仮面ライダーW 概要

仮面ライダーW

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 21:53 UTC 版)

概要

平成仮面ライダーシリーズ第11作で、前作『仮面ライダーディケイド』の開始とともに始まった平成ライダー10周年プロジェクトの『超・電王&ディケイド』(春の陣)、『ディケイド オールライダー対大ショッカー』(夏の陣)に続く第3弾・秋の陣として位置づけられている。『ディケイド』が平成仮面ライダーシリーズの約10年を総括する作品だったのに対し、本作品は「“次の10年”に向けた、新たなるシリーズの第1作」をコンセプトに制作されている[1]

特徴

シリーズ初となる2人で1人の仮面ライダーが本作品の特徴で、主役の仮面ライダーWは左翔太郎とフィリップが同時に変身ベルトを装着することで1人のライダーに変身するほか、2人を演じる桐山漣菅田将暉は、オープニングクレジットでは横並びで表示される。これについて、東映プロデューサーの塚田英明はインタビューで「2人で1人」という設定は、探偵もの・ハードボイルドものにつきものの「相棒」という存在から発案したと語っている[注釈 3]。ここから「ハードボイルドもの」[注釈 4]という世界観が派生し、主人公は「私立探偵」「相棒」に設定され、作劇にも探偵ものの要素が多く含まれており[注釈 5]、特に過去に東映が制作したテレビドラマ『探偵物語[注釈 6]の設定[注釈 7]が反映されている。また、主人公が事務所で使うデスクには、『探偵物語』で同作品の主人公が使っていた東映の倉庫にあった机[3]が流用されている[5]。ハードボイルド指向だけに偏らず、近年の平成仮面ライダーシリーズでは恒例となっているコメディーの要素も『仮面ライダー電王』と同様に多く取り入れられており、コメディーを物語の核心に発展させている演出も多い。従来同様、大河ドラマ性を取り入れつつ、単発系のルールであった「始まりは依頼人の訪問で、終わりは報告書を書く」「前後編の読み切り」を入れており[3]、園咲家などの場面を除いて翔太郎の目に触れないところはなるべく少なくし、翔太郎の一人称でやることとなった[6]

Wのデザインは昭和仮面ライダーシリーズを意識したデザインとなっており、楕円の複眼に触角といった昭和ライダーを彷彿させるシンプルなシルエットのマスクや、仮面ライダーZXまでの昭和ライダー共通の特徴であったマフラーが復活している。Wの基本形態であるサイクロンジョーカーは、メタリックグリーンの右半身は仮面ライダー新1号、黒色の左半身は仮面ライダーBLACKを意識した配色が設定されており、Wのデザイン全体は原点に戻ることを念頭に置いて仮面ライダー自体がモチーフになっている。変身ベルト(ダブルドライバー)の左右それぞれ1本ずつの計2本同時に装填されている変身アイテム(ガイアメモリ)を、状況に合わせて差し替えることで右半身と左半身の色が違う多種多様な組み合わせとなり、それぞれの姿でまったく異なった武器や能力を発揮する。

過去作品では主に実際の日本を舞台にしてきたが、本作品では架空の都市風都ふうとを舞台としており、さらに虚構的な世界となっている。それによって主人公たちの活動の場が一都市に絞られることになり、主人公たちの人物設定にも「街」が強く関連している。また、「仮面ライダー」の呼称は、戦いを目撃した住民たちが呼び始めたものであり、それを受けて主人公たちが「仮面ライダー」を名乗るようになったという設定である。

平成作品の世界観は作品ごとに異なっているが、Wは放送終了後もオリジナルキャストで劇場版作品に多く客演しており、恒例となっている『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE』以降にもたびたび出演している。

脚本の三条やプロデューサーの塚田によると、本作品の企画自体は2008年放送の前々作『キバ』の時からあり、同作品の後番組という形で今までどおりの1月下旬放送開始・翌年1月中旬終了で放送する案もあったと、両者のインタビューで語られている。また、企画自体は『ディケイド』よりも本作品の方が先に完成していたが、後述の放送期間の移行を理由に後から企画が上がった『ディケイド』が先に放送された[6][7]

制作やマスター納品の都合上、ロケは全話を通して関東地方で行うのが常であるが、本作品では関西地方で行った話も制作されており、時代劇の撮影で知られる東映太秦映画村を仮面ライダーが初めてバイクで走った作品にもなった[出典 1]

放送フォーマット

テレビ朝日・ADKによる日曜朝8時台前半の各放送枠では、長年にわたって1月末 - 3月上旬開始・翌年1月 - 3月に終了という4クール放送が定着していたが、本作品では前作『ディケイド』を2クール半の全31話で終了させることにより、9月から開始へと移行した。これは、本シリーズと同じく2月に放送開始していた「スーパー戦隊シリーズ」とストーリーや玩具のピークをずらすことで、新しいビジネスチャンスを探るための方策である[11]とされている。


注釈

  1. ^ タイトル・ロゴには「仮面ライダー」「ダブル」「W」「KAMEN RIDER DOUBLE」が併記されている。本作品から「仮面ライダー」の英文表記が「MASKED RIDER」から「KAMEN RIDER」に変更された。なお、正確にはダブル(double)の意味をWと表記するのは日本独特の誤表記である。
  2. ^ 各回の次回予告でも使用。最終回の予告ではこれを捩る形で「これで終わりだ」とナレーションされている。
  3. ^ この「相棒」という案が浮かぶまではフィリップという存在は無く、当初は1人で変身する主人公(後の翔太郎に相当するが、当時はこの主人公をフィリップと呼んでいた)と彼の心の支えである荘吉による「2人で1人」という考えであったという[2]
  4. ^ ハードな人生を背負ったフィリップは、クールな存在であるため、主人公がハードボイルドであると物語がうまく進まず、フィリップとの対比にならないため、人間味を出すためにWのデザインから「ハーフボイルド」という造語で表現することとなった[3]
  5. ^ 石森プロ早瀬マサトは、フィリップを『ジュン』のジュン、翔太郎を『多羅尾伴内』の2代目・紙袋順平として描いている[4]
  6. ^ 本作品が放送された2009年は、同作品の放送からちょうど30周年にあたる。
  7. ^ 「主人公の服装やハードボイルドな嗜好」や「肩こり持ちのベテランと探偵に反発する若手の刑事コンビ」など。
  8. ^ デザインモチーフは、石ノ森章太郎の漫画『S・Pハーレー』の頭が彗星になったキャラクター[12]
  9. ^ 仮面ライダーフォーゼ』第2話でこの様子を伝える「風都日報」の記事が登場している。
  10. ^ 巨大なナルトは、石ノ森萬画館がある宮城県石巻市の蒲鉾屋「白謙」製のもの[15]
  11. ^ たとえば、本棚の中でのクレイドール・ドーパントへの変身など。
  12. ^ ただし「園咲若菜」の本には辿り着けたためミュージアムと関係ない「表向きの情報」は入手できる模様。
  13. ^ 本棚の移動が停止、そのまま全ての本棚が砕ける演出がされる。
  14. ^ 『MOVIE大戦CORE』より、1999年11月に最初のドーパント事件が発生したことが判明する。
  15. ^ 劇中に登場した物の大半は大文字であり小文字は僅かだが、関連書籍に収録されている未登場のメモリには小文字の物が多数存在する[26]
  16. ^ バグなどの異常が発生した場合は、ブラックアウトする[27]
  17. ^ 書籍によっては「生体コネクタガン」と記述している[28]
  18. ^ 実際の手術用縫合器を元にデザインされ、元となった手術用縫合器を改造して作られた[15][28]
  19. ^ 戦闘力以上に、より特異性の高い能力・連携によって推理・戦闘の両面で複雑さを高めるケースが多く見られた。こうした性質から、Wの上位フォームであるエクストリームも単純な戦闘能力の強化以上に「敵の能力の解析・無効化」を最大の特徴としている。
  20. ^ そのため、「前半で翔太郎たちがドーパントであると着目していた人物は無実で、正体はその周辺の(特に異性の)別人だった」という演出が少なくない。女性が犯人の場合も多く、逆に声を変えることで裏をかくエピソードが存在し、東映の作品公式サイトでも「風都は悪女が多い」と評されている。
  21. ^ 直接触れずに物を操れる、目から光線を放てるようになる、など。
  22. ^ 『MOVIE大戦CORE』ディレクターズカット版でスパイダーメモリ使用者が死亡するなど異なる描写があるが、これはメモリが初期型だからと明言されている[要出典]
  23. ^ 『Zを継ぐ者』では、組織の中核に近いメモリほど機密保持のために記憶の破壊性が強くプログラムされているらしく、粗末な護身用のメモリには破壊されると自爆する機能が付いているものもあると説明されている。
  24. ^ クレイドールはベルトのフィルター機能を低下させることで、パワーアップしたこともある。
  25. ^ テラー・ドーパントのドライバーのみ、ドーパント本体から伸びる触手のようなものと球体が一体化している。
  26. ^ 第43・44話の老人化した状態の翔太郎も桐山が声を充てている[35]
  27. ^ 第18話オープニングでの表記は「謎の男」。
  28. ^ 第24話でフィリップが若菜の身代わりになったシーンでは、蹴り上げる際に菅田が足が上がらなかったことから、その場面のみ飛鳥が吹き替えを担当している[36]
  29. ^ オープニングのクレジット表記は第3話では「フィリップ・幼少」、第14話では「幼少期の若菜の弟」。
  30. ^ 第14話まではノンクレジット。
  31. ^ 第20話でのクレジット表記は「竜の父」。
  32. ^ 第20話でのクレジット表記は「竜の母」。
  33. ^ 第20話でのクレジット表記は「竜の妹」。
  34. ^ オープニングでは役名未表記。
  35. ^ ノンクレジット。
  36. ^ a b 第29話はノンクレジット。
  37. ^ 井坂深紅郎を演じた檀臣幸は夫であり、夫婦で出演した。ただし、共演シーンはない。
  38. ^ 当初、三条はトイアドバイザーとしての参加だったが、「ハードボイルド探偵」という要素が難しく、何度も何度も暗礁に乗り上げたことから塚田の提案で脚本として参加することとなった[19]
  39. ^ 第9話以降はほぼ三条と二人で交互に脚本を担当している。
  40. ^ a b 劇中でも彼女らはこれらの曲でCDデビューしている(ただしジャケットは異なっている)。
  41. ^ 脚本の三条は、当初は全50話ほどと見込んでいたため、後半に向けての内容の整合とサブタイトルにアルファベットをつけることが難しかったという[3]
  42. ^ 11月1日は第41回全日本大学駅伝中継のため休止。
  43. ^ 2009年12月27日は『小学生クラス対抗30人31脚全国大会 2009年完全版スペシャル』放送のため休止。
  44. ^ a b このエピソードのオープニングでは、劇中の歌番組のスタジオでの上木、TAKUYAによるライブバージョンの映像が用意され、サビを中心に23話では前半、24話では後半がそれに差し換えられた。
  45. ^ 6月13日は『2010 FIFAワールドカップ ハイライト』放送のため休止。
  46. ^ a b ただしDVD・BD、東映チャンネルでの再放送、YouTubeなどのネット配信ではオープニングは通常版に差し替えられ、提供画面は省略されている。
  47. ^ アニメ版ではタイトルロゴに「FUUTO PI」という欧文表記が併記される。
  48. ^ 当初は、フィリップ消滅から復活までの「空白の1年」を描く予定だったが、主人公の翔太郎が精神的に落ちており、テンションが低いままの一定のテンションで描き続けることには読み切りでは可能だが、連載では面白くないため、続編を描くものとなった[72]
  49. ^ 「tに気をつけろ」など。サブタイトルに含まれるアルファベットについては、テレビシリーズと小説版で大文字を用いていたのに対して、同作品では小文字が用いられている。
  50. ^ フィリップの頭髪も、サイクロンメモリを意識した緑色に変更されている。

出典






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