ルーテル教会 芸術・文化

ルーテル教会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/15 00:00 UTC 版)

芸術・文化

パッヘルベル、J.S.バッハ、テレマン、メンデルスゾーンなど著名な音楽家が所属していたことで有名である。バッハはルーテル教会が生み出した偉大な音楽家である[4]。また、源流に当たるルターは聖歌隊を経験し、賛美歌を作詞作曲した音楽家でもあった。バッハの教会音楽も、ルター以来の会衆賛美歌の伝統が中心に据えられている[4]

宗教改革の旗手の中にはツヴィングリのように典礼音楽を否定したり重視しなかった人もいたが、ルターは音楽を神の賜物として高く評価した。かれは、聖歌隊を主な歌い手とするラテン語聖歌に代わって、会衆が礼拝音楽に直接参加することを唱え、一般信徒も歌うことができるドイツ語の讃美歌を書いた。とりわけ詩篇46を翻案して作詞作曲した「神はわがやぐら」は有名である。以後、ドイツ語の讃美歌(コラール)が多数創作されて教会堂で歌われるようになり、ルター派教会音楽はバッハが活躍した18世紀前半まで隆盛を誇った。その後一時衰退したが、19世紀から20世紀にかけて徐々に復興した[5]

アルブレヒト・デューラールーカス・クラナッハカスパー・ダーヴィト・フリードリヒエゴン・シーレらの著名な画家たちもルター派に属していた。多くの思想家も輩出しており、ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルセーレン・キェルケゴールフリードリヒ・ニーチェが代表的存在である。ルター派牧師の子であったフリードリヒ・ニーチェはキリスト教批判を続けたが、教会を離脱することも破門されることもなく、葬儀はルター派教会で盛大に行われている。

日本のルーテル教会

日本におけるルター派の伝道は1892年、アメリカの宣教師によって始まった。後に北欧系、ドイツ系が加わり、第二次世界大戦中の日本基督教団時代を経て、それぞれに教団を構成している。

4団体

日本における主な教団と宣教母体は以下の通り。この4団体は相互に連絡組織を持ち、提携関係にある。

日本福音ルーテル教会
アメリカ福音ルーテル教会などに由来。
ルーテル世界連盟に当初より加盟。日本キリスト教協議会にも加盟。日本ルーテル教団と共同でルーテル学院大学日本ルーテル神学校を運営。独自に九州学院中学校・高等学校ルーテル学院中学校・高等学校九州ルーテル学院大学を運営。
東京ルーテルセンター教会
日本ルーテル教団
アメリカのルーテル・ミズーリ・シノッドに由来。
日本福音ルーテル教会と共同でルーテル学院大学・日本ルーテル神学校を運営。独自に浦和ルーテル学院および聖望学園を運営。
西日本福音ルーテル教会
ノルウェーフィンランドのルーテル教会などに由来。
千葉、滋賀、大阪、兵庫、岡山、鳥取、広島、島根、徳島、香川の各府県に合計43箇所の地方教会を持つ。ノルウェー・ルーテル伝道会 (NLM) 、フィンランド・ルーテル海外宣教会 (FLOM) 、フィンランド・ルーテル宣教会 (FLM) などと宣教協力関係にある。近畿福音ルーテル教会などと合同で神戸ルーテル神学校(ATA認定校)、単独で神戸ルーテル聖書学院を経営。ラジオで宗教番組「心に光を」(旧「ルーテルアワー」)を放送。
近畿福音ルーテル教会
ノルウェー伝道会、ノルウェー・ルーテル自由教会に由来。

福音派

日本ルーテル同胞教団
米国ルーテル同胞教会に由来。
ルーテル同胞聖書神学校を運営。日本福音同盟に加盟。
フェローシップ・ディコンリー福音教団
プロテスタントのルーテル系の15教会による団体。

保守派

ルーテル福音キリスト教会
茨城県水戸市に本部を置く、プロテスタントのルーテル系の団体。

ドイツのルター派教会

ドイツにある全てのルター派教会を組織の上で包括しているのは、ドイツ福音主義教会(EKD)である。EKDはルター派、改革派、合同派の信仰告白を持つ20の州教会の共同体である。したがって、そこには改革派教会も含まれる。しかしながら、ドイツにある全てのルター派教会を包括しているのはEKDだけである。

EKD内には、ルター派州教会の属するドイツ合同福音ルター派教会と合同派州教会の属する福音主義合同教会がある。さらに、どちらの組織にも加盟していないルター派州教会が2つある。ドイツ合同福音ルター派教会は多くのルター派州教会を組織しているが、全てのルター派州教会を包括しているわけではない。

また、ルター派と改革派が並存している福音主義合同教会に加盟している州教会にも多くのルター派教会が含まれているが、これらのルター派教会はドイツ合同福音ルター派教会には加盟していない。福音主義合同教会に加盟している州教会においてルター派が9割以上を占めることも多く、ルター派の影響力は合同派州教会においても強い。この福音主義合同教会内のルター派を無視して、ドイツのルター派教会の全体像を語ることはできない。福音主義合同教会に属しているルター派教会は、常にルター派としてのアイデンティティを意識することが求められており、神学的立場、礼拝様式においても、ドイツ合同福音ルター派教会に属している州教会よりもルター派らしさを保持している場合もある。改革派の州教会に分類されているリッペ州教会においても、ルター派が少数派として存在している。ドイツ合同福音ルター派教会に組織上入ることのできない合同教会内のルター派教会にとって、全てのルター派教会が属するEKDの存在は大きい。EKDにおいて、ルター派(ルター派州教会と合同派内ルター派)が圧倒的多数を占めており、EKD常議員会議長にはルター派か合同教会の人間が選ばれている。

2009年1月1日、キルヘンプロヴィンツ=ザクセン福音主義教会とテューリンゲン福音ルター派教会の合同によって、中部ドイツ福音主義教会が設立された。テューリンゲン福音ルター派教会はドイツ合同福音ルター派教会に加盟していたルター派州教会であり、キルヘンプロヴィンツ=ザクセン福音主義教会は福音主義合同教会に加盟していた合同派州教会であった。この二つの性格の異なる州教会が一つに統合されたが、加盟組織との関係はそのまま維持されている。したがって、この中部ドイツ福音主義教会はルター派州教会であると同時に、合同派州教会の一員として存在していくのである(3304のルター派教会共同体と5の改革派教会共同体)。ルター派と改革派の並存は、従来、EKD、もしくは合同派州教会での組織状況であったが、ルター派州教会においても改革派との並存という状況を迎えたのである。ルター派州教会の中部ドイツ福音教会はEKDに類似した組織形態を持つに至った。2012年、合同派州教会のポンメルン福音主義教会と、ルター派州教会のメクレンブルク福音ルター派州教会、ノルトエルビエン福音ルター派教会の統合によって、北ドイツ福音ルター派教会が設立された。この新しいルター派州教会の教憲にはバルメン宣言信仰告白として含まれている。


  1. ^ 八木谷涼子 『なんでもわかるキリスト教大事典』p78 朝日新聞出版 ISBN 9784022617217
  2. ^ クピッシュ『ドイツ教会闘争への道』(雨宮栄一 訳、新教出版社、1967年)
  3. ^ Rezension der NZZ zu Jüngels Buch: Das Evangelium von der Rechtfertigung des Gottlosen als Zentrum des christlichen Glaubens. Eine theologische Studie in ökumenischer Absicht.
  4. ^ a b ルーテル教会とは?”. 日本福音ルーテル大森教会. 2015年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月17日閲覧。
  5. ^ 藤原一弘「コラール」「ルター派」『岩波 キリスト教辞典大貫隆・名取四郎・宮本久雄百瀬文晃 編、岩波書店、2002年、407-408頁、1204頁。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ルーテル教会」の関連用語

ルーテル教会のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ルーテル教会のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのルーテル教会 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS