ヴィーンの放射法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/28 04:26 UTC 版)
内容
ヴィーンの放射法則によれば、熱力学温度 T の熱平衡にある黒体の輻射による波長 λ で表した放射発散度のスペクトルは
で与えられる[2]。ここで係数 c1,c2 はそれぞれ第一放射定数、第二放射定数と呼ばれる。 波長 λ と周波数 ν の関係 ν=c/λ(c は光速度)と
を用いれば、周波数 ν で表したスペクトルは
となる[3]。
分光放射輝度で表せば、波長で表したスペクトルは
となり、周波数で表したスペクトルは
となる。
性質
ヴィーンの放射法則による分光発散度は
の形をしている。 長波長(低周波数)領域におけるスペクトルの精度の高い近似を与える理論式として、レイリー卿によるレイリー・ジーンズの法則が用いられる[2][3]。 レイリーの公式は f(x)=αx の場合として含まれている。
分光発散度を波長で偏微分すると
となる。分光発散度を最大となる波長 λmax は関数 xf'(x) − 5f(x) の適当な零点 x=b によって
と表される。 ヴィーンの公式では b=c2/5 となってヴィーンの変位則を説明することができる。 しかし、レイリーの公式では x>0 において零点を持たず、ヴィーンの変位則を説明できない。
分光発散度を波長 λ で積分した放射発散度は
となる。 ヴィーンの公式では積分が収束し、シュテファン=ボルツマンの法則と整合する。 しかし、レイリーの公式では積分が収束せず、放射発散度が無限大になってしまう。
長波長の極限 λ→∞ ではヴィーンの公式では
となる。長波長領域で精度の高い近似であるレイリーの公式では R∼1/λ4 であり、これと整合しない。ヴィーンの公式は長波長領域では実験を正しく記述できていない。
- ^ Mehra and Rechenberg "The Historical Development of Quantum Theory"
- ^ a b c d Bowley and Sánchez "Introductory Statistical Mechanics"
- ^ a b c d Rybicki and Lightman "Radiative Processes in Astrophysics"
- ^ “first radiation constant”. NIST. 2022年3月6日閲覧。
- ^ “first radiation constant for spectral radiance”. NIST. 2022年3月6日閲覧。
- ^ “second radiation constant”. NIST. 2022年3月6日閲覧。
- 1 ヴィーンの放射法則とは
- 2 ヴィーンの放射法則の概要
- 3 プランクによる修正
- 4 参考文献
- 5 関連項目
固有名詞の分類
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