ラン科 利用

ラン科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 15:36 UTC 版)

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栽培と品種改良

欧米では18世紀以降、熱帯性のランが多数持ち込まれ、鑑賞用として栽培されてきた。着生種はヘゴ板(木生シダ類の幹を切り出したもの)やミズゴケ類を使うなどの工夫がされた。さらに、より美しいものを求めて交配が行われた。ラン科では種間だけでなく属間でも雑種ができる例があり、多くの交配種が作られた。日本ではそれらを“洋ラン”と呼んでいる。現在では、それらは東南アジアなどでも栽培され、重要な産業となっている。これらは、栽培目的の他に、切り花としても売買される。

また、中国日本では、古くから何種かのランを珍重する伝統があり、それらは“東洋ラン”と呼ばれる。東洋ランの世界では、交配はほとんど行われず、栽培中に出現する、あるいは野外で発見される個体変異の中から特殊なものを選び出して命名し栽培することを基本にしていた。近年では東洋ランも交配育種の対象となっているが、野生採集個体を珍重する傾向が強く残っている。そのため人工交配個体や種間交雑種が「天然採取」として販売される事例がしばしばあり、時には第三者がそれに気づかぬまま増殖転売してしまうなどして品種混乱の原因となっている。

また、戦後には山野草の栽培がブームになり、野生ランもその対象になった。しかし、そのために野生ランの乱獲が進み、絶滅に瀕することになった種が多数ある。他方、洋ランの世界では現有品種の供給は十分に行われている。しかしながら、新たな品種を求める動きや野生のものを珍重する動きなどがあり、ラン科植物の乱獲は世界的に問題となっている。現在では野生ランの国際間移動は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(略称CITES、通称ワシントン条約)で規制されている。熱帯雨林の開発の進行で生息環境を失って絶滅したものも少なくないと思われる。

その他

バニラは香料の材料として栽培されている。他に、薬草として使われる例もある。


  1. ^ 小林義雄 著、相賀徹夫 編『万有百科大事典 19 植物』1972年。 
  2. ^ a b c d e f g h 沖田好弘 1982, p. 104.
  3. ^ a b 富山昌克 1992, p. 8.
  4. ^ 大場良一 2011, p. 9-10.
  5. ^ a b 沖田好弘 1982, p. 116.
  6. ^ 大和 政秀・谷亀 高広 2009 ラン科植物と菌類の共生. 日本菌学会会報 50: 21-42
  7. ^ a b c d e f 大場良一 2011, p. 8.
  8. ^ 沖田好弘 1982, p. 110.
  9. ^ 沖田好弘 1982, p. 103.
  10. ^ 寺井泰明『植物の和名・漢名と伝統文化』日本評論社、2016年、542頁。ISBN 9784535587014 牧野富太郎による「蘭は本来はフジバカマだった」説の紹介) / 牧野富太郎 1943年 『植物記』:新字新仮名 - 青空文庫
  11. ^ 精選版 日本国語大辞典『』 - コトバンク
  12. ^ a b c d 富山昌克 1992, p. 12.
  13. ^ a b 富山昌克 1992, p. 10.
  14. ^ a b c d 沖田好弘 1982, p. 105.
  15. ^ 大場良一 2011, p. 9.
  16. ^ 沖田好弘 1982, p. 108-109.
  17. ^ a b 沖田好弘 1982, p. 112.
  18. ^ 沖田好弘 1982, p. 113.
  19. ^ Yukawa et al.(2009)
  20. ^ 西村(1997)






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