国璽
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満洲帝国の国璽
満洲帝国(満洲国)の国璽は、縦横が10cm、高さ9cmの少し緑がかった白玉製で、「滿洲帝國之寶(満洲帝国之宝)」と刻されている。国璽の背には竜の彫刻があり、持ち易いように紐が通してある。御璽・国璽を使用することを「用璽」または「用宝」と称した[27]。
満洲国での運用
御璽及び国璽は、帝制実施に伴って新設された満洲国尚書府が尚蔵し、詔書・勅書・その他の文書の用璽に関する事務を掌った(尚書府官制(康徳元年帝室令第1号)第1條)。なお、帝制初期は満洲国皇帝の溥儀自身が手元に保管して下げ渡さず、用璽も尚書府に代わって内廷(満洲国皇宮内の皇帝の私的空間)の使用人が担当していたが、御璽と国璽を押し間違えたのを機会に、尚書府秘書官長が用宝(用璽)は尚書府秘書官に任せられたいと奏上して許され、以後は秘書官の一人がその都度内廷へ伺候して用璽を担当した。しかし、勲章が一度に何千人にも下賜されるようになると、大量の叙勲状(勲記)に国璽を押す必要があり、尚書府秘書官が内廷内の皇帝御居間に詰め切りとなる事態が起こったため、再度奏請を行い、毎朝、両璽(御璽及び国璽)の下げ渡しを受けて尚書府大臣室に保管し、夕方に内廷へ戻す運用に改めた。また、皇帝が地方へ出かける時は、尚書府秘書官の一人が、皮製の箱に納められた御璽・国璽を黄色い風呂敷に包んで首にかけてお供をした[28]。
満洲国での法制
満洲国では、公文程式令(康徳元年3月1日勅令第2号)、勲位及勲章ニ関スル件(康徳元年4月19日勅令第27号)に、国璽を押す場合が明文規定されていた。
公文程式令によれば、国書その他の外交上の親書、条約批准書、全権委任令、外国派遣官吏委任令、名誉領事委任令、外国領事認可状には親書の後、国璽を押すとされた(「公文程式令」第10條)。また、大勲位及び勲二等以上の勲位の勲記には親書の後、国璽を押し、勲三位以下の勲位の勲記には国璽のみを押すとされた(「勲位及勲章ニ関スル件」第4條)。
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満洲帝国国璽
(満洲帝国之宝)
注釈
出典
- ^ 村上重良「御璽・国璽」『皇室辞典』、50頁
- ^ The Privy Seal and State Seal、The Imperial Household Agency(宮内庁)
- ^ “幕末将軍家の銀印見つかる 国家元首の意思示す”. 日本経済新聞 (2019年12月12日). 2018年8月20日閲覧。
- ^ 新出資料初公開のお知らせ 銀印「経文緯武」、德川記念財団、2018年8月
- ^ 奈良勝司「徳川政権と万国対峙」『講座 明治維新』第2巻、有志社、2011年、pp.148-149。
- ^ 「天皇御璽ノ印影ヲ彫刻ス」『太政類典第一編 第四十巻』
- ^ a b 「維新後印璽之制」『図書寮記録. 上編 巻二』
- ^ a b c 「国璽御璽ヲ鋳造ス」『太政類典第二編 第四十二巻』
- ^ 「御国璽ヲ彫刻ス」『太政類典第一編 第四十一巻』
- ^ 大勲位菊花章頸飾・同勲記、国立公文書館
- ^ 勲記の例:2020年春の叙勲を受章した元場俊雄元学長に勲記と勲章を伝達しました、大阪電気通信大学、2020年9月17日
- ^ 褒状の例:「公益財団法人全国防犯協会連合会への支援(寄付)に対して、紺綬褒状が授与されました。」、日本遊技機工業組合、2015年12月9日
- ^ a b c d 國璽(中国語)、中華民国総統府
- ^ a b 大韓民国国璽1号はいったいどこに、東亜日報、2005年10月29日
- ^ 政府、「行方不明の国璽1号」に懸賞金、東亜日報、2005年11月28日
- ^ a b 政府樹立50周年で国璽新調、民団新聞、1999年2月3日
- ^ a b 第三代國璽被國家記錄院決定永久保(中国語)、聯合ニュース、2008年3月23日
- ^ 「ひび入った」国璽、新しく作る、中央日報、2005年9月22日
- ^ 第3代国璽、レーザーで溶接して復元、東亜日報、2010年11月20日
- ^ 第4代国璽と国璽儀装品がついにその姿を、駐日本国大韓民国大使館、2008年1月30日
- ^ 国璽製作疑惑と政官界への金印鑑提供、警察が捜査に着手、東亜日報、2010年8月21日
- ^ 国璽ロビー疑惑:閔弘圭氏「伝統技法は知らない」「うそをついて申し訳ない」 - ウェイバックマシン(2010年9月3日アーカイブ分)、朝鮮日報、2010年9月2日
- ^ 「ミン・ホンギュ容疑者、国璽に自分の名前を刻んでいた」、中央日報、2010年10月5日
- ^ 国璽ロビー疑惑:閔容疑者、取っ手に自分の名前を刻む(2015年7月14日時点のアーカイブ)、朝鮮日報、2010年10月15日
- ^ これが韓国の第5代国璽、中央日報、2011年10月5日
- ^ 新しい国璽が完成、KBS WORLD Radio、2011年10月6日
- ^ 『青い焔―満洲帝国滅亡記』、148頁
- ^ 『青い焔―満洲帝国滅亡記』、149-150頁。なお、黄色は満洲国皇帝が使用する色とされる。
- ^ a b “中华人民共和国中央人民政府之印”印章、中国国家博物館
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