ローマの祭り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 13:10 UTC 版)
ブッキナについて
ブッキナ[注釈 1]は古代ローマ帝国で競技や戦いの場で兵士を鼓舞するために吹き鳴らされていた金管楽器で、まだ音を変えるヴァルブ装置などはついていないシンプルな楽器であった。
古代の金管楽器を表現する手法として、「チルチェンセス」のブッキナパートは下一点変ろ音(英:B♭1、独:B1)上の自然倍音のみで構成されている。つまり、金管楽器が唇の調節だけで出る音のみで書かれており、一般的なB♭管のトロンボーン、ホルン、バストランペット等が同じ音高の自然倍音をもっている。また、「十月祭」では冒頭のホルン・トランペットパートのファンファーレ、中間の1番ホルンソロにこれと同じ手法が用いられており、下一点へ音あるいは下一点ほ音上の自然倍音が用いられている。こちらも古い時代の金管楽器を表現することが目的ではないかと思われる。
※補足「十月祭」のヘ長調の旋律に変ロ音が使われているが、下一点へ音上の第11倍音はロ音であり厳密に自然倍音が使われているとは言えない。当時、ヴァルブのない金管楽器で自然倍音以外の音を出す奏法として、ホルンはベルに手を出し入れする、トランペットは楽器に音孔を開けそれを開閉すること等の奏法が行われており、ピッチを調整することが可能であった。そのため、バロック時代の作曲家の金管楽器の楽譜には正確な第11倍音であるF♯ではなく、それよりも半音低いFが使われることが見られる。他にも、ルネサンス時代の金管楽器としてツィンクという音孔をもつ楽器が使われている。ルネサンス時代の金管楽器を表現しているといえる。
古代ローマの時代から二千年近く経ったレスピーギの時代に、ブッキナが現役の楽器として使われていた訳ではない。しかし、同時代に自らの国を神聖ローマ帝国に続く第三帝国と名乗っていたナチス・ドイツによって、ブッキナを含む古代ローマの楽器が復元されていたのである。残念ながら、イタリアでも同様の動きがあったとか、ドイツから楽器を借用したという記録などは残っていないが、少なくとも「ローマの祭り」では、具体的な楽器名としてブッキナを指定していることは紛れもない事実なので、何らかの復元楽器か、その名を冠した特別注文の楽器を使用した可能性は十分に考えられる。
脚注
出典
固有名詞の分類
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