭意見陳述を行っている。
全国の第三者委員会の統一を図り、整合性を確保するため、中央委員会による基本方針案の策定及び先例の発出等を行っている。
平均処理期間は、社会保険事務所の受付から約8か月、第三者委員会受付から約6か月である。
新たな資料・情報が得られた場合は、結論が出された事案について再申立てを認めており、14件をあっせんしている。
申立事案の中には、提出資料に虚偽の疑いがある申立てがあったが、審議の結果いずれも訂正不要と判断されている。
処理事案の分析
(国民年金)
あっせん
  1. 申立期間以外は納付済、申立期間が短期間、配偶者などの同居親族は納付済の場合。
  2. 手帳記号番号の払出時期から納付が困難な場合であっても、加入や納付に係る具体的な記憶や供述がある場合。
非あっせん
申立人の記憶内容があいまい、納付できない期間の納付、申立人が納付に関与していない、申立内容の矛盾・事実との相違などの場合。
(厚生年金)
厚生年金保険法によるあっせん
  1. 遡及して行った社会保険事務所の事務処理が不合理と判断される場合
  2. 厚生年金基金の記録から、事業主が申立てどおりの届出を社会保険庁に行っていたと認められる場合。
厚生年金特例法によるあっせん
  1. 同一企業内の転勤に伴い加入記録に空白期間が生じた場合
  2. 事業主や同僚から申立人の保険料控除に係る供述が得られる場合
  3. 申立人と同種の勤務内容であった同僚に加入記録が認められる場合。
非あっせん
事業主が届出や保険料の控除を行っていなかったことが確認できる、適用事業所となるための届出を行っていない、事業主や同僚から、申立人が厚生年金の加入してなかったことを裏付ける供述が得られるなどの場合。
年金記録問題において第三者委員会の活動が果たした役割
事案処理を通じた年金記録の回復のほか、厚生年金特例法の必要性を提言し、制定・施行されたこと、調査過程で、申立人の未統合の年金記録を発見し記録統合したことや厚生年金の不適正な遡及訂正事案の存在を明らかにしたこと、集積したあっせん事案により定型的に処理しやすい事案を類型化し、社会保険事務所で職権訂正を実施したこと。

注釈

  1. ^ 民主党の前身である、左派第一野党であり続けた日本社会党は国民識別番号制度反対、民主党時代も政権交代で国家運営を経験するまでは反対してきた。しかし、2011年7月に菅直人首相と与党民主党の社会保障改革検討本部は、社会保障と税の共通番号大綱を決定した。共通番号の名称を「マイナンバー」とすることと関連法案提出も決めた。

出典

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  41. ^ 未統合記録5095万件の解明状況
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