代謝 主な生化学物質

代謝

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主な生化学物質

脂質であるトリアシルグリセロール分子の構造を示す。トリグリセリドとも呼ばれ、グリセロール分子と3つの脂肪酸分子が結合した構造をしている。
人体におけるさまざまな代謝経路を包括的に表現した代謝ネットワーク図。ヒトの代謝を維持するために起こるさまざまな化学反応の相互関係と相互作用を描いている。

動物、植物、微生物の構成要素は、主にアミノ酸炭水化物核酸脂質(しばしば脂肪と呼ばれる)という4種類の基本的な分子から作られている。これらの分子は生命維持に不可欠であるため、代謝反応は、細胞や組織を形成するためにそれらを合成するか、消化によって分解してエネルギーとして利用することに集中している。また、これらの生化学物質が結合して、デオキシリボ核酸(DNA)やタンパク質など、生命維持に不可欠な高分子を形成する[8]

分子の種類 モノマー型の名称 ポリマー型の名称 ポリマー型の例
アミノ酸 アミノ酸 タンパク質(ポリペプチドでできている) 繊維状タンパク質球状タンパク質
炭水化物 単糖 多糖 デンプングリコーゲンセルロース
核酸 ヌクレオチド ポリヌクレオチド デオキシリボ核酸(DNA)リボ核酸(RNA)

アミノ酸とタンパク質

タンパク質は、アミノ酸が直鎖状に配列し、ペプチド結合で結合したものである。多くのタンパク質は、代謝における化学反応の触媒となる酵素である。また、細胞の形状を維持する足場となる細胞骨格を形成するなど、構造的あるいは機械的な機能を持つタンパク質もある[9]。タンパク質は、細胞シグナル伝達免疫応答細胞接着、膜を介した能動輸送、および細胞周期の調節など、さまざまな重要な役割を担っている[10]。また、アミノ酸は、細胞のエネルギー代謝にも寄与しており、特にグルコースなどの主要なエネルギー源が不足したときや、細胞が代謝ストレスを受けたときに[11]クエン酸回路(トリカルボン酸回路)[12]に炭素源を供給する役割もある。

脂質

脂質は、生化学物質の中でもっとも多様な一群である。その主な用途は、細胞膜のような内外の生体膜の一部として構造を作りだすほか、その化学エネルギーを利用することもできる[10]。多くの場合、非極性の長い炭化水素鎖と、小さな酸素を含む極性領域を持つ脂肪酸の重合体である[要出典]。一般的に脂質は、疎水性または両親媒性の生体分子と定義され、エタノールベンゼンクロロホルムなどの有機溶媒に可溶である[13]。脂質は、脂肪酸グリセロールを含む大きな化合物群で、グリセロール分子が3つの脂肪酸にエステル結合したものはトリアシルグリセリドと呼ばれる[14]。この基本構造にはいくつかの変種があり、スフィンゴミエリンスフィンゴシンなどの骨格鎖が、リン脂質にはリン酸などの親水性基が存在する。また、ステロールなどのステロイド類も脂質の主要な分類の一つである[15]

炭水化物

単糖であるグルコースは、直鎖状と環状という2種類の形態で存在することができる。どちらの形態のグルコースも代謝において重要な役割を担っている。

炭水化物(糖類とも呼ぶ)は、複数のヒドロキシ基(水酸基)が結合したアルデヒドまたはケトンからなる生体分子で、直鎖状または環状の形態を取ることがある。炭水化物はもっとも豊富に存在する生体分子であり、エネルギーの貯蔵や輸送や(デンプングリコーゲン)、構造部品としてなど(植物のセルロースや動物のキチン)、さまざまな役割を担っている[10]。炭水化物の基本的な構成単位は単糖と呼ばれ、ガラクトースフルクトース、そしてもっとも重要なグルコースなどがある。単糖は互いに結合して多糖と呼ばれるより大きな炭水化物分子を形成することができ、その結合様式はほぼ無限に存在する[16]

ヌクレオチド

デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)は共に核酸の一種で、いずれもヌクレオチドの重合体である。各ヌクレオチドは、糖基(リボースまたはデオキシリボース)に窒素塩基とリン酸基が結合したものである。核酸は、遺伝情報の保存や利用、および転写タンパク質の生合成などの過程を通した解釈に大きな役割を果たしている[10]。これらの情報は、DNA修復機構によって保護され、DNA複製によって受け継がれる。HIVなどの多くのウイルスRNAゲノムを持ち、逆転写を通じてそのRNAゲノムからDNA鋳型を生成している[17]スプライセオソームリボソームなどのリボザイム中のRNAは酵素としても働き、化学反応を触媒することができる。個々のヌクレオシドは、リボース糖に核酸塩基が結合して形成され、これらの塩基はプリンまたはピリミジンに分類される含窒素複素環である。また、ヌクレオチドは代謝基転移反応において補酵素としても働く[18]

補酵素

補酵素アセチルCoAの分子構造を示す。左端の硫黄原子(S)に転移性のアセチル基が結合している。

代謝は膨大な数の化学反応から構成されているが、そのほとんどは、分子内の官能基や原子間の結合の移動させるという、いくつかの基本的な種類の反応に分類される[19]。この共通の化学的反応により、細胞は少数の代謝中間体の集まりを使って、異なる反応間で化学基を移動させることができる[18]。これらの基転移中間体は補酵素と呼ばれる。基転移反応はそれぞれの種類ごとに特定の補酵素によって行われ、補酵素は、それを生成する一連の酵素の基質となるとともに、それを消費する一連の酵素の基質となる。このように、補酵素は絶えず生産、消費、そして再利用されている[20]

アデノシン三リン酸(ATP)は中心的な補酵素で、細胞の普遍的なエネルギー通貨として機能する。このヌクレオチドは、異なる化学反応間で化学エネルギーを伝達するために使用される。細胞内に存在するATPは微量であるが、常に再生されているため、人体は1日に自分の体重と同程度のATPを使うことができる[20]。ATPは異化作用同化作用の橋渡しをする。異化作用は分子を分解し、同化作用は分子を再構築する。異化反応でATPが生産され、同化反応ではATPが消費される。さらに、ATPはリン酸化反応におけるリン酸基の担体としても機能する[21]

ビタミンは、微量で必須とされる有機化合物で、細胞内では作ることができない。ヒトの栄養では、ほとんどのビタミンは修飾された後、補酵素として作用する。たとえば、水溶性ビタミンはすべて、細胞内で使用される際にリン酸化されるかヌクレオチドに結合する[22]。ビタミンB3ナイアシン)の誘導体であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)は、水素受容体として機能する重要な補酵素である。数百種類のデヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)が基質から電子を奪い、NAD+をNADHに還元する。この還元型補酵素は、水素原子を基質へ移動する必要のある細胞内の還元酵素の基質となる[23]。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドは、細胞内でNADHとNADPHという2つの関連した形態で存在し、NAD+/NADHは異化反応でより重要であり、NADP+/NADPHは同化反応で使用される[24]

赤血球に含まれるタンパク質である鉄含有ヘモグロビンの構造を示す図で、サブユニットは赤と青で色分けされ、鉄を含むヘム基は緑で示されている。PDB: 1GZX

ミネラルと補因子

代謝はさまざまな無機元素に大きく依存しており、ナトリウムカリウムのように豊富に含まれるものもあれば、少量で機能するものもある。ヒトの体重の約99%は、炭素窒素カルシウムナトリウム塩素、カリウム、水素リン酸素硫黄などの元素で構成されている。これらの元素のうち、炭素と窒素の大部分は有機化合物(タンパク質、脂質、炭水化物)に含まれており、酸素と水素の大部分は水として存在する[25]

豊富な無機元素は電解質としてイオンとなり、さまざまな身体機能を維持するために機能している。もっとも重要なイオンには、ナトリウムカリウムカルシウムマグネシウム塩化物リン酸塩、および有機イオンである重炭酸塩が含まれる。細胞膜を隔てたイオン勾配を正確に維持することにより、浸透圧pHが保たれる[26]神経筋肉活動電位は、細胞外液細胞内液の電解質交換によって生じるため、イオンはこれらの組織の機能にも重要である[27]。電解質は、細胞膜に存在するイオンチャネルというタンパク質を通じて細胞に出入りする。たとえば、筋肉の収縮は、細胞膜や横行小管(T細管)にあるイオンチャネルを介したカルシウム、ナトリウム、カリウムの移動に依存している[28]

遷移金属は通常、生体内に微量元素として存在し、亜鉛がもっとも多く含まれている[29]。これらの金属は、タンパク質上の特定の部位に強固に結合し、金属補因子として機能する。酵素補因子は、酵素の触媒作用の役割を果たし、触媒作用中に一時的に変化することはあっても、その後は必ず元の状態に戻る。生物は、特定の輸送担体(トランスポーター)を通じて金属微量栄養素を生体内に取り込む。これらの栄養素は、使用しないときにはフェリチンメタロチオネインなどの貯蔵タンパク質に結合している[30][31]


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