大母音推移 主な母音変化

大母音推移

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/16 05:04 UTC 版)

主な母音変化

母音変化の推移
  • 長母音 [aː] は、二重母音→[eɪ] への変化。
    (nameなど。「ナーメ」→「ネィム」)
  • 長母音 [εː][eː] は、長母音 [iː] への変化。
    (feelなど。「フェール」→「フィール」)
  • 長母音 [iː] は、二重母音 [aɪ] への変化。
    (timeなど。「ティーメ」→「タィム」)
  • 長母音 [ɔː] は、二重母音 [oʊ] への変化。
    (homeなど。「ホーメ」→「ホゥム」)
  • 長母音 [oː] は、長母音 [uː] への変化。
    (foolなど。「フォール」→「フール」)
  • 長母音 [uː] は、二重母音 [aʊ] への変化。
    (nowなど。「ヌー」→「ナウ」)

注)

  • 例には発音記号のほかに、それに近いカタカナ表記を併記した。ただし、英語と日本語との発音が異なるため、あくまで目安としての近似的な発音である。
  • 例として挙げた単語は、あくまでも「例」として、現在の発音とその綴りから類推し再現したもののため、当時完全には成立していない語や、現在と意味や用法の異なる語も含まれる。
  • 当時から英単語として存在する語のうち、語末の"e"は、現在はほとんど発音されない黙字のため、カタカナ表記もそれに従った。ただしこの現象は、「大母音推移」の部分とは関連のない変化である。

ea, oaはそれぞれe, oの広音を表していた。

原因

わずか200〜300年という短期間にこれほどの変化が起きた原因は特定されておらず、現在も謎のままであるが、以下のような説がある。

黒死病による人口移動
黒死病後のイングランド北部から南東部への急速な人口移動によりアクセント混合が起こり、標準的なロンドンの言語の変化が起こったとする説。黒死病により少数の知識階級の人々が死んだため、大多数を占める下層階級の人々の間で使われていた発音が表に出てきたという説もある[4]
フランス語の外来語
フランス語由来の外来語彙の流入が主要因とする説[5]
中産階級による過剰修正
中産階級の間でフランス語の発音の威信が高まり(この時期にイングランドの貴族がフランス語から英語に使用言語を切り替えたことに関連)、フランス語の発音の不正確な模倣により生じた過剰修正が原因であるとする説[6]
フランスとの戦争
フランスとの戦争による反フランス感情から、英語をフランス語のように聞こえないよう意図的に過剰修正をしたとする説[7]

脚注


  1. ^ a b 寺澤盾『英語の歴史 過去から未来への物語』中央公論新社、2008年、104-109頁。ISBN 9784121019714 
  2. ^ 『現代英語学辞典』石橋幸太郎(編集代表)(初版)、成美堂、1973年1月、672頁。 
  3. ^ 『現代英語学辞典』石橋幸太郎(編集代表)(初版)、成美堂、1973年1月、134頁。 
  4. ^ 英語のつづりと発音が違う意外な「歴史的事情」
  5. ^ Millward, C. M.; Hayes, Mary (2011). A Biography of the English Language (3rd ed.). Wadsworth Publishing. p. 250. ISBN 978-0495906414. https://books.google.com/books?id=nC4_1z292jUC 
  6. ^ Nevalainen, Terttu; Traugott, Elizabeth Closs, eds (2012). The Oxford Handbook of the History of English. Oxford University Press. p. 794. ASIN B009UU4P66. https://books.google.com/books?id=v92EdN2fLWkC 
  7. ^ Asya Pereltsvaig (2010年8月3日). “Great Vowel Shift — part 3”. Languages of the World. 2021年1月3日閲覧。


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