完全系列 完全系列の概要

完全系列

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/17 05:10 UTC 版)

定義

R 加群 Xi と写像 fi: XiXi+1 (iZ) からなる(有限または無限)系列

において、 となるとき、系列は Xn において完全(exact)であるという。特に、次の事実が成り立つ[1]

  • 系列 が完全であることは、f が単射であることと同値。
  • 系列 が完全であることは、g が全射であることと同値。
  • 系列 が完全であることは、f が単射かつ g が全射であり、さらに g が同型 を誘導することと同値。

系列がすべての R 加群 Xi において完全であるとき、その系列を完全系列(exact sequence)と呼び、

などと表記する。なお、系列が Xn において完全であるならば、その定義から明らかに

(ただし、 の零元)

が成り立つ(逆は一般に成り立たない)。

例えば、アーベル群の系列

で、f: ZZ が 2 倍写像 (x → 2x), p を標準射影とすると、これは完全である。実際、2x = 0 となる x は 0 であり、かつ 0 に限られる(f は単射である)ので 0 → Z は完全である。また、f, p はアーベル群の準同型で、im(f) = 2Z = ker(p) であることは明らかである。最後に Z/2Z → 0 は Z/2Z の全ての元を 0 とする準同型で、その核は Z/2Z 全体となるが、p は全射であるからこれも完全である。

一般に、考えているアーベル圏における零対象を 0 であらわすとき、

が完全であることはそれぞれ f単射g全射であることと同値である。f: AB がアーベル圏の射(たとえば群の圏における群準同型、加群の圏における準同型など)であるとき

は完全列である。

1 を単位群とし、群 G に対し、Aut(G) をその自己同型群、Z(G) を中心、Inn(G) を内部自己同型群、Out(G) = Aut(G)/Inn(G) を外部自己同型群とすると

なる完全列を得る。


  1. ^ Atiyah, Michael Francis; MacDonald, I. G. (1969). Introduction to commutative algebra. Reading, Mass.,: Addison-Wesley Pub. Co. ISBN 0-201-00361-9. OCLC 7491. https://www.worldcat.org/oclc/7491 


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