実施権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 13:21 UTC 版)
概要
特許法では、特許権者が業として特許発明の実施をする権利を専有すると規定している(68条)。したがって、原則特許権者以外の者が特許発明を実施することは、その特許権を侵害することとなる。しかし、発明の実施による技術普及の意味は大きいことから、特許法は、特許権者自らが実施しなくとも、他者に実施の権原を与える実施権の制度を設けている[1]。
実施権には大別して専用実施権および通常実施権の2種類がある。いずれも業として特許発明を実施することができる権利であるが、専用実施権権は、独占排他的に実施できる物権的な権利であるのに対し、通常実施権者は独占排他性のない債権的な権利である(77条2項、78条2項)逐条20版(p280)。このことから、専用実施権と通常実施権は、以下の差異が生じる。
- 専用実施権を設定した場合、特許権者自身であっても専用実施権者に許諾した範囲では発明を実施できないが[2]、通常実施権の場合は通常実施権者に許諾した範囲であっても特許権者自身が発明を実施できる逐条20版(p280)。
- 専用実施権者には権利侵害の際の差止請求権、損害賠償請求権があるが、通常実施権者の場合は、差止請求権も損害賠償請求権も否定する立場が多数説である(後述する独占的通常実施権の場合を除く)高橋5版(p195)。
専用実施権と通常実施権は、主に特許権者からの設定・許諾で発生する。このような特許権者からの設定・許諾で発生する実施権を許諾による実施権高橋5版(p187)という。これは日常的な意味でのライセンス契約に相当する高橋5版(p187)。許諾による実施権者は、契約等で特許権者と実施権者が契約等で設定行為を行う。設定行為とは特許権者と専用実施権が契約等で決めるもので、実施権者が特許発明を実施できる場所、期間、内容等の範囲を自由に決めることができる(77条2項、78条)逐条20版 (p279,281)高橋5版(p188,192)が、数量制限は課すことは重畳的な制限を課すことになるのでできない 高橋5版(p189) 。実施権の設定・許諾は、対価がなくてもすることができる。
通常実施権は、その発生原因により、許諾による通常実施権、法定通常実施権、裁定実施権の3種類に分類される。法定通常実施権は特許権者や専用実施権者の意志とは関係なく、公益上の必要性や当事者間の衡平の為に法律の規定によって発生する高橋5版(p198)。裁定通常実施権は裁定という行政処分により強制的に設定される通常実施権のことで高橋5版(p187)、これらは有償か無償かなど、許諾による通常実施権とは多くの点で異なる高橋5版(p198)。また、特許出願の段階で設定・許諾する仮の専用実施権・通常実施権として、仮専用実施権・仮通常実施権がある。
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