外毒素 構造

外毒素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 22:37 UTC 版)

構造

外毒素は構造によって分類されることがある。毒素の構造には単一鎖タンパク毒構造、相同サブユニット構造、多種類サブユニット構造、A-B型毒素、二成分毒素、三成分毒素などが知られている。特に特徴的なのがA-B型毒素である。これは、基本的にはAサブユニットとBサブユニットの2種類のサブユニットからなるもので、Aは毒素作用を担うサブユニット(active subunit)でBは毒素を標的細胞に誘導し結合(binding)させる機能を担うサブユニットである。単一鎖ポリペプチドであっても構造解析をすると毒素活性を担う部分とレセプターへの結合を担う部分の機能分担があることがある。このような場合に毒素作用を担う部分をAドメイン(フラグメント)、レセプターへの結合を担う部分をBドメイン(フラグメント)と呼ぶ。サブユニットかドメインを区別せず毒性を発揮する部分(active site)と細胞の受容体に結合する部分(binding site)と表現することもある。

2種類の独立した蛋白質が共同して作用することで初めて毒作用を発揮する毒素を二成分毒素という。代表例がボツリヌス菌のC2毒素である。C2毒素ではコンポーネント2(C2Ⅱ)が膜に作用することでコンポーネント1(C2Ⅰ)が細胞内に入りアクチンをADPリボシル化して毒素作用を示す。また炭疽菌の炭疽毒はPA(防御因子)、LF(致死因子)、EF(浮腫因子)の3因子が協調的に働き強い病原性を示す。

分泌

外毒素の分泌はABCトランスポーターによって分泌されるものとSec分泌系を介するものが知られている。ABCトランスポーターで分泌されるものはN末端部分のシグナルペプチドは存在せず、C末端近くのアミノ酸配列が分泌シグナルになっていると考えられている。なお分泌される蛋白質が外膜を通過する際には外膜蛋白質の介助が必要である。Sec分泌系を介するものはN末端にシグナルペプチドを持ち、Sec分泌系により蛋白質がない膜を通過していったんペリプラスムに輸送された後、外膜に挿入されたリング形成蛋白質を介して菌体外へ分泌される。またTat系というSec系とはことなる分泌系も知られている。

受容体への結合と細胞内への取り込み

外毒素が細胞になんらかの作用を発揮するには、まずは感受性細胞の膜に結合する必要がある。膜の毒素受容体には大きく分けてガングリオシドを結合部位にもつものと、蛋白質性のものがある。膜上の受容体または分子と結合した後、毒素分子は膜上に留まって膜に作用するか、細胞内に取り込まれて細胞内の標的分子に到達する。膜にとどまる毒素には膜にチャネルを形成する毒素や膜の酵素に作用する毒素が知られている。細胞内に取り込まれる毒素の、細胞内に取り込まれる機序は受容体介在性エンドサイトーシスが最も多い。その場合。エンドソーム内の低pH化またはリソソームの融合ののち、活性毒素成分が細胞質内に放出され標的分子に到達する。


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