大衆車 大衆車と社会

大衆車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/19 03:45 UTC 版)

大衆車と社会

市場経済の成長期に登場した大衆車は、初期こそ民衆の生活向上心を煽り盛んに販売・消費されたが、次第に経済的成長傾向が鈍化すると、飽和状態に陥って消費者の関心が細分化する傾向があることから、これら画一的な大衆車への関心は薄れる傾向にある。このため大衆車の勃興は、一種の経済的指標とみなすことも可能である。

日本や欧米といった経済的に豊かな地域においては、これら大衆車の多くは役目を終えて生産を終了しているか、一定の高級感を出すことでファミリーカーへの転換が図られている。

先進国におけるダウンサイジング

21世紀に入ってからの先進国では、自動車市場の成熟化が進み、乗用車の動力性能が過剰性能になっていることから、大衆車が再び小型化するダウンサイジングの様相を呈し、日本では税制面で優遇される軽自動車が売上を伸ばしている。欧州各国でも、常態化している都市部の交通渋滞や環境対策として基準を満たしたAセグメント車に税制面での優遇措置が実施されたことで、ダウンサイジングが進んでいる。

2010年代にはトヨタ・アイゴ(約7,000英ポンド)、ヒュンダイ・i10(約8,000英ポンド)、日産・ピクソ(約6,900英ポンド)、フォルクスワーゲン・up!(約10000ユーロ)など、装備を極力簡素化して価格を抑えた小型車が各社から相次いで販売されている。これらはシティコミューターとしての利用だけでなく、欧州メーカーにとっては高級ラインへの偏重で取り込めなかった低所得者層をもターゲットに含めることができる。

新興国向け

2010年代から各メーカーでは、東南アジアやインドなど経済発展が著しいアジア市場へ投入する「アジア戦略車」を相次いで発表している。これらの市場では収入に見合った価格(新車でも日本円にして100万円以下)と燃費の良さに加え、未舗装路が残り冠水が頻発する道路事情への対策を施した小型車が好まれる。トヨタ・アギアブリオ・サティヤ(ホンダ)のように現地生産する新規開発車もあるが、コスト削減のため先進国向けを現地仕様にした車種も多い。メーカーにとっては、飽和状態で各種規制が厳しい先進国よりも多量の販売が見込めるため、新たな世界戦略車としての側面も持つ。

日本車においては軽自動車およびその拡大版がその役目を担うことも多く、1990年代以降ではマルチ・スズキ・インディア[4](スズキ合弁)やプロドゥア(ダイハツ合弁)、大宇国民車[5]の存在、パキスタンにおける8代目アルトの現地生産、プロトン・ジュアラ三菱・ミニキャブ派生)などがある。


注釈

  1. ^ それ以前は2サイクルが240 cc以下、4サイクルが360 cc以下と定められており、2サイクルでの成立は不可能だった。当時は、同じ排気量であれば4サイクルより2サイクルの方が高出力を得やすいと考えられていたことによる。
  2. ^ 日本経済新聞日刊工業新聞がスクープ記事を掲載したのみで、通商産業省からの発表は行われていない。
  3. ^ 後に駆動方式を後輪駆動に変更し、空冷水平対向2気筒700 ccの「パブリカ」として結実した。
  4. ^ 全国的に最高40 ℃、最低-10 ℃程度、北海道などでは最低-30 ℃以下も想定しなければならない(気象庁のデータより)。
  5. ^ N17系(中国およびミャンマー)、N18系(中東諸国)。いずれも日本では「ラティオ」(N17のみ)、アメリカでは「ヴァーサ」を名乗るモデル。
  6. ^ 軽自動車に64馬力の出力規制が設けられる発端となった。
  7. ^ 4CVの系譜は上級のドーフィン8/10へと受け継がれた。

出典

  1. ^ 『60年代 街角で見たクルマたち 日本車・珍車編』p. 122 。同書によれば「国民車」と銘打ったのは三菱500が初という
  2. ^ 祝50周年! カローラの歴史を振り返る GAZOO.com 2016年8月22日
  3. ^ GAZOO - ヒンドゥスタン アンバサダー 1959年1月~
  4. ^ ただし設立は1981年
  5. ^ 3代目アルト(大宇・ティコの項を参照)、ラボ/ダマス(キャリイ/エブリイ)を排気量アップの上で生産





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