天保暦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/14 02:17 UTC 版)
改暦以後の旧暦
日本では、新暦への改暦以来現在まで「旧暦」という名前の太陰太陽暦が暦書やカレンダーなどに記載されている。これは現代天文学に基づいて観測された月と太陽の動きから朔と二十四節気を計算し、また観測の基準が京都の東経約135度46分であったものを日本標準時子午線の東経135度に変更して、置閏法のみ天保暦と同じにしたものであり、厳密には天保暦ではない。
この計算は、現在では国立天文台によって行われている。その計算結果は、毎年2月のはじめに、翌年分が「暦要項」というタイトルで「官報」上に告示される[注 3]。この「暦要項」の「二十四節気および雑節」および「朔弦望」の2節[注 4]に提示された情報と、天保暦に基づく置閏法により、「30日の大月、29日の小月」や「12の月および閏月の設定」など、旧暦の年月日はほぼ自動的に確定する。市販のカレンダーに並記されている旧暦の月日が出版元によって相違することはない。これにより、公的には「旧暦」はメンテナンスされていないが、実質的に「旧暦」が定まる[注 5]。
旧暦2033年問題
2033年に、天保暦の置閏法が破綻する事態が生ずる。 グレゴリオ暦(西暦)2033年8月25日〜2034年3月20日の7か月(これらを便宜的にa月からg月とする)に旧暦の8・9・10・11・12・1の6か月と閏月1つを置くことになるが、天保暦の月名決定のルールを適用すると、
- 閏月を置くべき候補がa月・e月・g月と3つも出現する。
- この年、中気の「秋分」を含む月b月と「冬至」を含むd月の間には1か月しかなく、「『秋分』を含む月を8月とする」「『冬至』を含む月を11月とする」という規定をそのまま適用することが不可能になる。
すなわち、旧暦9月と10月を決めることができなくなる[2]。この問題については、国立天文台の元天文台長や「暦計算室」員、国立民族学博物館名誉教授、カレンダー出版物の業界団体の長などを理事長・理事・学術顧問などに迎えている社団法人・日本カレンダー暦文化振興協会が、2014年7月以来、この問題に関する学術シンポジウムを開催し、問題の所在についての啓蒙と周知、対策案についての検討などを行っている[3]。同協会が2015年8月に発表した見解によれば、下表のe月を閏11月とする案を推奨しているが、「置閏ルールについてはさらに検討を継続する」ともしている。
西暦の年月日 | 対応する旧暦の月 大(30日)小(29日) |
旧暦の月名 |
---|---|---|
2033年 | 1月 1日〜2033年 1月30日大月 | 12月 |
2033年 | 1月31日〜2033年 2月28日小月 | 1月 |
2033年 | 3月 1日〜2033年 3月30日大月 | 2月 |
2033年 | 3月31日〜2033年 4月28日小月 | 3月 |
2033年 | 4月29日〜2033年 5月27日小月 | 4月 |
2033年 | 5月28日〜2033年 6月26日大月 | 5月 |
2033年 | 6月27日〜2033年 7月25日小月 | 6月 |
2033年 | 7月26日〜2033年 8月24日大月 | 7月 |
2033年 | 8月25日〜2033年 9月22日小月 | a月 |
2033年 | 9月23日〜2033年10月22日大月 | b月 |
2033年10月23日〜2033年11月21日 | 大月 | c月 |
2033年11月22日〜2033年12月21日 | 大月 | d月 |
2033年12月22日〜2034年 | 1月19日小月 | e月 |
2034年 | 1月20日〜2034年 2月18日大月 | f月 |
2034年 | 2月19日〜2034年 3月19日小月 | g月 |
2034年 | 3月20日〜2034年 4月18日大月 | 2月 |
2034年 | 4月19日〜2034年 5月17日小月 | 3月 |
注釈
- ^ なお明治維新の際、陰陽頭・土御門晴雄が太陽暦導入に反対して太陰太陽暦に基づく改暦を企図したが、晴雄の急逝により計画が中止されたため、天保暦に代わる太陰太陽暦への改暦は実施されなかった。
- ^ 改暦の年月日を、「弘化元年1月1日」としている場合もあるが、天保15年は、12月1日(1845年1月8日)までで、弘化元年は、12月2日(1845年1月9日)に改元される。しかし、改元が布告された時点でその年の元日にさかのぼって新元号の元年と見なす場合(改元#種類を参照)があり、改暦を「天保15年」とする文献と、さかのぼって「弘化元年」とする文献があるので注意が必要である。
- ^ 2015年の場合、2月2日に発行された「官報」第6463号の25ページ〜26ページに「平成28年(2016)暦要項」が「告示」(=掲載)されている。
- ^ 「暦要項」は、「国民の祝日」、「日曜表」、「二十四節気および雑節」、「朔弦望」、「東京の日出入」、「日食・月食など」などの各節から構成されている。
- ^ 中国では現在も公的に太陰太陽暦である時憲暦がメンテナンスされており、これを基準として春節が祝われる。
出典
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