モロッコ 経済

モロッコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 05:37 UTC 版)

経済

カサブランカはモロッコ最大の経済都市であり、アフリカ有数の世界都市である。

IMFの統計によると、2015年のモロッコの国内総生産(GDP)は、約1031億ドルである。国民1人当たりのGDPは3079ドルと、アフリカ諸国では比較的高い水準にあり、アジアなどの新興国に匹敵するレベルである。アフリカでは経済基盤も発達している方だとされる。

モロッコの主要な貿易相手国としては、地理的に近い先進国のフランスとスペインが挙げられる[21]。モロッコ自身は先進工業国とは呼べないが、衣料品などの軽工業のほか、石油精製や肥料などの基礎的な諸工業が発達している(以下、統計資料はFAO Production Yearbook 2002、United Nations Industrial Commodity Statistical Yearbook 2001年を用いた)。かつて宗主国だったフランスだけでなく、欧米諸国の企業が、自動車や鉄道・航空機部品などの工場を増やしている。これはモロッコがアフリカでは政情・治安が安定していると判断され、インフラストラクチャーが整備されており、50以上の国・地域と自由貿易協定(FTA)を締結していて輸出がし易いという背景がある[22]。その他ヨーロッパ連合諸国に出稼ぎ、移住したモロッコ人による送金も外貨収入源となっている。

なお、カサブランカやタンジールやケニトラには、加工貿易用のフリーゾーンが設けられている。カサブランカには金融フリーゾーン(カサブランカ・ファイナンス・シティ)もある。モロッコ以外のアフリカ諸国へ進出する外国企業への税制面の優遇措置も導入し、アフリカ・ビジネスの拠点(ハブ)になりつつある[23]

また、モロッコは羊毛の生産や[24]、同じく繊維材料のサイザルアサの栽培でも知られ[24]、繊維製品や衣料製品といった軽工業などの工業生産も見られる[25]。また、皮革製品の製造も行われている[25]

さらに、生産量世界第6位のオリーブ栽培などの農業が経済に貢献している。

これらに加えて、大西洋岸は漁場として優れており、魚介類の輸出もモロッコにとっては主要な産業である[26]

観光資源も豊かで、観光収入は22億ドルに達する。

鉱業・電力

エネルギー資源に関しては、原油と天然ガスが少し産出する程度で[注釈 5]、産油国とまでは言えない程度である。一方で、鉱業の分野では、合金として幅広い用途を有するコバルト[24]、また亜鉛も産出するものの[24]、それよりも亜鉛などの工業的な精製の際に不純物を取り除くためなどに用いるストロンチウム[24]、さらに肥料などの原料として知られるリン鉱石の採掘が盛んである[24][注釈 6]。また、も比較的有力な鉱産資源である。これ以外にも、ニッケルの採掘も行われている[24]

モロッコの鉱物資源はアトラス山脈の断層地帯に集中しており、アトラス山脈の造山活動によって鉱脈が形成されたと考えられている。例えば、かつてはマラケシュの東で、マンガンの採掘も行われていた。また例えば、ウジタで亜鉛や鉛が採掘されている。

なお、リンはカサブランカの南東の内陸部で採れる。

農業などに利用できない沙漠では、再生可能エネルギーによる発電を拡大している。太陽光発電所や太陽熱発電所、風力発電所が相次ぎ建設されており、スペイン企業による風力発電機の生産も2017年に始まった。エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率(20%強)を2030年に52%へ高めることを計画している[27]

農業

アトラス山脈よりも北側の大西洋沿岸地域や地中海沿岸地域では、ある程度の降水量が見込めるため天水に頼った農業が可能である。農業従事者は429万人(2005年)である。国際連合食糧農業機関 (FAO) の統計(2005年)によると、世界第7位のオリーブ(50万トン、世界シェア3.5%)、第9位のサイザルアサ(2200トン)が目立つ。世界シェア1%を超える農作物は、テンサイ(456万トン、1.9%)、オレンジ(124万トン、1.5%)、トマト(120万トン、1.0%)、ナツメヤシ(6万9000トン、1.0%)がある。主要穀物の栽培量は乾燥に強いコムギ(304万トン)、次いでジャガイモ(144万トン)、オオムギ(110万トン)である。

中南部ケアラ・ムグーナ(「バラの谷」)で栽培されているローズウォーター用のバラなど花卉農業も行われている[28]

畜産業はヒツジ(1703万頭)、ニワトリ(1億4000万羽)を主とする。

工業

モロッコは世界的に見て硫酸の製造の盛んな地域であり、2004年の製造量は、950万トンであった[24]

さらに、リン酸肥料(生産量世界第6位)、オリーブ油(同9位)が目立つが、ワインや肉類などの食品工業、加工貿易に用いる縫製業も盛んである。また、ルノーが2つの自動車工場を、ボンバルディアが航空機部品工場を運営している他、PSA・プジョーシトロエンボーイングなども現地生産計画を進めている[22]

貿易

モロッコの輸出額は238億ドル。品目は、 機械類 (15.9%) 、 衣類 (14.4%) 、化学肥料 (8.8%)、野菜・果実 (7.9%)、魚介類 (7.6%) である。(2011年) ここで言う電気機械とは、電気ケーブルを意味している。リン鉱石は価格が安いため、品目の割合としては5位である。主な相手国は、輸出は、スペイン、フランス 、ブラジル、イタリア、インド 。(2014年)

モロッコの輸入額は116億ドル。品目は、原油 (12.0%)、繊維 (11.9%)、電気機械 (11.7%)。主な相手国はスペイン、フランス、中国、アメリカ合衆国、イギリスである。(2014年)

参考までに、モロッコにとって主要な貿易相手国ではないものの、日本との貿易では、輸出がタコ(61.1%)、モンゴウイカ (7.3%)、衣類 (5.1%)の順で、リン鉱石も5位に入る。輸入は、乗用車 (32.4%)、トラック (28.6%)、タイヤ (5.6%)である。

観光業

フェズカサブランカマラケシュといった都市部の旧市街地から、アイット=ベン=ハドゥなど集落レベルの各種居住エリアにある世界遺産、サハラ沙漠やトドラ渓谷といった自然が観光資源として利用されている[29]。また、古い邸宅を利用したリヤドと呼ばれる「モロッコ独特の宿泊施設」も知られている[30]

モロッコ政府としても観光立国を掲げ、人材や観光地の育成に注力している[31]。2015年の観光客数は在外モロッコ人の割合が増加傾向にあるが、約1018万人を数えた[31]


注釈

  1. ^ EUによる国際経済に占める「優先的地位」は、欧州近隣政策における行動計画の成果に基いて、EU側が付与する。モロッコに付与されたそれは、FTA締結から一段踏み込み、財・サービス・資本の完全な自由移動と専門職の自由移動の実現や、モロッコの国内法がEU法の総体(アキ・コミュノテール)を受容させる事などを、目標としている。
  2. ^ 最も狭い部分では幅14 kmしかない
  3. ^ いわゆる「北東貿易風」と呼ばれる風である。
  4. ^ モロッコの固有種のアルガンノキから採取するアルガンオイルは、モロッカンオイル、つまり「モロッコの油」といった意味の別名でも知られる。
  5. ^ 原油の採掘量は1万トンと極めてわずかである。一方で、天然ガスは比較的多く産出する。
  6. ^ 特に、リン鉱石は、採掘量は世界第2位ながら、埋蔵量世界1位と言われている。なお、リン酸肥料だけではなく、モロッコでは窒素肥料の製造も行っている。
  7. ^ ミントに関しては、アッツァイと呼ばれるミント緑茶に、大量の砂糖を加えて飲む習慣が見られる。
  8. ^ 例えばフィクションでは、1998年にディレクTVで放映されたアニメ『BURN-UP EXCESS』第8話で、登場した誘拐犯(オカマバーの元店長と元従業員)が身代金の使い道の1つとして「モロッコに行って性転換」する事を挙げた。

出典

  1. ^ a b c モロッコ王国 外務省 Ministry of Foreign Affairs of Japan
  2. ^ The World Factbook/Morocco”. 中央情報局 (2017年5月9日). 2017年5月23日閲覧。
  3. ^ a b UNdata”. 国連. 2021年11月7日閲覧。
  4. ^ a b c d e IMF Data and Statistics 2021年10月16日閲覧([1]
  5. ^ Note sur les premiers résultats du Recensement Général de la Population et de l’Habitat 2014”. モロッコ王国 (2014年). 2017年5月23日閲覧。
  6. ^ 外務省: 外交史料 Q&A その他外務省、2010年4月21日閲覧。
  7. ^ 「モロッコ軍部クーデーター失敗 国王殺害企てる 宮殿襲い銃撃戦」『中國新聞』 1971年7月12日 5面
  8. ^ 高崎春華 「EU広域経済圏の形成と金融FDI」 日本国際経済学会第70回全国大会
  9. ^ “モロッコ、AUに復帰へ=西サハラ問題で30年前脱退” (html). 時事通信社. (2016年7月18日). http://www.jiji.com/jc/article?k=2016071800044&g=int 2016年7月24日閲覧。 
  10. ^ “アフリカ連合に復帰へ モロッコ国王が表明” (html). 産経新聞. (2016年7月18日). http://www.sankei.com/world/news/160718/wor1607180028-n1.html 2016年7月24日閲覧。 
  11. ^ Morocco Asks to Re-join African Union After 4 Decades”. Voice of America. 2016年9月24日閲覧。
  12. ^ モロッコの加盟承認=西サハラ問題で30年超対立-AU AFPBB News 2017年1月31日
  13. ^ モロッコ、イランと断交『日本経済新聞』夕刊2018年5月2日掲載の共同通信配信記事。
  14. ^ a b c d アルジェリア、モロッコと国交断絶 「敵対行為」めぐり” (日本語). AFP. 2021年8月25日閲覧。
  15. ^ “モロッコにおける憲法改正に係る国民投票について”. (2011年7月19日). http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/23/dga_0719.html 2011年7月19日閲覧。 
  16. ^ 「モロッコ王国」『世界年鑑2016』(共同通信社、2016年)272頁。
  17. ^ NEWS25時:モロッコ 穏健派が勝利宣言 毎日新聞 2011年11月27日
  18. ^ モロッコ下院選、イスラム穏健派が勝利 初の第一党に 朝日新聞 2011年11月28日。
  19. ^ モロッコ 都市人口(全体の%),1960-2020-knoema.com
  20. ^ a b c d e f g h i j k en.m.wikipedia.org>Morroco
  21. ^ 二宮書店編集部 『Data Book of The WORLD (2012年版)』 p.124、p.125 二宮書店 2012年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0358-6
  22. ^ a b 日経産業新聞「モロッコ 産業に厚み」2016年11月17日
  23. ^ 「【新興国ABC】モロッコの産業フリーゾーン 車・航空機の産業集積」 日経産業新聞 2018年5月14日(グローバル面)。
  24. ^ a b c d e f g h 二宮書店編集部 『Data Book of The WORLD (2012年版)』 p.317 二宮書店 2012年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0358-6
  25. ^ a b 二宮書店編集部 『Data Book of The WORLD (2012年版)』 p.316 二宮書店 2012年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0358-6
  26. ^ a b 二宮書店編集部 『Data Book of The WORLD (2012年版)』 p.124 二宮書店 2012年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0358-6
  27. ^ フェルダウス投資担当閣外相によるコメント。『日経産業新聞』2018年5月29日(環境・素材・エネルギー面)掲載、モロッコ「再生エネ52%に」。
  28. ^ 【旅】ケラア・ムグーナ(モロッコ)砂漠の中の「バラの谷」香り芳潤 美容にも一役『読売新聞』夕刊2018年5月16日。
  29. ^ モロッコで行くべき観光スポットTOP10とモロッコの基本情報”. ワンダーラスト (2016年1月15日). 2018年7月6日閲覧。
  30. ^ 菅澤彰子. “モロッコのリヤドとは”. 2018年7月6日閲覧。
  31. ^ a b モロッコ基礎データ”. 外務省(日本). 2018年7月6日閲覧。
  32. ^ a b 外務省 モロッコ基礎データ
  33. ^ 2018年1月8日19時30分NHK総合放送「世界プリンス・プリンセス物語」
  34. ^ CIA World Factbook 2009年12月26日閲覧。
  35. ^ a b c 石崎 まみ 『クスクスとモロッコの料理』 p.7 毎日コミュニケーションズ 2010年10月20日発行 ISBN 978-4-8399-3626-6
  36. ^ 石崎 まみ 『クスクスとモロッコの料理』 p.6、p.7 毎日コミュニケーションズ 2010年10月20日発行 ISBN 978-4-8399-3626-6
  37. ^ a b モロッコ海軍、「人工妊娠中絶船」の入港阻止 CNN.co.jp 2012年10月5日(金)12時53分配信






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