ユーログループ 沿革

ユーログループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/20 15:30 UTC 版)

沿革

もともと「ユーログループ」という名称は正式なものではなく、口語的にそのように呼ばれるようになったものである。かつてはユーロを導入する欧州連合加盟国の数にあわせて Euro-XEuro-XI などとも呼ばれていた。このユーログループは、フランスの求めによって、ユーロ圏にかかわる案件についての調整や協議の場として設けられた[1]。1997年12月、欧州理事会はユーログループの設置を承認し、1998年6月4日、ルクセンブルクのゼニンゲン城でユーログループの初会合を開いた[2]

そもそもユーログループの議長は当期の欧州連合理事会議長国が担当し、当期の議長国がユーロ非導入国である場合には、ユーロ導入国である直後の議長国が務めることになっていた[2]。2004年に各財務相は議長を選任することを決め、2008年には財務相ではなく政府首脳らによる会合を開いている[3]

通貨同盟の発足以降、ユーログループの役割はユーロの経済ガバナンスに関して大きくなっていった。ユーログループが経済財政理事会の直前に開かれるということは、経済財政理事会におけるユーロ圏に関する決定をユーログループであらかじめ決めておくということを示すものである[4]。2009年、リスボン条約の発効によってユーログループとその議長が法定化された。

議長

イェルーン・ダイセルブルーム

ユーログループの議長は「ミスター・ユーロ」などとも呼ばれ、2005年からルクセンブルクの首相であるジャン=クロード・ユンケルが初の(半)常任議長を務めた[1]

2004年9月、ユーログループは任期を2年とする半常任の議長を置くことを決めた。そこでルクセンブルクの首相で当時は財務相も兼務していたユンケルを2005年1月1日から2006年12月31日までを任期とする初代議長に選出し、2006年9月にはユンケルの再任を決めている[5]。リスボン条約では議長の選出が法定化され、ユンケルはさらに任期を重ねることとなった[6]

以前は欧州議会の会議に「たまたま」出席していたにすぎなかった議長は、ユンケルの選任によってユーログループの強化につながっていった。常任化してから、議長は6か月ごとに欧州議会の経済通貨委員会に出席している[4]

2010年にユーログループ議長に再任されると、ユンケルはとくに経済政策の調整や発信など、ユーログループの活動範囲を広げる必要があると強く主張している。ユンケルは会合の準備にあたる4,5人の欧州連合理事会の職員からなるユーログループの事務局の設置を提案している。しかしながらフランススペインはこれらの構想に支持を表明しているものの、ドイツはユーログループの強化によって欧州中央銀行の独立性が低下しかねないとして難色を示している[7]

2013年1月、ユンケルは4期8年にわたる長期在任を終えて議長を退任し、後任にはオランダの財務大臣であるイェルーン・ダイセルブルームが就任した[8]

構成

ユーログループの会合にはユーロ圏各国の財務相のほかに、欧州中央銀行総裁、欧州委員会の経済・通貨問題担当委員、ユーログループ作業グループ議長が参加する。

国・機関 参加者 国・機関 参加者
 オーストリア ヨゼフ・プレル マルタ トーニオ・フェネク
ベルギー ディディエ・レンデルス オランダ ヤン・ケース・デ・ヤーガー
キプロス カリラオス・スタヴラキス ポルトガル フェルナンド・テイシェイラ・ドス・サントス
 エストニア ユルゲン・リギ スロバキア ヤーン・ポチャテク
 フィンランド ユルキ・カタイネン スロベニア フランツ・クリジャニチ
フランス クリスティーヌ・ラガルド スペイン エレナ・サルガド
ドイツ ヴォルフガング・ショイブレ 採決に加わらない参加者
ギリシャ ギオルゴス・パパコンスタンティヌ ユーログループ議長 イェルーン・ダイセルブルーム
アイルランド ブライアン・レニハン 中央銀行総裁 マリオ・ドラギ
イタリア ジュリオ・トレモンティ 経済・通貨問題担当委員 オッリ・レーン
ルクセンブルク リュク・フリーデン ユーログループ作業グループ議長 トーマス・ヴィーサー

  1. ^ a b c d An economic government for the Eurozone?” (PDF) (英語). The Federal Trust (2006年). 2010年3月20日閲覧。
  2. ^ a b About the Eurogroup > History” (英語). Council of the European Union. 2010年3月20日閲覧。
  3. ^ a b c Germany rejects idea of eurozone 'economic government': report” (英語). EUbusiness.com (2008年10月21日). 2010年3月20日閲覧。
  4. ^ a b c Schwarzer, Daniela (2006年11月24日). “Institutionalisation through the backdoor” (英語). Eurozone Watch. 2013年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年3月20日閲覧。
  5. ^ Juncker re-elected Eurogroup president, voicing optimism over economic growth”. People's Daily Online (2006年9月9日). 2010年3月20日閲覧。
  6. ^ Willis, Andrew (2009年12月2日). “Luxembourg leader set to extend euro zone reign” (英語). EUobserver.com. 2010年3月20日閲覧。
  7. ^ a b Willis, Andrew (2010年1月19日). “Juncker wants more eurozone activism” (英語). EUobserver.com. 2010年3月20日閲覧。
  8. ^ ユンケル議長、8年間の闘い終え退任-後任ダイセルブルーム氏ブルームバーグ(Bloomberg.co.jp)の記事。2013年1月22日配信、2013年3月22日閲覧。
  9. ^ 欧州連合の機能に関する条約第136条第2項
  10. ^ a b Vucheca, Elista (2008年4月15日). “Eurozone countries should speak with one voice, Juncker says” (英語). EUobserver.com. 2010年3月20日閲覧。
  11. ^ Sarkozy pushes eurozone 'economic government'” (英語). France24 (2008年10月22日). 2010年3月20日閲覧。
  12. ^ Soros, George (2009年2月18日). “The eurozone needs a government bond market” (英語). FT.com. 2010年3月20日閲覧。
  13. ^ a b Belgian PM Leterme proposes European Debt Agency” (英語). guardian.co.uk (2010年3月5日). 2010年3月20日閲覧。
  14. ^ a b Willis, Andrew (2010年3月8日). “Plans emerge for 'European Monetary Fund'” (英語). EUobserver.com. 2010年3月20日閲覧。





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